番外編 宇宙漂流記ルミナス 91 聖戦士の翼3
コミケに行っていて書く時間がようやく今になりました。
皆様、よいお年をお迎えください。
えっと……今が昭和何年かなんて言われても……オレがいた時代は既に平成が終わって令和がスタートした後なんだが。
「何か答えてくれ。それとも……大日本帝国は……天皇陛下を失い、年号すら奪われたというのか!?」
いや、それは早とちりですって。
確かにイワモト王の知っている通り、日本は連合国に負け、敗戦国になった。
だが、天皇の潔さに感銘を受けたGHQの司令官は、陛下の責任を追及せず、日本は米国の統治の元で復興の道を歩んだ……ってのがオレ達の習う歴史だ。
この事実を伝えてしまうと、イワモト王はどのように感じるのだろうか……。
「いいえ、天皇陛下はご健在……だったと言えます」
「だった! だと……それはどういう事なのだ!」
これは言葉を選び間違えた! オレの説明不足はイワモト王を怒らせてしまったのか。
仕方ない、こうなったら下手な隠し事は無しに本当の事を伝えよう。
「オレのいた時代はもう昭和ではないのです。時代は昭和から平成に、そして令和という新たな年号に変わったのです」
「な、何だと! それでは……今生天皇は……一体誰なのだ!」
うーむ、下手に戦前の軍人に適当なコトを言うとマジで腹を切らされそうなので、ここは慎重に言葉を選ばないといけないな……。
「昭和天皇は即位から64年目の一月七日に崩御されました。それが1989年の事です。その後時代は平成になり、三十一年続いた後に、生前退位と言う形で、平成の天皇は上皇として新たにその皇太子であった天皇陛下が今は令和という時代に日本の象徴としてご健在だと言えます」
この説明で納得してもらえなければ……マジでオレここで人生オワタになりかねない。
「そうか……陛下は昭和二十年から四十四年間、日本を守り続けてくれたのか……」
ほっ、どうにかイワモト王の逆鱗には触れずに済んだみたいだ……。
「という事は、お前は二十一世紀の日本人なのか。どうだ、日本は再び軍を持ち、五族共和の東亜新秩序を実現出来たのか?」
「いいえ、戦後の日本には軍は存在しません」
「何だと!? それでは、米国の軍隊が居座り続け……日本軍を再編させないのか!」
「軍は……存在しませんが、自衛隊という防衛の為の力はあります」
オレの説明はイワモト王にはイマイチよく理解できていないようだ……まあ、戦前の軍国主義のバリバリの職業軍人に今の日本のシステムを説明しても意味が分からないとは思うが。
「君の説明はよくわからんものだな。戦後の日本には軍隊は無いが、防衛の為の力はある……そのような矛盾している事がまかり通るのが今の日本だと言えるのか?」
「は、はい……実際その通りなので、基本自衛隊は災害救助や怪獣と戦うのが仕事になってますから」
「怪獣だと! 日本にはそのようなものが出現するのか!」
――これは下手打ったかもしれない、今更怪獣と戦うのは映画のPR活動だとはとても言えそうにない。
「は、はい。そうです。今の日本には怪獣が出現し、それと戦う力として認められたのが自衛隊だと言えるのです」
「にわかには信じられんが、それなら確かに守る為の力を戦後の日本が有していてもおかしくはないといえるな……」
こ、こうなったら奥の手だ。オレの持っているスマホ……どうにかバッテリーはルミナス号からのエネルギーでコンセントを使えるようにしているから、これで以前ダウンロードした怪獣映画の自衛隊のシーンを見せてみよう。
「これが動かぬ証拠です、このシーンを見てください」
オレは放射能怪獣相手に自衛隊の戦闘機が戦っているシーンをイワモト王に見せた。
「な、何という鮮明な記録映像だ! しかも……色付きだと! 時代はそれほどまでに進化したというのか」
イワモト王はどうやらオレの見せた怪獣映画の戦闘シーンを見てオレが言っている事が本当だと信じてくれたようだ。
「二十一世紀の日本人よ、君に礼を言おう、さあ……このシキシマ城でゆっくりとくつろいでくれ」
イワモト王に客人として歓迎されたオレ達の前に物凄い美人……というか可愛い少女が姿を見せた。
「お父上、お話したい事がございます」
「シーナか。何があったというのだ?」
どうやらシーナと呼ばれた美少女は、イワモト王の娘らしいな。




