番外編 宇宙漂流記ルミナス 15 バリアン・ワールド 3
チュチュルは泣きながら部屋の外に飛び出した。
スターリングマジで反省しろ!
……と言いたいとこだが、彼は以前のオレに似ている。
だから尚更に許せないのかもしれない。
そうか、外から見たオレはあんな感じのヤツだったんだな。
親の権力を自分のものだと勘違いして、自分が偉いと思い込んでいた。
だが、ジョルジュ王子は全くオレとは違う。
彼は本来この世界のジョーダー王国の王子、何不自由無く生活できるはずだった。
しかし、彼は生まれてすぐに征服者ラーダルに国と母を奪われ、父も殺されてしまった。
彼は生まれながらに白い谷のリーダーとして生きる宿命を背負ってしまったのだ。
本来なら遊びたい世代の子供とも言えるジョルジュ、だが彼には白い谷のリーダーとしてそんな自由は許されていなかった。
だからランベル将軍もそんな彼に責任を負わせてしまった事を悔やんでいる。
しかし今はルミナス号の子供達がいるので、ジョルジュ王子は初めて同じくらいの歳の子供と対等に話す事が出来た。
「ジョルジュさん、ボク達が彼女を探してきます!」
「ダメよ、こういう話は女の子同士の方が良いんだから。スターリングは少し反省しなさいよね」
「そうだぞ、スターリング。アンタダサいよ、ダサい」
スターリングはペリーヌとエリザベスにボロクソ言われている。
まあ反省する事だな。
「みんな、すまない。チュチュルの事をよろしく頼む」
女の子達は飛び出したチュチュルを探して白い谷の外に出た。
どうやらチュチュルは泣きながら白い谷の外に出てしまったらしい。
しかもそれはルミナス号を中に入れる為に大きく門を開いていたので、ある意味オレ達のせいとも言える。
女の子達だけで白い谷の外に出てしまうと危険だ。
オレ達はチュチュルを探す為に白い谷の外に向かう事にした。
だがこの危険な状況では生身で荒野に出る事は死を意味する。
だからオレはウィンセルとランセルを整備する事にした。
砲撃特化のガンセルは前回のタキオンキャノンの無茶のせいで出撃不可だ。
オレの整備には白い谷の協力者、イーズバンが手伝ってくれた。
彼はリルルカの同士と言われているが、オレにはわかる。
この人物は間違いなくこの星の人間ではない。
この星の人間にしては彼はあまりにも知りすぎているのだ。
彼はオレの整備するウィンセルを見てすぐに構造を理解し、ランセルを整備してくれた。
その上、ルミナス号のタキオンエンジンの構造やワープシステムも把握出来ているようだ。
彼が修理してくれればワープシステムは確実に修理可能、これでようやく移住惑星テラニアに戻れるかもしれない。
さて、飛び出したチュチュルと女の子達を早く白い谷に返してこの星を離れよう。
セドリックのウィンセルとマルコのランセルが空中を飛んて女の子達を探した。
「ほえー、バリアン以外に空を飛ぶ機人がこの世界に存在したなんてなー、世界は広いもんだなー」
いや、ロック。それは機人ではないんだ。
オレはルミナス号からウィンセルのカメラ越しにこの辺りの光景を見ていた。
いた! チュチュルだ。
どうやらペリーヌとエリザベスが説得してくれたので三人で白い谷に戻ろうとしているみたいだな。
安心したオレ達だったが……この時、恐るべき事が起きてしまった!!
「キャアァ! 何よアレ……?」
「イヤ、大きな……ヘビィィイ!!」
「うわぁぁあーん、怖いよぉ……」
子供達の前に姿を現したのは超巨大なヘビだった……いや、アレはヘビなんてものじゃない!!
「くははははっ! 見るがいい、コレがかつてこの大地を支配した邪神兵ダウエルだ!!」
なんと、ヘビの下半身を持っていたのは、征服者ラーダルの部下であるハイルタットの操る邪神兵ダウエルだった!!
「出てこい、ジョルジュ王子。このラーダル親衛隊長ハイルタットが相手になってやろう!!」




