番外編 宇宙漂流記ルミナス 58 失われた老兵達のレクイエム5
「大変だー! アールグレイ爺さんがどこにもいないぞ!」
老人の一人が叫んだ。
「何だって!? じいさん、どこ行ったんだよ」
こんな夜中に一人で外に出かけるなんて自殺行為そのものだぞ。
そしてどうやらライドテクターが一台存在しないようだ。
あの爺さんが乗って行ってしまったに違いない。
「ジャッキー、周囲を探してくれないか?」
「わかったぜ、任せときな!」
「僕も行こう。エギオスならライドテクターに追いつける」
そしてランセルと飛行形態のエギオスがアールグレイ爺さんを探しに行った。
「いたぞ、あそこだ! 爺さんを発見した!!」
「どうやらバンビッドらしい連中に囲まれているようだ、すぐに救出する!」
エギオスがアーマーファイターに変形し、バンビッドの偵察機を破壊した。
そしてアールグレイ爺さんの乗るライドテクターの前に立ちはだかり、爺さんはマシンを止めるしかなかった。
どうやらアールグレイ爺さんは観念したらしく、ランセルに抱えられたまま戦艦ソードフィッシュの所に戻ってきた。
「っ爺さん、何であんな無謀な事をしたんだ……?」
「……死ぬつもりだったんだ。もう、思い残す事は無かった」
「こいつはな、息子が立派に成長した姿を見たかったんだよ、それであの通信機をずっと諦めずに待ち続けていたんだ。もし生きていれば第三次降下隊が来ると信じてな……」
なるほど、それでオレが通信機を直したらまさかの息子が作戦司令官になっていたって事で今の姿を見せたくなかったんだな。
「若いの、ワシらはもう覚悟を決めた。早くここから出ていくんじゃな、さもなくば……撃つぞい」
爺さんの一人がオレ達に銃を突きつけ、戦艦ソードフィッシュから全員を追い出そうとした。
コレは何か様子がおかしい、オレは小型のビデオカメラを壁の傾いたレリーフに仕掛け、そのまま外に出た。
コレでどうにか映像と音声を知る事は出来る。
おれ達がルミナス号に戻ると、なんと……あの壊れかけの戦艦ソードフィッシュが空中に舞い上がった。
そして聞こえてきた音声は、老人たちの会話だった。
「アールグレイ大尉どの、ご命令を」
「……お前達……」
「水臭いですぜ、大尉殿。どうせ一度は死んだような命だ。あの若いの達の為に捨て石になるってのも悪くは無い人生ってもんだ」
「どうせ最後だ、派手にパーッと散りましょうや。この日の為にFZQ燃料を溜めこんできたんだ。コイツも最後に暴れたいだろうしな」
――あの爺さん達! まさかあの戦艦ソードフィッシュでバンビッドタワーに特攻をかけるつもりじゃ!?
「MAYA、急いであの戦艦ソードフィッシュを追いかけてくれ! ウィンセル、ランセル、ガンセル、それにエギオスは爺さんの援護を頼む!」
「了解!」
「わかったぜ」
――了解しました。ルミナス号は戦艦ソードフィッシュを援護します。――
オレ達はバンビッドタワーに特攻をかけようとするソードフィッシュを追いかけた。
「爺さん達、死ぬんじゃないぞ!!」
だが、後数分後にはソードフィッシュがバンビッドタワーに衝突する!
ルミナス号の速さではソードフィッシュにギリギリ追いつけない。
「MAYA,前方に巨大なバリアフィールドを張れるか?」
――スフィア型ではない円錐型なら可能です。――
オレはMAYAに巨大な円錐型バリアフィールドを作ってもらい、巨大なランスのような形にした。
「さらばだぁー若いのぉぉー!!」
「くっそぉー、間に合えぇえ!!」
ズゴゴコォォォォォンッ!!
凄まじい音を立て、バンビッドタワーが折れた。
どうやらオレ達のルミナス号の作った巨大バリアフィールドランサーの方がソードフィッシュより先にバンビッドタワーを穿いたようだ。
バンビッドタワーは巨大な爆発音を立て、崩壊した。
特攻しそこなった戦艦ソードフィッシュはそのまま空振りのまま前方の湖に頭から突っ込んだ。
「MAYA、バリアフィールドを展開してくれ。ソードフィッシュを防護するんだ」
――了解です。バリアフィールド、スフィア型に展開。――
ルミナス号のバリアフィールドのおかげでソードフィッシュは爆発する事も無く、湖に着水した。
爺さん達はモースピードの奴らとルミナス号のクルーに助けられ、全員が無事だった。
「すまない、若いの……どうやら命を助けられたようだな」
「良いってことよ、爺さん達が死ななくて良かった」
そしてオレ達は爺さん達と街に行き、盗賊団が第一次降下隊の生き残りだった事を伝えた。
住民は驚きはしたものの、被害者に死者が出ていないので爺さん達は街の自警団に協力する事で話はまとまった。
「もうこのソードフィッシュも使われる事は無いじゃろうな。お前さん達、燃料が必要なんじゃろ、これを持って行きな」
オレ達は戦艦一隻分の燃料を受け取り、爺さんやモースピードの連中と別れた。
――ワープ開始、5.4.3.2.1.0! ワープ!!――
さて、今度は一体何処に到着するやら……。
ワープが完了した時、オレは驚いた。
「え!? YOUR CITY、きくらや スピカビルの21世紀時計!?」
どうやらオレは……80年代の東京新宿にワープしてしまったようだ。




