番外編 南方の島の新婚司令官
オレは今、南方の島にいる。
新たに女帝になったハリール伯父上の娘であるチグサ陛下にオレが与えられた任務は奇岩島の司令官だ。
ただしそれは以前の地球侵略目的ではなく、地球に定住、もしくは派遣されたダバール星人達の統治の為だ。
デスカンダル皇帝が死に、地球とダバール星人の戦いは終結した。
だが、新たに発生したのは姉妹星となった二つの星の住人の戦後復興の問題だ。
その担当としてオレが任命されたのもまあ適材適所とは言えるだろう。
実際地球侵略に携わり、この辺りの地形や環境に詳しいのはオレという事になる、
だからオレにとっても今のこの仕事はそれほど大変ではないと言えるだろう。
それに、何よりもこの奇岩島はあの南方の島に近いので、仕事が終わればオレはいつでもティティナに会う事が出来る。
ティティナはオレの恋人、いや……もうすぐ妻になる女性だ。
以前海で漂着したオレが助けてもらった時はあどけない少女だったが、今は立派な女性になっている。
オレと彼女はもうすぐ結婚する事になっているが、むしろ今のオレの悩みの種はその事だ……。
もちろんティティナとの結婚はとても嬉しい事のはずなのだが、周りの連中が良かれと思ってやってくる事がオレには頭を悩ませる原因なのだ。
チグサ陛下が盛大な結婚式をするべきだと言い、ティティナの父親である南方の島の長老は部族の風習に従った婚儀式をやるべきだと言い、またボボンガやバルガル将軍も彼等の善意で結婚式の装飾を用意しようとしたのがとんでもないデザインだったり……悪意が無いだけにどれも断れないので困っているのだ。
——このままではトンチキな服装をさせられた挙句、世界中の要人にオレの変な姿を晒し、さらに南方の島の奇祭を体現させられる!——
それでオレは頭を悩ませていたのだ。
そんなオレはある人物の事を思い出していた。
彼がいたら良いアイデアを出して切り抜けてくれるだろうが、彼は自らの命をかけて地球とダバール星を助け、その代償として自らの命を失った人物だ。
クニヒロ、お前だったらどうこの状況を切り抜けたのだろうか……。
まあいない人物の事をいつまでも引っ張り続けわけにはいかないか、仕方ない……。
オレは婚儀のための下準備を進める事にした。
まず、南方の島の男は婚儀式の前に一人だけでサメかクジラを退治しろというのだ。
まあ、これは戦士であるオレにとってはそれは大変な事ではなく、すぐに片付いた。
それも、オレの取ったクジラは歴代でも最高のデカさだったらしい。
オレがクジラを仕留めたのを持って帰ると、ティティナと長老達はとても喜んでいた。
そしてついにオレとティティナの結婚式が行われた。
会場はマグネコンドルの甲板だ。
ヨヨギ博士はわざわざオレ達の為にこのマグネコンドルを南方の島に飛ばして持ってきてくれたのだ。
そしてダバール星人、地球人、南方の島の住人達によるオレとティティナの結婚式が行われた。
結局オレはボボンガやヨヨギ博士、チグサ陛下の用意した衣装を全部着替える事になったのだが、ティティナはそれをとても喜んでいた。
まあ、オレがイタズラや悪意では無いから変に突っぱねなかったのが良かったのかもしれない。
そして、盛大な式は三日三晩に続いた。
オレとティティナは正式に夫婦となり、オレはこの地球でティティナと共に生きる事を選んだ。
明日からはまた奇岩島基地の司令として戦後の復興の仕事が待っている。
だが今は家で待ってくれる妻がいるのでこれまで以上に仕事が頑張れるといったところか。
「シャールケン司令! 大変です、酔っ払いが暴れて手がつけられません!!」
「何だと! オレが行くから待っていろ!」
そしてオレが酔っ払いを取り押さえた現場に到着すると、そこにいたのは酩酊状態のヨヨギ博士だった……。




