第八話 巨大獣ガゴンゴ ミザーリンの美しき罠 1
巨大獣オゲゲオが爆散し、空中で砕けた。
俺がわざと重火器や火薬系を外して高エネルギー兵器ばかり載せたのは、空中で爆発して地上に被害を出させない為だ。
俺の狙い通り、巨大獣オゲゲオは空中で木っ端みじんになり、地上に瓦礫はほとんど落ちなかった。
ほっ、これでようやくエリーザ様を救出できる。
俺は宇宙船を飛ばし、マーヤちゃんと合流しようとした。
だが、三島長官の姿のアイツはまだ諦めていなかった。
「いいか、何が何でも敵のスパイを殺せ! 方法は問わん」
隊員は上官の命令に逆らえず、ミザーリンは包囲網に追い詰められて岬の上でエリーザ様と行き止まりの崖の上にいた。
「くっ、アンタ達にこの子を渡すわけにいかないのよ」
「この女も敵のスパイだ、一緒に殺せ!」
そして銃が撃たれ、ミザーリンとエリーザ様が海に転落した。
そこにバイクで駆けつけたのはガッダイン5から降りた龍也だった。
「エリさーん!」
だが返事は無かった。
バルガル将軍はドグローンから指示を出し、エリーザ様を探した。
だが、彼女は見つからなかった。
まあそれもそうだろう、何故なら俺とマーヤちゃんが落下した直後の彼女達をグローン円盤の触手で絡め取ってすぐに海に潜ったから。
敵を騙すにはまず味方から、バルガル将軍、すまないな。
「馬鹿者! 何故スパイの女を見逃した、死ねっ! 死んでしまえっ!」
アイツが激昂している。
俺の憶測が正しければ、アイツは三島長官の立場を利用してダバール星と地球を全面戦争に持ち込みたいのだろう。
何となくだが目論見は見えた。
今の三島長官の姿のアイツは間違いなく俺達の敵だ。
それは下手すればガッダインチームにも悪影響を及ぼすだろう。
だが、エリーザ様を助ける事が出来たので、今後の流れは良い方に持っていけそうだ。
俺はドグローンではなく、特殊宇宙船の方に確保したミザーリンとエリーザ様を連れて行った。
幸い二人共気を失っているだけで、大した怪我はしていないようだ。
さあ、今のうちにデラヤ・ヴァイデスに戻ろう。
ただしバルガル将軍の立場が悪くならないように俺がきちんとシャールケン提督には伝えておく。
それは、俺が彼女を連れ帰る為にバルガル将軍が地上に残って敵を引き付けてくれたという話だ。
本来は引き付ける役割は俺がやった事だが、ここでバルガル将軍に手柄を譲る事で俺は残り三十五話先まで生き延びるんだ!
俺とマーヤちゃんは宇宙船でデラヤ・ヴァイデスに帰還し、メインメディカルシステムにエリーザ様とミザーリンを放り込んだ。
放り込むと言うと何だが、このシステム、かなりの力で中のポッドに患者を入れないといけないのでどうしても放り込むという表現になる。
ブキミーダのヤツ、身体貧弱すぎだろ。
前の人生の俺ならこの程度の女性お姫様抱っこできるくらいだ。
「よっこいしょういち!」
「えっ!? マーヤちゃん、それ俺の身体!!」
「えーい!」
「ウボァー!」
俺はポンコツメイドロイドのマーヤちゃんに間違えてメディカルポッドの中に放り込まれた。
中の再生液が鼻から入って苦しい! これ意識ある人間放り込むシステムじゃないのよっ!
「誰かー! 助けてくれー!!」
「ご主人様! 酷い、誰がこんなことを……」
キミだよ、キミ。マーヤちゃん。
だが俺はそんな事を言う気力も残っていないかった。
マーヤがどうにかメディカルポットを開け、俺は助かった。
これマジでマーヤちゃんをこっぴどく怒っておかないと。
俺だからまだよかったけど――本当は良くないけど――他のヤツだとどうなってたやら。
「マーヤ! キミ何やってくれてんの!?」
「ふぇっ……ご主人様、ご、ゴメンナサァーイイ!」
まあこれ以上泣かせるのもなんだから、これくらいにしておいてやろう。
それよりもエリーザ様とミザーリンだ。
二人共傷は擦り傷程度で疲労していただけみたいだったのでメディカルポッドはすぐに完了のランプが消えた。




