番外編 宇宙漂流記ルミナス 90 聖戦士の翼2
オレ達の乗るルミナス号はワの国の聖戦士キョウ・ハザマ達と共にワの国の王であるイワモトの元に向かった。
ルミナス号はオーラクルーザーのベラーナに並走する形でバイスアースの空を飛んでいた。
「うわー、綺麗ー」
「あ、おっきい鳥さんなのら」
「おい、乗り出すと危ないぞ!」
ネロとアンのちびっ子二人は珍しい鳥や光景に興味津々でルミナス号の窓を開け、外を眺めている。
そのネロの頭にはちょこんとキャム・ファウが座っていた。
どうやらキャムはこの無邪気な子供達に懐いたみたいだな。
「しかしすごいオーラクルーザーだな。これはカの国の船なのか?」
「いや、このルミナス号はカの国の船じゃ無い」
「じゃあどの国の船なんだ?」
キョウに質問されたたオレだが、バイスアースにはカの国とかドの国とかがあるのでこれが天ボケなのか普通に聞いているのかがわからなくなる。
「どの国の船でも無い。これはこことは異なる世界から迷い込んだ船なんだ」
「何だよ、それじゃあお前達はアンドロメダ星からでも来たと言うのか?」
いや、まあ……移民惑星テラニアを目指してクリア星からベリック星に移動後にワープ失敗してるから宇宙人扱いなら確かに間違っては無いんだが……。
「いや、オレは地球人だ。わけあってこの子供達とワープ装置の故障したこのルミナス号で元の世界に戻るために旅をしてるんだ」
「そうか、お前の話し方、まるで日本人にしか聞こえなかったからな。イワモト王もオレ達と同じ元日本人だったらしい。どうやらカミカゼトッコウタイの生き残りって聞いたけど、おれ歴史あまり詳しく無いから知らないんだ」
そうか、キョウは戦後生まれでリアルな第二次世界大戦を知らないんだな。
まあオレはロボアニメ以外にも戦争映画とか見てたからそこそこ詳しいが、普通は興味持たなければそこまで知らないんだろうな……。
オレ達はバイスアースの空を飛び、ワの国のイワモト王の待つシキシマ城に向かった。
「ここはイワモト王の治めるワの国の首都ショウワの街。この街の建築には彼の想いが各地に見られます」
米国人の聖戦士レーベルが説明してくれた。
確かによく見るとまるで戦前の日本の大都市のような和洋折衷ぶりだ。
ショウワの街の中心にはとてつもなく巨大な城があった。
城には三連の回転砲塔やハリネズミのような機銃、それに終始回転するレーダーなどと巨大な煙突があり、まるで戦艦にしか見えない。
どうやらここがイワモト王のいるシキシマ城のようだ。
この城の中の兵士の服装はまるで大日本帝国海軍のようだ。
時代錯誤と言えばそうなのかもしれないが、それでもこの異世界を武力で統治したイワモト王の力を見せつけるには確かに絶好のものだとも言える。
そして、まるで艦橋のような天守閣の上の玉座に座っていたのは、壮年の屈強な男性だった。
「よくぞ参られた。儂がワの国の王、イワモト・ゲンザブロウだ。お前達が新たな聖戦士なのか」
「い、いえ。オレ達は聖戦士ではありません。キョウさんに助けてもらっただけの異世界から迷い込んだ旅人です」
オレ達が否定するも、イワモト王は会話を続けた。
「ほう、だが異世界からここに呼ばれたというのは翼の導きであろう。それこそが聖戦士の証なのだ。よいか、今この世界は覇王ネルソンが掌握しようとしている。儂はこの地を戦地にしてはいかんと考えているのだ」
イワモト王が遠くを見つめながら話を続けた。
「儂の住む国は、失われた……二度の原爆によってだ!! 三度目の神戸への原爆、それは儂が食い止めた。だが、儂の守りたかった国は……死んだのだ、今残っているのは、米国の植民地になった形骸に過ぎない」
——そうか、この人は一度元の世界に戻ったが、敗戦後の日本に失望し……再びこちらの世界に戻り彼の理想の日本を作ろうとしたのか。
「異世界の日本から来た旅人よ、お前のいたのは昭和何年だったのか?」




