第七話 巨大獣オゲゲオ 猛将バルガルの追撃! 2
「何ぃ!? エリーザが飛び出しただとっ!?」
シャールケン提督が激昂している。
「はっ。エリーザ様は地球がどんな場所か見に行くと言って小型宇宙船で飛び出してしまいました」
「バルガル! 貴様がいながらそのザマは何だ! エリーザを連れ戻すまでは帰還は許さぬ、良いな!」
「はっ。このバルガル、命に代えましてもエリーザ様を連れ戻してみせます」
シャールケンは機嫌の良い時は相手の呼び方をそち、機嫌の悪い時はお前、機嫌最悪の場合は貴様になる。
これは原作で見た展開だ。
俺は前のブキミーダがこの要塞中のあちこちに仕掛けた盗聴器のおかげで部屋に居ながら大抵の場所の話が聞ける。
まあこれは俺が用意した物ではなく、ブキミーダが猜疑心からあちこちに仕掛けたのだろう。
まあそのおかげで助かっている部分もあるのだが。
今回はバルガル将軍が機動要塞ドグローンで出撃する為、もし巨大獣を出すとするならそれとは別の宇宙船で運ぶ事になる。
とりあえずは今回、俺達も地上に降りた方が良さそうな感じだ。
原作のブキミーダはいないが、何か嫌な予感がする。
「ご主人様ー。それ一体何を作っているんですか?」
「これは宇宙船の設計図だ。ドグローンをバルガル将軍が使うとすれば、巨大獣は別の宇宙船で運ぶ必要が出てくるからな」
俺が宇宙船の設計図を描いている時、部屋を開ける音が聞こえた。
「ブキミーダ殿! ブキミーダ殿はおるか!?」
いや、部屋のドアを開けた後中に入ってからいるかどうか聞くのも、何だかなーとは思うが……。
「はい、おりますよ。何用ですかな?」
「吾輩はエリーザ様を探す為、地上に降りる事になった。そこでドグローンを使う事になる。だから巨大獣を地上に送るのに……う」
「宇宙船ですな、もう設計図は出来ておりますよ」
「おお、流石ブキミーダ殿。仕事が速いですな!」
バルガル将軍はドグローンを地球に出撃させるので、その後で俺に巨大獣を運ぶ為の宇宙船を用意してくれと頼みに来たのだ。
実はこれも原作であった展開だ。
その際にはバルガル将軍が深々と頭を下げて、ブキミーダに言われて屈辱的なお願いを強調させられた後、ようやく宇宙船を用意するといった話だった。
なので輸送用宇宙船自体はブキミーダが前にデザインしていたものをそのまま使う形になる。
さて、そこでテレビのカドベンを見ているマーヤちゃん、そろそろお仕事の時間ですよ。
しかし彼女は野球中継で宇宙兄弟テツジーンが中止になって泣いていたのに、野球アニメのカドベンを楽しそうに見ているのはどういった心理なのだろうか?
「マーヤちゃん、そろそろお仕事の時間ですよ」
「やーだー。中里さんがこの後打てるかどうかで勝負が決まるんだから、そこまで見るのー」
このダメアンドロイド、確実に地球の文化に汚染されている。
ここにテレビを置いたのは失敗だったかな……?
「中里打った! これは大きいっ。中里走る、必死に走って二塁! ランナーは余裕でホームに帰り訓明高校逆転!」
「やったー! 逆転だー」
はいはい、そうですかそうですか。
俺はどうも野球アニメにはあまり興味を持てなかったので、カドベンは見ていなかった。
「マーヤちゃん、そろそろ行きますよ」
「はーい、ご主人様」
さて、それじゃあいつものロボット格納庫に向かいますか。
今回はロボット制作班、珍しく全員揃っていたので彼等には宇宙船の作成を手伝ってもらう事にした。
まあブキミーダの設計図通りに作れば問題無く完成するだろう。
さて問題はこちらが作る巨大獣オゲゲオだ。
この制作は少し厄介なことになりそうだ。
なんせ、このオゲゲオ……全身火薬庫みたいな巨大獣なので、誘爆誤爆させるわけにはいかないのだ。
この出来次第で下手すればダバール星と地球の未来が大きく変わる事になる。




