番外編 宇宙漂流記ルミナス 21 ペンタゴン・ドリーマーズ1
どうやらまたワープの失敗で、オレ達は別のロボアニメの世界に飛ばされたみたいだな……。
しかし、あの妖精といい、あの大型フロートトレーラーの荷台のロボットといい、オレは非常にこの世界を見覚えがある!!
ここは間違いなく重戦騎アルガイムの世界だっ!!
そうだそうだ、学生の頃これがメチャクチャシャープなデザインでカッコよかったんだよな。
永田メカと呼ばれる内部骨格のかっちりした通称ムーバブルシステム!
このムーバブルシステム、アルガイムで初めて使われたがその後Zガンボーグや飛空戦機バリグナーでも使われていたんだよな。
ロボをチャチい子供の玩具の箱積み重ねから工業機械の延長線上に持っていった。——ビバ、リアルロボット!——
いかんいかん、こんなとこでニヤついていたらオレは怪しい奴そのものだな。
とにかく一旦このラバにはきちんと挨拶しておかないと。
彼はこの物語の主人公で、失われた古代の王国カノンの末裔だ。
だから本名はラバ・ライロードではなくカノン・ライロードという事になる。
「ラバ、アタシなんだかコイツ嫌いだわ」
何だとこの羽妖精、いきなり初対面で人に対して嫌いとかコイツはデリカシーってものがないのか?
「リリル、そういうことを言うもんじゃ無いよ。いくら胡散臭い相手でもさ」
——オイオイ、亡国の王子様。アンタも何気に酷いこと言ってるの気が付いてますか?
このラバと一緒にいる30センチくらいの妖精はリリル・ファウ。
前作のマスコットキャラであるキャム・ファウの流れを汲むコメディリリーフの自称作品のメインヒロインだ。
見世物小屋に売られていたのをラバが買って自由にしてやった事で彼に恋をし、押しかけ女房的に彼の世話を焼くようになったらしい。
「まあいいわ。キャロとアタシで今日のお昼作ったからさ、呼びに来たのよ、あのでっかい機械の整備もいいけど、シチュー冷める前に食べてよね」
どうやら昼のタイミングだったらしい。
そりゃオレが悪かったかもな。
ルミナス号からはセドリック、セーラ、ペリーヌ、マルコ、それに機体の修理の終わったジャッキーが出てきて辺りを探索していた。
「あ、レイジ。こんなとこにいたんだね」
「何よ何よ、アンタ達。シチュー欲しさに集まってきたの? ダメよ。この愛情たっぷりシチューはアタシがラバのために作ったんだから。キャロはおまけだから許すけど」
そう言っていたリリルは、ものすごく大きな金切り声を上げていた。
「キャアアアアーーー! アタシのラバの為の愛情たっぷりシチューが空っぽじゃないのー!?」
「ボク達食べてないよ」
「私もです。見たらもう中身が……」
「じゃあ誰なのよ! アタシのシチュー食べたヤツ!」
あ、これ確か原作で見たシーンだ。
この後残念なイケメンのアイツがカッコつけて現れるはずだ。
「薄味の都会ぶった味はワタシの好みでは無いな」
「何なのよアンタ! アタシのシチュー返しなさいよ!!」
「ふむ、コレは金を払うほどの味ではないな」
このアホ、リリルの火に油を注いでどうするつもりだ?
「もうあったまきた!! アンタ絶対許さないからね!」
「ひっ! ひいぃっ! 羽根つき妖精だ!!」
長身で紫髪の残念なイケメンは腰のレーザーセーバーを抜いてリリルを切ろうとしていた!
「妖精は悪魔の手先! ここで切り捨てないと不幸を撒き散らすのだ!」
残念なイケメンのレーザーセーバーがリリルにかすった。
それを見たラバがレーザーセーバーを抜いた。
「か弱い女の子に手を出すなんて騎士の風上にも置けないヤツめ!」
「何をするか、このギムレー県の13傑衆の末席、ギムレー男爵の息子である私を愚弄するか! ワタシはギムレット・ギムレーだ!」
あ、思い出した。
この残念なイケメン、ギムレット・ギムレーだ。
この作品が終始シリアスな流れなのに彼が出てくると途端にギャグになってしまう男。
それがギムレット・ギムレーだった。




