第四十四話 巨大獣デズガズ デスカンダル皇帝の最後 9
レイザムの予測通り、ブキミーダはシャールケンに裏切りを勧告してきた。
「仕方ない、タツヤ! 残念だがここで死んでもらおう!」
「ヘッ、そういう事かよっ! いいぜ、その提案、乗ってやるぜ!!」
あちゃー、提案とか言うなよー。
この死闘が時間稼ぎのお芝居だとバレてしまうじゃないか。
なるほど、レイザムがガッダインチームを作戦の蚊帳の外にした理由がよく分かった。
少しさわりを聞いていただけの龍也がこの戦いがお芝居だとバラしかけたわけだから。
まあどうにか三島のブキミーダには気づかれていないようだ。
アイツはガッダイン5とグレートシャールケンの同士討ちを見て楽しんでいるようだ。
さあ、別働隊のマーヤちゃんとダンダル、頼んだぞ!
マーヤちゃん達はガッダイン5とグレートシャールケンの戦っている方とは別のデスカンダルの大型飛行艇の方に向かった。
そして、超大型アンプを設置して、ついにマーヤ&ダンダルの地獄の歌謡ショーが始まった!!
「俺の! 俺の 俺の歌を聴けー!!」
「うちゅーうきょーだいテツジーン、うちゅーうきょーだいテーツジーーーンーーー」
地獄の歌謡ショーは衛星ネオ宙域全部に響き渡った。
装甲の薄い壁は歌の衝撃でヒビが入ったくらいだ。
「ボエーーー、ボアボエーーー」
「ガピー、ガピガピーーーー」
マジでこれは拷問だ、耳栓をしてても脳に直接響き渡るこの音波は一体なんだというんだっ!!
脳内にズンズン響くこの音の暴力、これは確かに洗脳も解けるわ!!
実際普通の軌道を描き飛んでいたはずのデスカンダルの大型飛行艇が蛇行を始めた。
これは乗っているクルーの洗脳が解けて混乱が起きた為だろう。
さて、俺も一働きしますか。
「スカルミサイル、発射!」
機動要塞ドグローンの巨大な骸骨の歯が何本も抜け、ミサイルとして大型飛行艇にヒットした。
さあ、畳み掛けるように一気に攻撃だ!
「スカル砲、発射!!」
ドグローンの眼窩から二連の超巨大砲弾が発射され、大型飛行艇の側面にぶち当たった。
大型飛行艇は大破し、もう戦闘は不可能な状況になっていた。
ここでガッダイン5からマイクを使い、大型アンプから千草の声が聞こえてきた。
マーヤちゃん、ダンダル、ご苦労様でした。
千草の声が聞こえたので作戦通りマーヤちゃんとダンダルの地獄の歌謡ショーは幕引きとなった。
「この戦場にいる皆様、聞こえますかっ? 私はダバール星のハリール王子の娘、千草ですっ」
ハリール王子の名前を聞いた敵艦のクルーの動きが止まった。
どうやらハリール王子の名前はダバール星人なら誰もが知っているのだろう。
「私は正当な玉璽を持っている皇位継承者ですっ。今貴方達の従っているデスカンダルは偽りの皇帝、逆賊ですっ。もし貴方達が素直に投降すれば、命の保証はいたしますっ。さあ、武器を捨てて投降してくださいっ、貴方達の家族の安全は皇帝の名にかけてこの私が守ってみせますっ」
シャールケンは千草の堂々とした演説に動けないといった体で戦闘を中止している。
「どうした、シャールケン、エリーザの命が惜しくは無いのか!?」
ドガァーン!
衛星ネオの要塞のあちこちで爆発騒ぎが起きた。
「ええーい、一体どうなっておるのだ!」
「テロです、要塞のあちこちから同時に爆発騒ぎが!!」
「何だと!? 一体どうなっておるのだ!?」
どうやら三島のブキミーダはラゲンツォに乗ったまま基地の指揮をしていたようだ。
まあ、あの臆病者の小物があんな巨大な力を手に入れたら外に出たくも無くなるだろう。
だがどうやらそれが裏目に出ていたらしい。
ブキミーダのそんな性格まで作戦に組み込んでいたとすれば、レイザムの切れ者っぷりは宇宙一かもしれないな……。
ブルーマフラー隊は陽動の裏で最短ルートを選び、エリーザ様の軟禁されている部屋を見つけ出したようだ。
「皆様、こちらに来ないでください! ここには恐ろしい罠が仕掛けられているのです!」
ブルーマフラー隊はそこから動かず、無線で連絡をした。
すると、窓を打ち破って外から現れたのは鉄巨人イチナナとフジ子だった!




