番外編 宇宙漂流記ルミナス 9 銀河新風ザンシンガー
オイオイオイ、何でワープ先が移住惑星テラニアではなく銀河新風ザンシンガーの舞台のジョウシュー星に到着してるんだよ!?
宇宙に浮いているスペースバギーに乗ったヤツがテレビカメラでルミナス号の巨大モニターに映った。
オレの前にいる男はチュージ・クニサーダ。
銀河新風ザンシンガーのメインパイロットだ。
「びええええー。こわいよー」
「オイオイ、オレそんなに怖いか? ってか泣く子も黙るって言ってるのにこれじゃあオレの通り名台無しじゃないかよ」
ネロが大泣きしている。
アンも一緒になってかなりメチャクチャ泣いていた。
この二人、幼稚園児くらいの年齢なのでほぼ泣く係と言える。
「チュージ、何やってんだい。子供泣かすんじゃないよ。ほらほら、ボウヤ、お嬢ちゃん、こわかったよね。お姉ちゃんがいるから大丈夫だからね」
「オクニ、オレが悪いってのかよ」
「そりゃあオマエの顔見たら子供も怖がるだろうよっ」
「お前達、馬鹿な事をやっているんじゃない!」
ルミナス号の大型モニターに次々と映ったのはチュージ、イシマッツ、ジローチョ、オクニの四人だ。
この四人が乗るスペースバギーが巨大化して合体する事で、完成するロボットが銀河新風ザンシンガーだ。
このザンシンガーに乗ったキョーカクの四人がトクガーのロージュー・サダノーブや後半の敵タダクニー相手にネングを貧民に取り返す為に戦うってのは知ってるが、オレはあくまでもゲームで知っているだけで本編はまるで知らないんだよな。
「悪かったな、ウチのチュージが子供達を驚かせてしまったようで。これはお詫びという程ではないが俺の気持ちだ」
そう言ってジローチョがオレ達に向かって何かを投げてきた。
ルミナス号からはロボットアームが伸びてきてそれを回収した。
――これは……どうやらこの世界のお金みたいですね。――
「10000クレジット入っている。それがあれば十分エネルギー代にはなるだろう」
「こんなモノ……受け取れませんよ!」
スターリングがジローチョに反論した。
「素直に受け取っておけよっオレ様たちが仕事を終わらせた金の一部だからよっ」
「イシマッツ、余計な事を言うな」
このお調子者はイシマッツ、エンシュー星の出身でジローチョの弟分だと聞いた。
「まあアンタ達、見たところ子供達だけみたいだけど、ひょっとしてバテレン星雲に売られるところだったのかい? どうやって逃げ出してきたんだい?」
オクニがルミナス号の子供達に質問をしたが、子供達はこの言葉の意味が分かっていない。
というかゲームの知識しか知らないオレも詳しい設定を言われても困る、これはオレの生まれる前の作品だからだ。
また、再放送も中々見れなかったのでますます状況が分からない。
「あなた方が敵でない事はわかりました。私はこの子達の責任者……というか保護者のケイト・アーデルハイドと申します。危ないところを助けていただきありがとうございました」
ケイトさんは、自分が一番年上だからと責任者役を買って出てくれた。本当はオレの方が年上なんだけどここは彼女の意志を酌んでおこう。
「……とにかく今はここを離れた方が良いだろう、トクガーのサムライが一揆だと思って鎮圧に来る可能性がある」
ルミナス号は四機のスペースバギーに案内され、彼等のアジトに向かった。
彼等のアジトはエンシュー星の小惑星に存在した。
そして、オレ達は彼等G9のアジトで歓迎された。
「まあ、飲みな。アンタ未成年じゃないんだろ」
「は、はあ。いただきます」
オレはジローチョの手渡したドブロックという酒を飲んだ。
「!? グハッ! ゲホッ、ゲホッ……」
「ハハハ、だらしない兄さんだな。この程度の酒で参るとは」
そう言ってジローチョはドブロックを一気に呑み干した。
「それで、お前達は一体どこから来たんだ?」
「オレ達は移住惑星テラニアを目指してワープしたんだが、ワープ装置の故障でこの宙域に飛ばされてしまったんだ」
「テラニア……聞いた事の無い星だな。それはバテレン星雲の中にあるのか?」
ジローチョがオレの話を疑う事も無く信じてくれた。




