番外編 カルシウム記念日
みんなが見たかったとリクエストのあったクニヒロとマーヤちゃんの二人が助かる世界線の話です。
ギャグ多めになっています。
俺はピンチだった!
俺の目の前にあるのは、魚の骨を牛乳に漬け込んだ謎の物体だ……。
後は焼き豆腐にエビを刺してチーズを乗せた謎の料理……。
——どうしてこうなった!?——
「ご主人様ー、今日はカルシウム記念日なんですから、好き嫌いはダメですよ。さあ、たーんと召し上がれ」
今のマーヤの料理はメシマズを通り越して殺人級だ!
だが俺はコレを食べさせられる事になる。
それは、今日がカルシウム記念日だからだ。
——カルシウム記念日——
それは、この星の危機を救ったカルシウムに感謝し、カルシウムの多い食べ物飲み物をいただく日だ。
新生ダバール星ではこの日は祝日になっている。
テレビでは女帝チグサ自ら牛乳を二リットル飲み干し、群集からは大歓声が上がっていた。
この妙な奇祭とも言える原因を作ったのは実は俺だ。
ガッダイン5とグレートシャールケン、それに多くのロボ達によってアカシックレコードの怪物ラグ・ラゲンツォは宇宙の塵となり、宇宙に平和が訪れた。
だがダバール星の人工太陽は崩壊寸前で、一度停止する事になった。
そして荒川長官のおかげで数億人のダバール星人達が極寒のダバール星から地球に避難し、その間に地球とダバール星の最高の技術者達により、人工太陽が超耐熱金属マルスニウムと超弾性金属ミラニウムで修復されていた。
「この修復を少しでも早めるには、転送装置がある方が良さそうだな」
「ブレン、そんな物を作れるのか?」
「問題ない、ボボンガの村の近くにあった転送装置を小型ながら再現した物ならすぐに作れる」
——ブレンのこの発想がまさか後々大きく響く事になるとはまだ誰も気がついていなかった。——
この転送装置のおかげで、人工太陽の修復は本来の予定よりも早く効率的に進められる事になった。
そして期限の三ヶ月より早く人工太陽の修復が完了した。
俺達は人工太陽作動のテストでダバール星の人工太陽に向かった。
ついに……人工太陽が再動し、本当の平和が来るんだ。
——だが、現実は非情だった。——
全員の見守る中、人工太陽はスイッチを入れられ、作動するはずだった。
だが、人工太陽は動かなかった。
何故だ!?
まだ期限まで時間があるとはいえ、原因がわからなければ発動は不可能だ。
もしこれが長引いて、結局期限切れになってしまうと、我慢してくれていた地球人とダバール星人の間に再び争いが起きてしまう!
代々木博士達は自分達が説得してくれると言って、仕方なく俺達は全員人工太陽を離れる事になった。
だが、全員がマグネコンドルに乗り込んだ中、俺は無人になったドグローンに乗り、一人で人工太陽に向かった。
俺には分かっていた。何故人工太陽が動作しないのか。
それは、カルシウムが無かったからだ。
爆発を起こすためにはサイクロトロンのカルシウムが必要だ。だが、この人工太陽にはカルシウムが無かった。
俺はキャプテン・ニュートンの話を思い出した。
人間一人のカルシウムがあれば、サイクロトロンは動く。
せっかくここまで生き延びた命だが、ダバール星と地球の争いを止めるためなら惜しくはない。
まあここまで楽しく作品世界を生きてこられたんだ、俺は満足だ。
通信機からひっきりなしに連絡が来ている。
最後にみんなに挨拶だけしておくか……。
「みんな、俺はこの人工太陽を再動させる方法を知っている。だがそのためにはあるモノが必要なんだ」
「あるものとは何じゃぞい! まさか!?」
「流石は皆さん科学者だ、ご存知の通りですよ。そう、カ、カルシウムです」
全員、俺が何をしようとしているのかを理解したようだ。
俺は自らの体を爆破し、そのカルシウムでサイクロトロンを動かす事を決意した。
「待て、早まるな。今すぐ私がそちらに向かう!
そう言うや否や、ブレンは人工太陽への転送装置を使い俺のいる動力炉ルームにやってきた。
「ふう、間に合ったようだな。まさか自らの体を犠牲にしてカルシウムを取り出そうとか考えていたわけではあるまいな!」
流石は巨大頭脳ブレイン総統のアバターだ。
彼は俺の思考を読んでいたらしい。
さて、このサイクロトロンを発動させれば人工太陽は復活する。
しかしどうやってカルシウムを確保するのだ??
俺がキャプテン・ニュートンの話のように自爆してカルシウムを使おうとしていたのに。
そこにドアを蹴破って現れたのはマーヤちゃんだった。
「アレ? なんでアナタがここにいるんですか?」
「それはこっちのセリフだ。なぜお前がここにいる?」
君たちケンカしないで……。
「それよりもカルシウムはどうするのだ? 私ならこのブレンに牛乳でもイワシでも転送可能だぞ」
そう言ってブレンの目の下の空洞にはこぼれた牛乳と牛乳まみれのイワシが転送された、どうやら転送前に転倒してしまったようだ。
マーヤちゃんが呆れながらその牛乳を雑巾で拭いた。というかどこにそんな雑巾あったの??
まあこのカルシウムのおかげでサイクロトロンは無事発動、俺達は転送装置で無事時限装置での発動に合わせてその前に脱出成功した。
——だからカルシウムのおかげで人工太陽が発動し、ダバール星が救われた。それ故のカルシウム記念日というわけなのだ。——
それなのでマーヤちゃんがカルシウムたっぷりの料理を作ってくれたのだが……マーダーロイドの性能全振りにしたマーヤちゃんは家事スキルが壊滅的に使えなくなってしまったのだ。
レイザムの設計は他人には設定が難しい上、本来のメイドロイドの設定図はブキミーダと共に宇宙に消えた。
だから俺はこのカルシウムの料理と格闘する羽目になってしまったのだ。
「いかがですか? マーヤの愛情たっぷりの手料理は?」




