第八話 巨大獣ガゴンゴ ミザーリンの美しき罠 2
成功だ、命に別状はない。
エリーザ様、ミザーリン共にもう傷と疲労は完治している。
「ご主人様は見ないで下さい!」
「へうっ!」
俺は目にパンチを喰らった。
「ぐわぁああ! 目がーっ! 目がー!!」
俺が目を押さえている間に、マーヤちゃんはメディカルポッドから出てきたエリーザとミザーリンの裸の二人に着替えの服を渡していたようだ。
「あれ? 私……生きてるの?」
「エリーザ様。どうやらわたくし達はブキミーダ様に助けていただいたようですわ」
「ええっ!? ブキミーダってあのブキミーダですか?」
そうです、あのブキミーダですよ。
中身は善良な地球人の元ロボットエンジニアですけどね。
「何と汚らわしい……! お前は一体何が目的なの? 私を助ける事で兄上にアピールしたかったのですか?」
まあそう取られるよな。
今の俺を知っている人ならまだしも、ダバール本星から来たならば、ブキミーダの悪名は轟いているはずだ。
というかアイツ本星でも一体何をやらかしていたんだ?
「酷いですよ! ご主人様はとても良い人です。ご主人様を馬鹿にするとワタシが許しません!」
「エリーザ様、このブキミーダ様は地球に行って死ぬような思いをしたのですわ、そこで人生観が変わったらしく、わたくしを命がけで助けてくださるような立派な方になられたのですわ」
マーヤちゃんとミザーリンが俺を擁護してくれたのでエリーザは俺への敵意の目つきをやめてくれた。
「――そう……だったのですね、ブキミーダ。疑って申し訳ありませんでした。さあ、兄上の所に行きましょう」
そしてエリーザ様を先頭に、俺とミザーリン、それにマーヤちゃんはシャールケン提督の待つ謁見の間に到着した。
「エリーザッ! 無事……だったのか!」
「はい。地球で防衛隊に殺されそうになったところをブキミーダに助けてもらいました」
「でかした! ブキミーダ! それに比べ……バルガルは一体何を……」
「お言葉ですがシャールケン様、バルガル将軍殿が防衛軍を引き付けてくれたからエリーザ様をお助けする事が出来たのです」
俺のこの報告にシャールケンの険しい表情が和らいだ。
「そうか、それでは至急バルガル将軍に帰還命令を出せ。余からご苦労だったと言っていたと伝えておけ!」
「はっ。承知いたしました」
助かった。これで地球とダバール星の全面戦争は一時的に避ける事が出来そうだ。
「しかし許せん、エリーザを殺そうとした防衛軍め、その愚かさを思い知らせてやろう!」
あ、これあまり良くない流れだ。
シャールケンは地球侵攻の目的を防衛隊の撃滅に変更したようだ。
まあ妹をつけ狙った上、殺そうとしたのが防衛隊だとすると、そりゃあ怒りも心頭だろう。
「ミザーリンよ、防衛隊のトップは誰だ?」
「はっ。――モリヒト・ミシマ――という人物です」
「そうか。ミザーリンよ、地球に降り、ミシマについて調べよ。また、ガッダイン5についても何か情報が得られるなら掴んでくるのだ!」
「承知致しました。シャールケン様」
ミザーリンは返事をするとすぐにその場を離れた。
「ブキミーダよ、バルガル将軍の帰還までそちに妹の世話を任せる。くれぐれも頼んだぞ」
あ、これ絶対に妹に手を出したら命は無いぞって言い方だ。
まあそんなつもりは欠片も無いが。
仕方ない、マーヤちゃんと一緒にエリーザ様の面倒を見ますか。
俺は彼女の部屋になる場所をマーヤちゃんと掃除する事になった。
「お掃除お掃除、ランランラン」
マーヤちゃん楽しそうだね。
まあメイドロイドとして作られている以上、基本的なプログラムとしては家事全般が出来るように設定されているので、掃除は彼女の得意分野だ。
「ご主人様ー、今エリーザ様はどこにおられるんですかー?」
「それが、居場所が無いからって俺達の部屋を今貸している状態だが……」
「良いなー、今頃テレビで、――ビックラニッポン新記録――見てるんだろうなー」
!! しまった! そうだ。俺の部屋にはテレビがあったんだ!
これは困った事になってしまった。




