番外編 宇宙漂流記ルミナス 79 疾風ブルーゲル2
オレ達を出迎えたのはドナン・キングというインデントのボスらしい男だった。
しかしコイツ、どこか胡散臭いな……。
にこやかな顔でオレ達を出迎えてくれているがどうも本心が見えない。
こういうヤツは何かあれば人を使い捨てるタイプに見える。
「せっかく来てくれたのです、よければ貴方がたがいた地域の話をしてもらえますかな? これほど高性能のフロートシステムを持ったインデントの生き残りがいるとは、儂も驚きましたよ」
どうやらドナンはオレ達の事をインデントと勘違いしているようだ。
まあルミナス号はこの世界で言えばオーバーテクノロジーの塊みたいなものなのだろう。
「あの、オレ達はインデントではないんですが」
「何だと? それではお前達はあの小汚いオーミネイズなのか!?」
にこやかな表情だったドナンの表情に嫌悪感が現れ、豹変した。
「いや、オレ達はアンタ達の言うオーミネイズとも違うんだが……」
「何だと? ではお前達は一体何者なんだ?」
ドナンがオレ達の周りを兵士で囲んだ。
その中には見覚えのある女性がいた。
アレは……確かこの作品のヒロインの一人、メルチ・キャリーじゃないか!
「メルチ、儂の命令があり次第、コイツらを捕らえろ」
「わかりました……ドナン様……」
このメルチという少女、目に特徴のあるオーミネイズの少女だ。
オーミネイズは過酷な環境下で生きられるよう、インデントによって作られた人間で、その大きな特徴は瞳孔の形にある。
オーミネイズの目は斜めに一本白い線の入った瞳孔で、ネジのような目をしているのだ。
確か、このメルチがインデントに捕まり洗脳されていたのはかなり終盤の話だ。
――って事は、オレ達が到着したこのドーム、この後大戦争の後で破壊されてここのインデントが壊滅するって事じゃないか!!
冗談じゃない、こんなとこでくたばってたまるか!!
しかし……どうにか外に出ても生きていられるようにする為の薬か中和剤、小型バリアといったものを手に入れないとここから脱出して主人公達の所属する反インデント組織シュガーに参加するわけにもいかない……。
その前にここでインデント達に捕まるワケにもいかないんだよな。
はて、仕方ないのでどうにかここはドナンのヤツの誤解を解かないといけないな。
「待ってくれ、オレはオーミネイズともインデントとも違う、もっと別の所から来たんだ!」
「何だと? ゴロンゴロン族ともマヌワン族とも違うようだがお前達は何者だというのだ?」
ゴロンゴロン族、マヌワン族とはオーミネイズを生み出す前の失敗作とも言える人類で、原住民の原始人みたいなのがゴロンゴロン族、頭髪の無い半魚人のような水棲人間がマヌワン族だったな……。
「オレ達は地球人、ここの惑星デラがかつて地球と呼ばれていた時代の人間だ。そしてオレ達はワープシステムのミスでここの世界に辿り着いたんだよ!」
オレのこの説明を聞いたドナンはメルチ達に銃を下ろさせた。
「ほうほう、それはそれは非常に興味深い話だ。かつてのこの惑星デラを知っているというのか。つまり、この星がまだ儂達インデントが外の世界を出歩けた時代を知っているという事か。手荒な真似をしてすまなかった、さあ、こちらへ来ていただきましょう」
ドナンは再びにこやかな表情をすると、オレ達をレセプションホールと思わしき場所に招待した。
そしてそこには中世の貴族を思わせるような豪華な食事が並べられ、オレ達の前に差し出された。
「さあどうぞ、毒などは言っておりませんから。すべてこのドームの中で作られた無菌、放射能無しの食材で出来ております。先程の手荒な真似をしたお詫びも含めて、どうぞお召し上がり下さい……」
コイツマジで態度がコロコロ変わるな……。
まあこの世界の事を聞く上では支配層インデントの彼の話を聞いた方が良さそうだな。
オレ達が食事をしている間、後ろにはメルチを隊長としたオーミネイズの兵士達がずっと護衛として立っていた。




