番外編 宇宙漂流記ルミナス 55 失われた老兵達のレクイエム2
どうやら聞いた話によると、この街には盗賊団が出没しているらしい。
その盗賊団は食糧や兵器、FZQ燃料が目的らしく、少人数で出没しては夜の移動を狙って現れるらしい。
だが聞く話では今のところ盗賊に殺されたというものはいないのもなんだか不思議な話だ。
俺の知る限り、世紀末が舞台の作品の盗賊は情け容赦無く全て奪った上に皆殺しのヒャッハー! な連中ってイメージなんだが。
「何よそれ、コワコワじゃない! あたいそんなのイヤよー。そんな奴らにつかまったらあたいみたいなかわいい子、イヤイヤな目にあわされちゃうんだから」
ラブはどこまでもマイペースだな。
「盗賊団だけでも頭が痛いのにここにはバンバットの監査タワーも近くにあるから警備が欠かせんのですわ、もしよければアンタ達強そうだから自警団に協力してくれないか?」
「けどおれ達はレフレスポイントに行くって目的があるからなー。それと爺さん、バンバットじゃなくてバンビッドだぜ、バンビッド」
「「いいじゃねえか。ここでメシ代稼いでいこうぜ」
「シモン……」
いやしかし、コンサートで観客を魅了していたシモーヌとこの軍人くずれといった優男のシモンが同一人物とはとても思えない……。
「決まりだな、さて。オレ達のバイクを取りに行くか」
「大変だー! オレ達のライドテクターが無いぞ!!」
「何だってぇ!?」
ライドテクターとはロボットに変形する前のバイク形態のマシンの事らしい。
「くそっ! いつの間に……」
「考えられるとしたらオレのコンサートの時かもな、全員が歌に夢中になっている間に盗賊団に奪われたのかもな」
「オレ?」
どうやらシモンがつい口を滑らせたようだ。
「オレってなんだよ! 確かにアンタはハンサムで女にモテるかもしれないが、シモーヌさんは誰のものでも無いみんなのアイドル、この荒んだ地球の生きる希望なんだよ!」
——あ、なるほど。よくアイドルの◯◯たんはオレの嫁! って言う痛いやつがいるが、そういう奴らと勘違いされたんだな。
まあ本人は不本意だろうがアイドルファンの痛いやつだと思われたみたいで失笑するしか無い。
「とにかくバイクを取り返さないと、盗賊団の巣はどこなんだ?」
「確か、あいつらは第一次降下隊の旗艦だった戦艦ソードフィッシュの残骸を根城にしてるって聞いたことあるぞ」
「場所がわかってるなら話は早い、そこに乗り込んでバイクを取り返そうぜ!」
オイオイ、オレ達には全く話がわからないんだが、第一次降下隊って何だよ?
「すまないが、第一次降下隊って何なんだ?」
「何だ、若い者はそんなことも知らないのか。アンタよほど平和な地域にいたんだな。第一次降下隊ってのは、火星から地球を取り返すためにレフレスポイント目指して降下した火星軍精鋭部隊の名前だよ」
なるほど、それで全滅した第一次降下隊の旗艦の残骸に盗賊団が住み着いて略奪をしているというわけか。
しかし、武器を奪っているというのがイマイチよくわからないな。
生き延びるためなら食糧やらエネルギーを奪うのはわかるが、ただの盗賊がそれほどまでに強力な兵器が必要とも思えない。
彼らに何か別の目的があるのかも知れないが、直接その盗賊団に会わないと話が見えない。
「セドリック、マルコ、ジャッキー、頼みがあるんだが聞いてくれるか?」
「何だよ、レイジさん」
「お前達のMVなら偵察に行けるんだよな、一度盗賊団の巣を偵察してきて欲しいんだ。頼めるか?」
「わかったよ、おれ達に任せな!」
マルコが胸を叩いて自身ありげにウインクをした。
さて、その、戦艦ソードフィッシュの残骸があるのが……ここから南東30キロってとこか。
まあ彼らのマシンなら1時間はかからないんだろうな。
さあ。残ったオレ達はこの街で情報収集だな。




