番外編 宇宙漂流記ルミナス 36 スター⭐︎パイソン3
何でこうなるんだよ……。
惑星オリオールズに到着したオレ達はルミナス号をトータス号に牽引してもらい、発着ドッグに停泊することになった。
本来は停泊料金が発生するところだが、レイディがハッキングしてそれを払ったことにしてくれているのでタダで停泊出来ている。
ルミナス号の子供達はアストロボールの選手関係者として、ホテルに宿泊出来ている。
一方のオレやパイソンはアストロボールの選手としてホワイトキャッスルのチームビルを訪れることになった。
「やあ、よくきてくれたね。ジョンストンさん。アストロボールは経験者なのかい?」
ジョンストンはかつてパイソンが記憶を封印してサラリーマンをやっていた時の偽名だったはず。
なるほど、パイソンは戸籍が無いがサラリーマンのジョンストンは戸籍があるのでこういう書類やデータが必要な場合には使いやすいというわけか。
「ああ、草ボールはな。で、コイツはボクの仕事の同僚のレイジだ。身長はチビだが問題は無いよな」
オレ……一応身長175センチ以上なんだが、アストロボールのプレイヤーは190異常がザラだ。
宇宙人に至っては2メートル超えのヤツもいる。
そんなバケモノ達がプロテクトアーマーをつけてジェットパックを背負い、五キロの鉄の金属ボールを投げたり蹴ったりするんだから怪我しないわけがない。
当たりどころが悪ければ骨折や最悪死亡も珍しく無い。
だが、一番の死因は 観客席との電磁バリアフィールドへの接触事故だ。
ボールボーイの死亡率の高さはこの電磁バリアフィールドへの接触が原因の大半だ。
バックパックの使い方をろくに知らない子供は電磁バリアフィールドに触れてしまい一瞬で黒焦げになる。
その為使い捨てとも言えるので浮浪児や攫われた児童が当てがわれる。
運営側からすれば所詮は身元不明で肉親のいないガキ達だ。
だからどのように扱っても特に誰にも文句を言われない。
また、アストロボールの莫大な資金は警察上層部のパイレーツギルドの奴らにも渡っているので子供の死亡事故程度揉み消しは簡単だ。
「行くぞ、レイジ。オレ様達のバトルフィールドへ」
「あっ、は、はい」
「何だそのへっぴり腰は、オレ様がいるんだから大船に乗ったつもりでいろよ」
でもこんなとこで呑気にエクストリームスポーツをやっている場合なのだろうか……?
「大丈夫だ、お前は立っているだけで良い。オレ様がやってやるから」
そう言われても、あの攫われたルミナス号のケイトやセーラ、マルコにジャッキーをどうするんだよ。
「今回の試合はパイレーツギルドのお偉方が来るからな。だからオレ様が選手としてホワイトキャッスルに参加するのは想定内だったんだよ。まあ、レイジを巻き込んだのは偶然だったけどな」
オレ達の所属するチームは、ホワイトキャッスル、弱小アストロボールチームだ。
そして、敵のチームはゴールデン・ゴールズ、宇宙最強のリーグチャンピオンだ。
チームの掛け率は1.3対85.9! 勝てるとはとても思われていない。
それよりも観客の賭けは脱法の死亡トトカルチョの方が盛り上がっている。
一試合で何人死亡するか、それを賭けるわけだ。
「行くぞ、ゲームを楽しもうぜ」
いや、とてもこんな殺人ゲーム……楽しめないんだが。
ゴールデン・ゴールズは屈強な地球外のエイリアンのエリートで作られたチームで、パイレーツギルドの稼ぎ頭とも言われている。
「チッ、お呼びでないお客様がいるみたいだな」
「待っていたぞ、パイソン。まさかこんな所でお前と会えるとはな。まるで離れ離れになった恋人に会えたような気分だよ」
「へっ、オレ様はお前との腐れ縁の赤い糸をどうにか断ち切りたいんだがな、プリズム・ボーイ」
パイソンの睨んだ相手ゴールのキーパーは、全身が透明な骸骨の見えるアンドロイド、プリズム・ボーイと呼ばれる男だった。




