番外編 宇宙漂流記ルミナス 44 不思議・夢銀河2
後日、ザイドリッツ解体作業が行われている地球連合軍ガニメデ基地に、デスギラー軍のヘリオンという人物が姿を見せた。
「ルーラー総統の使いできました、デスギラー軍地球方面作戦司令官代行のヘリオンです」
やせ形で長身のイケボ、他の作品では主人公をしていてもおかしくない声の人物が親書を携え、ガニメデ基地に客人として迎えられた。
「我々としてもこれ以上の戦いを続けるのは無意味だと思う、それがルーラー総統のお考えです。地球連合がザイドリッツという戦力を手放すという事は、我々もこれ以上戦争を続ける必要が無くなったと言っても良いでしょう」
コイツ、何だか胡散臭いな……。
「ようこそお越しくださいました、私が地球連合事務総長のシャルル・ドゴールです。こちらのルーラー総統の親書、確かにお預かりしました」
「我々も地球とこれからは争う関係ではなく、友好関係を築きたいと考えております。これまで我々も地球連合も多くの犠牲を出してきました、その流れた血が無駄にならぬよう、これからの宇宙を生きる仲間としてともに生きて行こうではありませんか」
ヘリオンは微笑んでいたが、その目は笑っていなかった。
コイツ……間違いなく何か企んでいるな。
「おや? そちらにいるのはどちら様ですかな?」
「おお、彼らは移民惑星へのワープ途中でワープ事故の為ガニメデに不時着した宇宙船のクルーと子供達です」
「信じられん! まさか地球人ごとき……いや、失礼。地球人がワープシステムを完成させているなんて!」
ヘリオンはオレ達を見て驚いていた。
まあこの世界の今の時代では、地球ではまだワープ航行できる宇宙船は作られていないというのが常識だ。
そこにいきなりワープ機能を持つ宇宙船なんてものはオーバーテクノロジー、彼等にとってはイレギュラー以外の何物でもない。
そういえばさっきからセイジ、ウィル、ロバートの三人が見当たらないな。
ここにいるのはアリアン一人だけだ。
「おや? 確かザイドリッツのパイロットは後三人いたはず、彼らは何故ここにいないのですか?」
「彼等は……多分ザイドリッツのところにおるのでしょう。彼等にとってザイドリッツは長い間共に戦った仲間でしたから」
「フッ、機械が仲間とは。所詮機械なぞ壊れたら用の無くなる使い捨ての道具、それを仲間だとか、おかしい……いや。失礼、彼らにとってはそのような原始的な思考が普通なのでしょうな」
このヘリオン、相手を完全にバカにした態度で慇懃無礼とはこれを言うのだろう。
「まあいいでしょう、地球側が条件を受け入れた以上、我々としましてもそれを違えるわけにはいきません。ワタシはザイドリッツの解体を見届けた後、ルーラー総統に休戦協定の親書を届けましょう」
「わかりました、よろしくお願い致します。ヘリオン司令官代行殿」
シャルル事務総長がアリアンに目線で何か合図をしている。
「お父様、わたくし、用がありますのでこのあたりで失礼させていただきますわ」
「おお、アリアン。気をつけてな」
「わかってますわ、お父様」
お辞儀をするとアリアンは一人で会談会場から出ていった。
「さあ、それではドックに向かいましょう」
「いいでしょう、ワタシはザイドリッツの解体を見届けた後、ルーラー総統の元に戻りましょう。
宇宙船造船ドックでは、全身のあちこちに爆薬の仕掛けられたファイティングフォーメーション、つまりロボット形態のザイドリッツが仁王立ちしていた。
「仕方ないけど、コレでザイドリッツも見納めか」
「まあ、平和の礎になるならそれも仕方がなかろう」
「おれはどうも釈然としないけどな」
ザイドリッツチームは解体される機体を見て、それぞれの想いを呟いていた。
だが、アリアンはここに来ているわけではないようだ。
何か別の用事があるのだろうか?
彼女にとってもこのザイドリッツは仲間と言えるはずなのに、その解体を見ずに一体どこにいるのだろうか?




