番外編 宇宙漂流記ルミナス 85 サムライサバイバー2
どこからともなく響く法螺貝の音が聞こえる。
そして姿を見せたのは、それ程巨大とは言えない鎧を着たサムライの姿をしたロボットだった。
それ程巨大ではないとはいえ、数メートルはあるので人間ではない。
サムライ型のロボットは雄叫びを上げ、ガムーブ軍のロボットの群れに突っ込んでいった。
「そんな小型のロボットで何ができるものか、砕いてしまえ、テツハウ!」
だが、ガムーブ軍のロボットは相手を見くびっていたのだろう。
オレが知る限り、あのサムライのロボットは小型ロボットの中では最強クラスのバケモノだ。
サムライロボットは腰の刀を引き抜き、すれ違いざまにガムーブ軍を切り裂いた。
――強い! 絶対に強い!――
サムライロボットは一閃でガムーブ軍のロボットを数体破壊、そのまま踵を返し、反対側にいたロボットも斬り捨てた。
「いくら近距離に強くても、遠くからなら!」
火星軍の部隊が銃でサムライロボットを撃とうとした。
だが、サムライロボットは背中の大弓を取り出し、信じられない速さで弓を撃ち出した。
その弓を撃つ速さは常人には目で捉えられない程だ。
あまりの速射ぶりに火星軍のロボは身動き一つ取れず、そのまま針ねずみのように全身矢まみれになってその場に倒れた。
「な、何だあのバケモノは!?」
「あ、アレが伝説のサムライ……実在したのですね」
「姫様、あれこそが伝説のサムライだというのですか」
姫の側近らしい男が尋ねた。
「その通りです、あれこそが伝説のサムライ竜牙。かつて銀河を統一した皇帝の使っていたサムライです。竜牙は、ゲンコーの戦いでカマクラとよばれたサムライを地球に降り立った我等の遥かなる先祖が命を助け、その能力を研究して作り上げたロボットだと聞きます。皇帝はそのサムライの力を使い、銀河を統一したのです」
つまり、あの竜牙と呼ばれているサムライのロボットは、元寇の時代に地球に来たロミア姫の先祖が侍を助け、その能力を研究して作り上げた物だという事なのか。
だからロミア姫達はそのサムライの伝説を信じてこの太陽系にやって来たというワケだな。
しかしあの強さ、マジで圧倒的だな。
竜牙一体でガムーブ軍のロボット数十体とバワード長官の火星軍のロボがあっという間にスクラップだ……。
「ええい、何をしておるか。体当たり自爆してでもあのロボットを止めろ。お前達の代わりなぞいくらでもおるんだ!!」
バワード長官は火星軍の兵士に向けて無茶ぶりとも言える命令をしていた。
そんなものあの竜牙にいくらロボットが束になってもスクラップと死体の山が増えるだけだというのに。
流石は超絶不人気悪役ワースト3なだけある。
後の二人は確か、装甲鉄機メタルズのクワン・ユゥー大尉と、なんとか5って昔のロボアニメのブキミーダって奴だったかな。
それでも上官の命令に従うしかない火星軍のロボットは竜牙目指して飛び掛かっていった。
このままではあの竜牙の刀のサビになってしまう!
オレはMAYAに頼み、火星軍のロボ目掛けてビーム砲を撃ってもらった。
狙ったのはあくまでも足のパーツだ。
ここを破壊されれば動きたくても動けまい。
まあここで火星軍に攻撃してしまった以上、オレ達が敵認定されるのは確定だ。
だが下手に火星軍の罪も無い兵士を犬死にさせるよりははるかに人道的だと言えるだろう。
……その意図が相手に伝わればいいんだが。
「クッ、まさかこんな所であの機体を出す事になるとは! 行くぞ、クリムゾン、出撃する!」
ガムーブ軍の母艦からボスクラスのロボットが出撃した。
全身真っ赤な巨大な武器を持つ細身で長身のロボット、サイズで言えば竜牙の数倍だ。
「このクリムゾンで踏みつぶしてやる!」
クリムゾンが足を上げ、竜牙を踏み潰そうとした。
だが、竜牙はそれを軽くかわし、そのまま何かを叫んだ!
すると、リュウの乗っていた獅子王の目が光り、いきなり竜牙目掛けて走り出した。
一体何が起きようとしているんだ!?




