第七話 巨大獣オゲゲオ 猛将バルガルの追撃! 4
俺はスパイドローンで北原未来要塞ベース付近を探っていた。
確か原作では海岸沿いの浜辺に宇宙船の残骸があり、浜辺の上にエリーザ様が打ち上げられていた。
そこをバイクに乗った紅井龍也が通りかかり、彼女を人工呼吸で助ける。
不幸中の幸いか、エリーザ様は地球に降り立つ前に地球人への変装をしているので青肌ではなく普通の地球人と見た目は変わらない状態だ。
だから疑われる事も無く龍也達ガッダインチームに受け入れられたのだろう。
さて、展開通りならそろそろ龍也がエリーザ様を見つける頃だ。
ここでは俺達は下手に出ない方がいい。
俺はその辺の本屋で漫画を買ってマーヤちゃんに与えておいた。
荒野のガンマンオサムやド平面ガエル、野球部主将、オカルト球団なんかが載っている漫画雑誌を見ている方が下手に動かれるよりまだこっちの方がマシだ。
しかし、この漫画……以前漫画専門店のまんがだらけで見た時は一冊で二万五千円だったので、勿体ないから後で見ておこう。
なおこの漫画は百五十円で買えた。
お、何か進展があったようだ。
龍也が原作通りに海岸に倒れていたエリーザ様を見つけたらしい。
「お、おいっ! アンタ、大丈夫か!?」
「…………。」
「こいつ、相当海水を飲んでしまっているみたいだ、仕方ない。ちょっとゴメンよ!」
龍也はエリーザ様に人工呼吸をした。
どうやらそのおかげで彼女は意識を取り戻したようだ
「――ゲホッ……ゲホッ……。ハァッ……ハァ……」
「少し大人しくしていなっ! オレが辺りを見て来るからよ」
龍也はそう言って何かの飲み物を買ってきた。
この時代は自販機のジュースが瓶の時代だ。
レバーを引くタイプの自販機で彼はオレンジジュースを買ってきた。
「ほら、これを飲みなっ」
「う……うぅ……」
仕方ねえな、オレが飲ませてやるよ。
龍也は口移しでエリーザ様にジュースを飲ませ、彼女は少し意識が戻ったようだった。
「あ……あなたは? 誰?」
「よ、気が付いたみたいだな。オレは紅井龍也。アンタは誰だい?」
「私は……エリ……。うぅ、頭が痛い!」
「エリちゃんか。アンタ、海岸に打ち上げられてたんぜ、何か覚えていないかい?」
「それが、何も思い出せなくて……」
これも原作通りの展開だ。
この後龍也は彼女を北原未来要塞ベースに連れて行く。
その後は三島長官の恩情で地球防衛軍のメディカルセンターに移送される事になるのだが、その際に巨大獣オゲゲオの攻撃による巻き添えで瀕死になってしまうのだ。
つまり、ここは俺が悪者になってもメディカルセンターに移送させずに攫ってしまう必要があるというわけだ。
マーヤちゃん、そろそろその漫画読み終わったら仕事ですよ。
どうやら龍也は原作通りに彼女を北原未来要塞ベースに連れて行くようだ。
「龍也、どうしたの? その子?」
「この子はエリちゃん。どうやら海で遭難して溺れて海岸に漂着していたみたいなんだ。だからオレが助けてここに連れてきた」
「おお、綺麗な女子ですたい。龍也どん、カーちゃんが言ってたでごわす。女の子には優しくするんが男の道ってもんですたい」
どうやらガッダインチームはエリーザ様を疑う事も無く受け入れた。
「へっ、どうかな? 避難民のフリをしてココに入り込むスパイかも知れないぜ!」
「流! なんでお前はいつもそうひねくれてるんだよ!?」
「事実を言ったまでだ。このご時世、優しいだけじゃ生きていけないぜ」
彼のこのセリフ、実はかなり後半の布石になっている。
それは彼の生まれに関する事なのだが、まだこの話の時点では流がタダの嫌な奴に見えるように演出されていた。
「代々木博士、この子をここにおいても良いですよね?」
「う、うむ。まあ部屋には空きがあるからな。少しの間だぞい」
その時、指令室のテレビ電話が激しく鳴り響いた。
「はい、代々木です」
「ワシは防衛隊長官の三島だ! 緊急事態だ、どうやら基地内にスパイが潜入したとの情報が入った! 貴様等何か心当たりはあるのかっ!?」
なんと、三島長官がスパイ潜入を疑っていきなり連絡してきたのだ!




