番外編 宇宙漂流記ルミナス 92 聖戦士の翼4
コミックマーケットから帰ってきました。
番外編も今年最後の更新です。
皆様良いお年をお迎えください。
イワモト王の娘、シーナ姫はどうやら彼に話があるようだ。
「お父上、どうか野望を捨て、悪しき兵器を廃棄してくださいませ。この忌まわしき力は彼の地に戦乱と憎悪の連鎖を作り出すだけに過ぎませぬ」
なんだ、このお姫様は戦争を知らない箱入りのお花畑なのか?
いくらバリバリの職業軍人の娘でも立場が違えばこのようには現実が見えなくなってしまうのか……。
ほら、いきなり現れたシーナ姫を叱る為にイワモト王が玉座から立ち上がってしまった。
「シーナ、ここへは勝手に入るなと言っているはずだが」
「お父上、何故争いを止めないのですか! このままでは民が疲弊してしまいます」
「賢しいな、だが、女子供は戦や政にうつつを抜かさず、自身を磨くべきでないのか? 戦うのは男だけでいい」
時代錯誤というか……戦前の考え方だなー。
しかしシーナ姫は民衆のことを考えて戦争を止めたかったのか。オレは彼女をお花畑な思考だと思ったのを反省した。
「男は何のために戦うのか。それは国であり、家族であり……つまりは守りたいものの為に戦うのだ。女子供が戦わなくてはいけなくなる……それはすでに国が終わりつつある姿だ。儂は二度とそのような光景を見たくない。だが、シーナ……お前は守りたい民のために儂に斬られる覚悟でここに来たのだな」
「殺しあうのが正義ではないと、わたくしは存じております。それでも守るものの為にわたくしは命をかけます。それがわたくしの正義なのです」
イワモト王は玉座に再び座り、シーナ姫を見ていた。
「わかった。お前のその想い、民の為に命すら投げ出そうとするか。お前はリーンに似ている。まるで若い頃のリーンを見ているかのようだ」
えっと、確かリーンって生粋のバイスアース人の元滅びた小国の王女で……イワモト王の最初の妻、つまりはシーナ姫の母親だったよな。
「わたくしのお母様はリーンお母様ただ一人だけですわ。ですからあのような、ルザールのようなふしだらな毒婦、お母様とは呼べませぬ」
——あー、これは浜野監督お得意のドロドロ人間関係ってやつだな。
「ルザール……か。お前は彼女の何を知っておるのだ」
「お父様、お気づきではないのですか? あの女は今、この城にいませぬ。今頃はネルソンの元にいるかと……」
「な、何だと!? それは誠の事なのか!」
「そこまでおっしゃられるなら自分でご確認してくださいませ」
イワモト王は療養中のルザールが病床に臥せっていると聞き、彼女に城の一室を与えた。
しかし生粋のバイスアース人であるルザールは政略結婚の相手の王であるイワモトの武力と技術だけが欲しかったのだろう。
ルザールは手下を懐柔し、気付かれないうちにネルソンの元にその身を寄せていたのだ。
「シーナ、お前はいつから気がついておったのだ?」
「ずっと……以前からです。あの女は、リーンの娘であるわたくしをそこにいないのもののように扱っていました……それなのでわたくしの目の前で堂々とネルソンの事を褒め称え、お父上の事を貶していたのです」
イワモト王は怒るではなく、むしろ呆れたような様子だった。
「所詮は太極の見えない俗物に過ぎぬか。お前の母リーンは不思議な娘だった。儂は全てを見通す彼女に恐怖すら覚えたくらいだ。だがそれと同時にあれほど愛おしいと思った娘もいなかった……」
ズゴゴォーン!!
イワモト王とシーナ姫が会話をしていた時、いきなり地震が起きた!
「な、何だ! 一体何が起きた!」
「イワモト王、敵襲です! とてつもなく巨大なオーラクルーザーが出現しました!
「な.何だと! あ、アレは一体何だ!?
——デケェ!!
オレ達のいるシキシマ城目掛けて飛行する超巨大なオーラクルーザー。いや、オーラフォートレスが姿を見せた!
「ア……アレは、デア・ゲリング!!」
何と、オレ達のいるシキシマ城目掛けて飛んできたのは、超大型要塞デア・ゲリングだった。




