番外編 宇宙漂流記ルミナス 88 サムライサバイバー5
「ふむ、敵の敵は味方というからなぁ。そうだ、良い事を思いついたわい」
「バワード様、一体それはどのような?」
バワード長官は側近の男に何かを話しているようだ。
だがこのブリッジの会話、まるで漫才のように見える。
「ワシは火星軍総指揮総司令官のバワード・カジャだ。ガムーブ軍よ、ワシはこれからお前達を援護する!」
なんと、バワード長官は優勢と見るやエルセインを敵とし、ガムーブ軍に下ったのだ。
火星軍の兵士達はバワードの命令でエルセインを攻撃し、ガムーブ軍のシャロンが乗っていたクリムゾンをフォートレス艦に収容した。
「アイツ、地球を裏切りやがった!!」
「何とでもほざけ、勝てば官軍なのだ。つまりお前達はここで負けてしまえば地球や火星を侵略しようした異星人に加担した戦争犯罪人として処刑された事になるのだ! ぐわははははは」
――汚い、流石バワード、汚い!――
「リュウ。お前達は火星基地の宇宙船を奪い、地球にワシの失政を報告しようとしていたようだが、当てが外れたな! ここで死ね、死んでしまえ!! ワシの野望を阻むものは全てぶっ殺してやる!」
不本意な火星軍のロボットだったが、エルセインやルミナス号に向けて火器を撃ってきた。
どうやら火星軍の兵器はあの自己保身の塊であるバワード長官の命令をブラックボックスで受け、最重要任務として上書き命令されるようだ。
マズい、このままルミナス号が火星軍に撃墜されたらワープどころかここでオレ達の漂流の旅にピリオドが打たれてしまう!!
だが、そんなオレ達の所に再び姿を現したのは竜牙だった。
紅魔鳳王から分離した竜牙は、今度は竜王に合体し、巨大なドラゴン型に姿を変えた。
「な、何だよコレっ! パワーがダンチだぜ!!」
「ミック、それは青魔竜王です。遠距離攻撃に特化し、桁外れの攻撃力を持つ竜牙のもう一つの姿なのです」
「ヒュウ、ご機嫌だな!」
ロミア姫が説明してくれた。
青魔竜王は雄叫びを上げると、そのドラゴンの口から高出力エネルギーを発射した。
「フン、先程のフォトンカノンと同じか、このフォートレス艦の装甲を貫く事が出来るものか!」
「そうですね、バワード様」
どうやらバワードと側近は青魔竜王の口からの光弾を大したことが無いと思っているようだ。
だが! 青魔竜王の口から放たれたフォトン光弾はエルセインの物とはケタ違いだった!!
シュゴォォオオオン!!
凄まじい音と共に眩いばかりの光弾がフォートレス艦目掛けて放たれた!
その光弾は、フォートレス艦の船首近くに直撃し、そのあまりの威力はフォートレス艦を傾けてしまった。
「のわぁぁぁぁぁあっ!?!?」
「バワード様ぁ!?」
フォートレス艦にフォトン光弾を撃ち込んだ竜牙は青魔竜王から分離し、背中の巨大な刀を構えたまま再び鳳王の背中に乗った。
「バ、バカ! こっち、こっち来るな!!」
「バワード様、避けられそうにありません」
ズバァッッ!!
竜牙は巨大な刀を振るい、斜めにフォートレス艦の艦首を切り裂いた!
すると、生首が落ちたようにフォートレス艦の船首部分と後方部分が切り離され、バワードは這う這うの体で船首を切り離した小型艇で側近と逃げ出した。
「お、おのれ、覚えておれよ!! リュウ、エニー、ミック、この恨みは必ず晴らしてやる!!」
「バワード様ぁあぁー!」
実質上現地の火星の独裁者だったバワードは逃げ出した後ガムーブ軍の戦艦に収容されたようだ。
そして、サムライ竜牙はいずこかと姿を消した。
だがまたピンチになった時、どこからともなく現れるのだろう。
しかしそれはあくまでもリュウ達の世界の話だ。
オレ達はエルセインのロミア姫に謁見し、彼女等を助けた事を感謝された。
そしてそのお礼とばかりに、ワープ装置のエネルギーを受け取り、この火星圏からワープする事になった。
バワードやガムーブ軍、羅侯とエルセイン、竜牙達の戦いはまだ続くのだろう。
だがあくまでもそれは彼等の話であり、オレ達はワープを成功させて移民惑星テラニアを目指すのが優先だ。
――ワープ開始、5.4.3.2.1……ワープ!!――
今度こそ成功してくれよ……だが、オレ達の到着したのは今度は何とも中世風なファンタジーな異世界だった。
オイオイオイ、今度は最近流行りのファンタジー風異世界転生かよ!
オレ達の眼前では、空中で昆虫とも恐竜とも言えるような見覚えのある外殻のロボットが戦っていた。
まさか……ここは、空と大地の中の世界なのか!?




