番外編 宇宙漂流記ルミナス 35 スター⭐︎パイソン2
「おっと、動くなよ。弾丸が外れるからな」
そう言ってスター・パイソンは右手で銃をパイレーツギルドの奴らに突きつけた。
彼の名前はあの右手のパイソンマグナムから付けられたとも言われている。
彼の左手には最強武器のサイキックガンがあるが、コレは人間相手に撃てば確実に木っ端微塵になるような武器のため、普段は使わないのが彼のポリシーらしい。
だから人間の悪党相手にはあの右手のパイソンマグナムを使って戦っているというわけだ。
パイレーツギルドの連中はパイソンにとってはマグナムで十分倒せるというのだろうか。
先程までオレ達を捕らえてしたり顔だったパイレーツギルドの連中の顔色が青ざめている。
彼らもスター・パイソンの名前は知っているようだ。
しかも、彼は弱い相手には手を出さず、悪党のみを狙う宇宙海賊。
つまりは一種の正義の味方だ。
原作では助けるはずの女性が死ぬ事の多かったパイソンだが、アニメでは演出上そういったシーンは改変され、賛否両論だったとも聞く。
だが今のオレ達はパイソンに助けてもらう以外に生き残る方法が無い。
パイレーツギルドの連中は銃をケイトやセーラに突きつけ、パイソンを威嚇した。
「動くな、動けばコイツらの頭が吹っ飛ぶぜ。脅しじゃえねえ、本当にやるからな!」
「チッ、悪党め……」
パイソンが銃を地面に捨てた。
「良い子だ、さあ、そのまま蜂の巣になりな!」
——だが、その時予想外の事が起きた!
ズゴゴゴ……。
「な、何だ、いきなり地震!? いや、ここは宇宙船の中だろ」
ルミナス号がいきなり揺れ出した。
いや、これは……宇宙船を外から何かが押しているようだ
一体誰が……まさか!?
「パイソン、無事かしら」
「レイディ、寝てないのに随分な起こし方だな」
どうやらレイディと呼ばれる女性型アンドロイドが遠隔操縦でトータス号を動かしてルミナス号に接触させたようだ。
流石のパイレーツギルドの連中もこの展開は予測していなかったらしい。
揺れる船の中でバランスを崩したパイレーツギルドの連中は身体を支えきれずに転倒してしまった。
そこをすかさず攻撃に転じたのがパイソンだ。
武器を使わない素手でもパイソンは強かった。
パイレーツギルドの連中はパイソンにあっという間に倒され、オレ達は助かった。
そう思っていたのだが、いきなり伸びてきた触手にケイトとセーラ、それにマルコとジャッキーが捕まってしまった。
「うわぁぁっ!」
「キャアアアア!」
「た、助けて……」
「シッット! どうなってるだよ!?」
触手に捕えられたケイト達は外の宇宙船に吸い込まれてしまった。
「げはははっ! コレが宇宙生物ローパーだ。オレ達をさんざんコケにしてくれてたな。コイツらは慰謝料代わりの奴隷として貰っていくぜ!」
「くっ! しまった。あの悪党どもめ!」
「コイツらはバドドラッグ漬けにしてこき使ってやるぜ」
そう言ってパイレーツギルドの連中は高笑いをしながら宇宙船でどこかに行きやがった。
「クソッ、オレ様とした事が……」
悔しそうなパイソンにオレ達は尋ねてみた。
「パイソンさん、アイツらはどこに行ったんですか?」
「ここならなら一番近い惑星オリオールズだな。あそこにはパイレーツギルドの連中の溜まり場にしているアストロボールのスタジアムがある。あのスタジアムにアストロボールの選手として入れば空港や税関はパスできるからな」
何だよ、何だかものすごく嫌な予感がするんだが……。
「行くぞ、アストロボールの選手として惑星オリオールズのチームに入団するんだ。それが一番確実にあの星に行く方法だからな!」
——やっぱりそうなるのかー!!——
「兄さん、アンタもオレと同じアストロボールの選手として来てもらうぜ、名前は何てんだ?」
「オ、オレは……カ……いや、レイジ。レイジだ」
「パイソン、コンピューターにアクセスしてアナタ達二人のホワイトキャッスルの選手登録しておいたわ」
ダメだ、オレはこの星でアストロボールの選手として試合中に事故死する運命になってしまうらしい……。




