番外編 宇宙漂流記ルミナス 97 戦え! テクターA2
オレ達は特にテクターAと敵対する理由は無い。
それなら美崎さんも助けてあげられるし一度このルミナス号に呼んだ方が安全かもしれない。
——ルミナス……号だと? それは地球人の軍艦なのか?——
「いや、ルミナス号は軍艦というよりは、恒星間宇宙船……ってところかな」
——そうですか。アナタ方はミサキの敵では無いのですね?——
「はい、オレ達は貴女達の味方ですよ」
ほっ、どうにかテクターAに敵対する意思がない事が伝わった。
テクターAは彼女単品でも強いが、専用の巨大ロボ、テクターロボを有しているのだ。
普段は異空間に隠されているテクターロボは、テクターAの呼びかけで現れ、その強力な攻撃力によりビームやレーザーソードで敵を倒す。
ただですら強いテクターAがテクターロボに乗るとその力は無敵だ。
だが唯一の欠点はテクターAだけではその性能は発揮されない事。
つまり、生体エネルギーである真神美崎がいなくてはその本来の力の半分以下の性能しか出せないのだ。
だからテクターAとミサキは二人で一人だとも言える。
それなのでオレ達はテクターAと一緒にミサキも助ける必要があるというわけだ。
——ルミナス号、位置把握……テレポート、します。ミサキ、ワタシから離れないで。——
テクターAが光に包まれた……と思ったら彼女達は一瞬でルミナス号のデッキに現れた。
「な、何だよコレ? コレがトクサツってやつなのか??」
「あのお姉ちゃん、綺麗」
「それより、その子、無事なの?」
ルミナス号の子供達はテクターAとミサキを見て驚いていた。
「どうやらアナタ達はミサキを傷つける意思は無さそうですね。安心しました。ワタシはテクターA。宇宙の悪意ヨグソトースと戦う戦士です」
何とも憂いを秘めた瞳の美少女、テクターAはオレ達ルミナス号の乗員に深々とお辞儀をした。
「ヨグソトース?」
「ねえ、ヨーグルトソースがどうしたの? 明日の朝のサラダに使う?」
「ヨーグルトソースじゃなくてヨグソトースだよ! 宇宙の邪悪な悪魔の名前!!」
ペリーヌがきょとんとした顔をしていた。
「プッ、アハハ、アハハハハ……」
「ミサキ、何かおかしい事がありましたか?」
「い、いやね。この人達のやりとりが面白かったから」
明るく振る舞っているミサキだったが、本心は張り裂けそうなほどの悲しみに包まれているだろう。
何故危険な夜の街に女子高生の彼女が外にいたのか、それはミサキの家に現れた謎のモンスターによって家族が惨殺され、生き残った彼女が必死で外に逃げ出したからだ。
そして逃げた先でタコかイカのような触手軟体モンスターに襲われそうになったところをテクターAに助けられたってわけだ。
オレ達は彼女をどうにかして慰めてあげたいが、何をどうすれば良いやら……。
幸いルミナス号にはセーラ、ペリーヌ、ティコ、トラップ、アンといった女の子もいるから女の子同士で話をさせれば良いのかな。
テクターA.はMAYAと念波で会話をしているようだ。
何を話し合っているのかはわからないが、オレ達が敵でないことは分かってもらえたらしい。
——レイジ、テクターAが言うには、地球には今シスター・ムラサキの手下の宇宙人が出現しているそうです。コレは先程宇宙空間で起きた出来事の映像です——
そう言うとMAYAはメインモニターに巨大宇宙戦艦が何者かに撃墜された映像を映した。
そこに映っていたのはレーザーの剣を持ったテクターAによく似た目が片髪で隠れた赤髪にメッシュの入った美少女だった。
全身黒のレオタードを着た彼女はレーザーソードの一刀で宇宙戦艦をぶった斬り、撃沈させていた。
「あ、アレは……テクターB! まさかここに彼女がいたなんて!!」
テクターAは映像を見て驚いていた。
だが、事態はそれだけで終わらない。
ドガンッ!!
何者かがルミナス号に攻撃を仕掛けて来た。
な、何があったんだ!?
オレがモニターを見ると、ルミナス号の前にはピンクの髪と青の髪の二人の女の子が空中に浮いていた。




