第四十四話 巨大獣デズガズ デスカンダル皇帝の最後 6
レイザムはマーヤちゃんとダンダルの騒音公害とも言える歌から、何かのヒントを掴んだらしい。
「これは大発見だ! あの二人をすぐにボクのところに呼んでくれ!!」
レイザムは急いだ様子でマーヤちゃんとダンダルを呼び寄せ、何かを伝えた。
彼があの二人の歌を止めてくれた事でようやく歌という名の暴力が一旦ストップした。
なんだか不満そうなマーヤちゃんとダンダルだったが、レイザムのチート能力は話術にもあるようだ。
彼があの二人に話しかけると二人ともとても満足そうな表情になっていた。
俺は気になってその後レイザムに話しかけてみた。
「レイザムさん、一体あの二人に何を言ったんですか?」
「ああ、クニヒロさん。単に君達の歌は素晴らしいと褒めてあげただけですよ。それよりも、実は面白い事が分かりましてね。あの二人の歌の波長がある種のノイズキャンセラーになるんですよ」
レイザムの声も聞き覚えある声なんだよな。
確かタイムドカンの——説明しましょう!——のナレーションとか、宇宙艦隊のやる気0だけど銀河の魔術師と呼ばれた超有能なねぼすけ提督とかの声だ。
どれも三枚目と二枚目の中間の、どこか愛着のある声と言うべきキャラだ。
後々国民的アニメに出てくる心の俳句の初代おじいちゃんの声もこの人だったはず。
まあ非常に聞き覚えのある声ってとこだったな……。
「ところで、ノイズキャンセラーとはどういう事ですか?」
「そうですね、実はあの二人の声、声の質や大きさとかは全く違いますが、波長が同じなんです。そして実はその声は一種の催眠音波とも言えるもので、聴いた者の脳情報を上書きしてしまうのです」
——それってひょっとして!!
「それはつまり、洗脳電波や洗脳音波でマインドコントロールされている人の目を覚ます強烈な目覚ましみたいなものって事ですか?」
「そうですね。実はまだ憶測でしかないのですが、この波長は直前の情報だけを上書きにするので本来の記憶とか経験には作用しないようなんです」
それはつまり、洗脳は覚まさせる事ができるがその以前の本来の本人の記憶や経験は上書きされないというチートなのでは!?
「それって! もしデスカンダルや三島のブキミーダが兵士やエリーザ様を洗脳していたとしても、このマーヤやダンダルの歌を聴かせたらその洗脳が解けるという事でいいのですか?」
「可能性はあるね。実はまだ計算上でのものなので結果は出ていないから、実際に試さないと分からないけどね」
いや、それでもかなり戦いやすくはなりそうだ。
洗脳されている兵士達はそれが既に人質みたいなものだ。
その彼等が洗脳から解かれたら自ら投降してくる可能性は高い。
さあ、戦闘準備だ!
だが、その前に最後のブリーフィングを行う必要がありそうだ。
泣いても笑ってもこの戦いが本当の最後の戦いになる。
俺達はマグネコンドルのロボ格納庫をブリーフィングルーム代わりにしてクルー全員を集結させた。
地球人の代々木博士と一応のダバール星人である俺をリーダーに、ブレン、そして新たな女帝となった千草、その補佐についたシャールケン、バルガル将軍、アクラデス、ダンダル、ミザーリンを筆頭とし、最後の作戦会議が始まった。
「みんな、よく集まってくれたぞい。これがついに最後の戦いじゃぞい。あのデスカンダルと三島のブキミーダを倒し、このダバール星を救うのじゃぞい!」
全員から歓声が上がった。
今ここに星の垣根を超えた最強の連合軍が結成されたのだ。
「ガッダインチーム、実はあなた方に話があります。シャールケン、お前もだ」
「レイザム、一体どういう事だ?」
「何かよく分からないけどよ、オレも話を聞く必要があるんだろ」
どうやらレイザムに作戦があるようだ。
ガッダインチームとシャールケンに先に話をしてから後で伝えるとレイザムに言われたので、俺は少し待つ事になった。
さて、宇宙最高峰の頭脳は一体どのような作戦を考えたのだろうか?




