番外編 宇宙漂流記ルミナス 80 疾風ブルーゲル3
何かコイツ気に食わないな……。
インデントのボス、ドナン・キングの話を聞いていたオレ達だったが、コイツの言葉には端々に選民思想が見えていた。
オレ達は文明人としてみてるが、現在この惑星デラの大地に住まうオーミネイズの事は人間ではなく下等な動物やサルのように見ているみたいだ。
まあ言うならば、十九世紀以前の白人の黄色人種への偏見に近いだろうな。
「いいか、キサマら。あの薄汚いサルどもをクロスポイントで全滅させるのだ! 方法は問わん。前世紀の遺物であるICBMを使っても構わん。どうせ儂らのドームには影響がない場所だ。いいか、メルチ。お前には新型のグランドシップ、ガング・ガングを与える。それでシュガーの奴らを全滅させて来い!」
「了解……デス、マスター」
どうやらメルチは洗脳されているらしく、ドナンの命令を聞くだけのロボット状態になっているらしい。
「流石じゃな、Drマネイ。オーミネイズを確実に儂の命令だけを聞く人形にするとは」
「光栄で御座います、ドナン閣下」
「アストリアの若造が、アイツは儂らをこのドームから外に出れるようにしてオーミネイズと同じ世界で生きろとほざいておった……誰がサルと同じ場所で住めるか!」
どうやらアストリアという人物が穏健派のリーダーで、このドナンは強硬派と見た方が良いのかもしれないな。
「ドナン様、メルチ・キャリー……オーミネイズ殲滅ノ為、出撃シマス……」
「行け、ガング・ガングで殲滅してしまえ!!」
まさかオレ達がこの会話を聞いているとは思うまい。
オレ達はドナンの用意した部屋で休んでいる状態だった。
だがオレは小型のカメラドローンを飛ばし、気付かれないようにドナンの執政室の様子を見ていた。
さて、オレ達はここにいた方が良いのだろうか、しかしここは確か原作ではブルーゲルと後継機のマシンギャリアーが投げ返してきたICBMの直撃を喰らって壊滅確定だったはず……。
――冗談じゃない! こんな場所に長居できるか!!
ICBMで壊滅確定だったらまだミサイルの投げ返される戦場にいる方がマシだ!
さて、どうにかここから脱出してアストリアの居る別のドームに行かなくては。
「MAYA、ここのコンピューターにハッキングしてインデントのドームの場所を探ってもらえないか?」
――了解です、インデントの情報を確認してみます。――
これで場所が分かればクロスポイントでの決戦前にアストリアに会う事が出来るはず、ここからさっさと脱出しないと原作通りだとすればここはICBMで木っ端微塵だ。
オレ達はドナンに気付かれないうちにここを脱出する準備を進め、ガング・ガングの発進のタイミングに合わせ、どさくさに紛れて脱出した。
「何じゃと? あの古代の地球人達が逃げ出したじゃと? ……うーむ、メルチ、その後ろのヤツを捕らえろ! 儂の命令じゃ!」
「了解デス。ガング・ガング……トランスフォーメーション……」
な、何と!! オレ達の乗るルミナス号を捕らえようと、グランドクルーザーだったはずのガング・ガングが黒い超巨大なウォーカービークルに変形した!!
……まあどう見ても変形するだろ、ってデザインで反対にコレでロボットにならなきゃ詐欺だろって形なんだけどな。
ちなみにこのガング・ガングは主人公たちの乗るブルーゲルの母艦であるアイゼン・ガングの同型機であり、色以外はほぼデザインも性能もほぼ同じだ。
「ドナン様ノ命令……古代人、捕マエル……」
「うわぁー! こっちくんなー!!」
オレ達は超巨大ウォーカービークルになったガング・ガングから逃げる為に全速力で空を飛ぼうとした。
しかしエネルギー補給が不完全なこの状況、フロートに近いくらいの数メートル空中に浮くくらいの状態でしか航行できず、走ってくるガング・ガングに捕まるのは時間の問題だった。
そして……オレ達がガング・ガングに捕まりそうになった時……超巨大なもう一体の赤いウォーカービークルがガング・ガングに飛び蹴りをブチかました。
アレは……まさかアイゼン・ガング!?




