番外編 宇宙漂流記ルミナス 34 スター⭐︎パイソン1
一難去ってまた一難。
ワープを完了させたオレ達を謎の敵が襲撃してきた!
クソっ! 今度は何の敵なんだよ!?
「前方の宇宙船に告げる、おれたちはパイレーツギルド、大人しく投降すれば命だけは助けてやる。もし断れば、お前たちには宇宙のチリになってもらおう!」
——何でこうなるんだよー!?——
神様、オレそんなに許されないほど悪い事しましたか? これからは悔い改めますからどうか命ばかりはお助けください。
しかしいくら神に祈ってもここは宇宙だ。
しかもルミナス号はエネルギー切れで動けず、ウィンセルやガンセルはタリダート軍との戦いの後補給できていないので出撃不可能。
何だかんだ言っているうちにルミナス号にパイレーツギルドの奴らが船を横付けして入り込んできてしまった。
MAYAの誇る侵入者迎撃システムも、エネルギー切れでは作動しない。
そしてオレ達はパイレーツギルドの奴らに全員捕まってしまった。
「なんだ、この船、ガキと女一人と男一人だけしかいないのかよ!」
「まあよかったじゃねーかよ。コレで奴隷商人に売れば小金稼げるぜ。そうだな、そこの元気のいいガキ共はアストロボールのボールボーイやらせてみようぜ」
「そりゃあいいな、アストロボールのボールボーイなら何人いても足りないからな!」
アストロボールって……ひょっとしてネットでよくネタにされてたあのアストロボールか!?
——アストロボール——
スター⭐︎パイソンの作中に出てきた宇宙で最も危険でエキサイティングな超人気スポーツだ。
球形のスタジアムの中でジェットパックを背負い、衝撃吸収スーツを着ながら空中を飛び、アストロボールと呼ばれる5キロの鉄球を使って相手ゴールに叩き込む未来スポーツ。
サッカーとドッジボールとアメフトを合わせたような過激な球技で、ボールを持った相手にはどんなラフプレーも許される。
また、この球技では死亡率が高く、死亡者を出さずに試合終了すれば全員にメダルが贈られるくらいだ。
だが今までにメダルを手に入れたのは50年中1チーム、それも全員病院送りで一人だけが五体満足というものだった。
こんなイカれたスポーツとも言えないもののボールボーイなんてのは、浮浪児か奴隷が割り当てられ、その試合中で確実に死ぬと言われている。
このパイレーツギルドの連中はルミナス号のクルーをそのアストロボールに駆り出そうとしているのだ!
——冗談じゃない! こんなとこでアストロボールに関わったら命がいくつあっても足りないぜ!!——
暴れるオレ達だったが、全員パイレーツギルドの奴らに捕まり、そのまま宇宙船の外に連行される事になった。
くっそー、神なんて信じるか、オレは元の世界に帰れずここで死ぬのかよ。
だが! 救世主は現れた!!
「ヒュー! せっかくの綺麗な船の中で臭いドブネズミの臭いがすると思ったら、パイレーツギルドの連中かよ!」
「誰だ!? オマエは!」
「生憎だが、オレ様は悪党に名乗る名前は持ってないからな、地獄でエンマ様にでも聞くんだな!」
オレ達の前に姿を見せたのは、赤いシャツに葉巻を咥えたナイスガイと、銀色に輝く綺麗な女性型アンドロイドだった。
「パイソン、トータス号のエネルギーをこの船に補給しておいたわ、コレでこの船のシステムも動くはずよ」
「サンキュー、レイディ。さて、お姫様と小人達を助けるために王子様がやってきたぜ!」
「あ、あなたは?」
ケイトさんが謎の男に尋ねた。
「通り過がりの星の王子様さ」
このキザな物言い、普通なら失笑ものだが、彼はそれを言う事を許されている。
何故なら、それは紛れもなく、奴だからだ!
——スター⭐︎パイソン——
左手のサイキックガンでどんな強敵も倒す宇宙最強の海賊。
彼は不敵な笑みを浮かべ、パイレーツギルドの奴らを睨みつけた。