番外編 宇宙漂流記ルミナス 86 サムライサバイバー3
獅子王の目が光り、変形を開始した。
人型の姿だった獅子王はライオンのような姿に変形し、竜牙と一体化して人獣一体の姿に変わった。
それは言うならばケンタウロスのライオン版といった形で、上半身は大鎧をまとったサムライ、下半身がライオンのロボットだった。
「合体したからなんだというのだ。このクリムゾンの敵ではない!」
ガムーブ軍の士官用ロボとも言えるクリムゾンは大槍を振り回し、合体した竜牙目指して攻撃を仕掛けてきた。
だが竜牙はその攻撃をかわすと刀でクリムゾンの左腕を斬り飛ばした。
——なんという圧倒的な強さだ!!——
獅子王単品では普通のロボット兵士と大差変わらないくらいの強さだったが、これが竜牙と一体化すると、まさに獣王と言わんばかりの強さを発揮している。
「あ、あれは……伝説の黒魔、獅子王。もう一つの竜牙の姿です」
「姫様、あれをご存知なのですか?」
「バルボラ、あれこそがサムライ、竜牙の本当の力なのです。竜牙は獅子王と合体し、黒魔獅子王に、鳳王と合体し、紅魔鳳王に、竜王と合体し、青魔竜王にその姿を変え、場所を選ばずに戦う事ができるのです」
ロミア姫が側近らしい男に竜牙の事を伝えていた。
「素晴らしい。ロミア姫、この私こそがあの黒魔に相応しいかと。あの地球か火星かわからぬ有象無象の輩よりも姫の忠臣たるこの私こそがあの竜牙を扱いこなせます。是非私にお与え下さい」
「愚か者!」
ロミア姫はバルボラを叱責した。
「姫様、何故ですか! 姫の忠臣であるこの私ではなく、あのどこぞの馬の骨ともわからぬ男を選ぶのですか!?」
「バルボラ、お前の気持ちはよくわかります。ですが、竜牙は仕える主人を自ら選ぶサムライなのです。誇り高きサムライは慢心する者に力を貸しません。もっと……精進するのです」
「承知……致し……ました」
バルボラは不服そうに膝をつき、ロミア姫に従っていた。
でもアイツなんだか胡散臭いな。
アイツ、どこかで裏切りそうな雰囲気を感じる。
ロミア姫とバルボラが会話をしている間も戦闘は続いていた。
「ば、馬鹿な! クリムゾンが手も足も出ないだなんて!!」
クリムゾンに乗っているのはガムーブ軍の女士官らしい。
彼女の声が外に聞こえてきた。
「このシャロン・ベーカー様がこんな事で!」
黒魔獅子王に両腕を切り落とされたクリムゾンはその場で立ち往生していた。
戦いは竜牙の圧倒的な力で勝利するかとすら思われた。
——だが状況は大きく変化した!
「バルボラ、どういうつもりですか!? 血迷ったのですか!」
「ロミア姫。私はこれまで姫の為、影となり日向となり仕えて参りました。しかし、姫は私の思いを踏み躙った! 私は、貴女の事をこれ程までにお慕い申しておりました……ですが、もう我慢の限界です! あのような地球人達と手を組むくらいなら、私は貴女を連れてここを離れます」
「何をするのですか! この痴れ者!!」
あーあ、男の嫉妬はみっともないな……。
どうやらあのバルボラという男、リュウに嫉妬してロミア姫を取られたと思ったようだ。
「バルボラ! ここを出ると言っても、どうするのですか! ここから逃げ出しても貴方には行く場所はありません」
「私は知っていますよ、このエルセインにはもう一体のサムライが在る事を」
「な、何故それを!?」
どうやらバルボラは竜牙以外の別のサムライがいると言っているようだ。
「それは、私がもう一つのサムライの主人だからだ! 来い、羅侯!!」
バルボラが叫ぶと、エルセインの壁を突き破り、もう一体のサムライ型ロボが姿を見せた。
「見るが良い、これが銀河の覇者、サムライ・羅侯だ! ロミア姫、私について来てもらいますよ」
バルボラはロミア姫を羅侯の手に握ると、エルセインから飛び出してしまった!!




