番外編 宇宙漂流記ルミナス 61 シンジュク・スターダストアイズ3
新宿御苑の池の黒い陰陽陣の中心には、誰かの姿があった。
「おお、これぞ弩邏胡様。巫女の姿を借りて御出でになられた」
「な、何だと。あれは……磨由羅! 何故彼女がここに!?」
酒羅はどうやらあの少女と面識があるようだ。
「ㇹッホッホッホ。あの娘は弩邏胡様の巫女となったのだ。もう貴様の娘では無い」
「磨由羅! 目を覚ませ!! 父だ、聞こえないのか」
どうやらあのマユラという少女はシュラの娘らしい。
「無駄じゃ無駄じゃ、もう貴様の声なぞ聞こえぬわ……」
「……」
白と赤の巫女姿のマユラは焦点の定まらない虚ろな目で何かを見ている。
そしてその彼女を黒い闇が覆った。
「おお、弩邏胡様が降臨なさる。この世を我等の物とする為、あの御方が御出でになられるのだ」
ドウテツは黒い闇を見て喜んでいた。
そしてその黒い闇が消えた時、陰陽陣の中心にいたマユラはポニーテールに黒のレオタードといったくノ一の様なスタイルになっていた。
「この娘を素体として、邪妖大帝弩邏胡様が復活なさるのだ。妖邪兵よ、ここにあれ!」
ドウテツが声をかけると、骸骨の鎧武者たちがマユラの前に山になっていった。
そして出来た巨大な人間ピラミッドは……見るもおぞましい巨大な怪物に姿を変えていった。
そして完成したのは……全身真っ黒な鎧武者を巨大化したような……ロボットのような姿の怪物だった。
「デ、デケェ!! 何だアレは!?」
「アレが弩邏胡なのか!」
「敵が何でも倒すのがオイのやる事ですたい! 首さえ斬れば倒せる!」
「みんな、無理はするな!」
MUSYAウォリアーズは目の前に現れた巨大な弩邏胡を見上げ、武器を構えた。
「敵は弩邏胡、今こそ目を覚ませ、貴将達よ!」
「は、わ……儂はなにをしておったのだ? どらごに戦いを挑んだ後の記憶が……とんと……」
「今はそれどころではない、ドラゴが目のまえにおるのだ! 二郎衛門!」
「む、承知した、又兵衛!」
あらら、何とも和風な名前だな。
まああの三鬼将は元々戦国時代の武者だとするならその名前も普通なのか……。
しかし、あの巨大な怪物、オレ達には戦う術は無いのか?
「MAYA、何かあの怪物を倒す方法は無いのか?」
――そうですね、アレは……マイナスのエネルギーの塊が具現化したもののようです。通常の攻撃は通用しないでしょう。――
「それじゃあオレ達はただ見ているしか出来ないのか?」
――方法が無いわけではありません。あのマイナスエネルギーの塊に攻撃する方法、それは……太陽光線を武器にする事です。――
太陽光線、つまりは光の攻撃ならアレにダメージを与えらえるという事か。
「それは、レーザードライフルの光でもいいのか?」
――いいかどうかは分かりません、ですが実弾攻撃よりは可能性があるとは言えます。――
そうか、太陽と同じ光のレーザー系の光学武器ならアイツにダメージを与えられるんだな。
ビームが効かなかったのはレーザーではなく粒子のエネルギーがすり抜けたからだと考えれば良いか。
「セドリック、マルコ、ジャッキー、頼む、レーザーライフルであの巨大なバケモノを攻撃してくれ。オレもルミナス号のソーラーレーザーを調整する」
「了解!」
「わかったぜ! 頼むぜ」
さて、MUSYAウォリアーズを援護しつつ、あの巨大なバケモノを倒す事を考えなくては。
オレ達はルミナス号から光学系武器で弩邏胡を攻撃した。
「ヌオオオ……」
「見ろ、あの巨大な船からの光、あれで弩邏胡が苦しんでいる」
レーザードライフルの攻撃はドラゴの鎧に穴を開けた。
「むう、い……いかん! まだ弩邏胡様の魂が入っていない器を攻撃されるとは。こうなったら。巫女よ、お前が弩邏胡様の中に入り、その魂核となるのだ!」
「……ハイ、ドウテツサマ……」
そう言ってマユラが弩邏胡の体内に吸収されてしまった。
「磨由羅ぁぁぁぁぁ!!」
そして……虚空に酒羅の叫び声が空しく響いていた。




