第四十三話 巨大獣バミンゴ 勝利を呼ぶ5人の力! 11
「ブキミーダ、彼は恐ろしい男です。力はありませんがその分生き延びるための知恵だけは誰よりも持っているでしょう。その彼はハリールの弟であるデスカンダルに取り入りました」
まあ、一応俺の知っている話だが、新たな何かがあるかもしれないので聞いておこう。
「彼はデスカンダルを皇帝にする為、汚れ仕事を行なっていました。その点で秘密警察署長というのは立場的にも都合が良かったのでしょう。ダバール星の下級貴族に生まれた彼は生まれ持った天才的な頭脳で次々と出世しました。特に軍の参謀だった時に先住民の駆逐等でその本領を発揮したのです」
それがボボンガの一族を壊滅させた出来事だったわけか。
「ブキミーダは、何故デスカンダルに? どうやって取り入ったのでしょうか?」
「さあ、そこまではわかりかねます。ですが、この国の皇帝はハリールが即位すると誰もが思っていた中、彼はハリールの弟のデスカンダルに取り入ったのです。それは、多分……誰もが見向きもしない相手なら容易に操れると思ったからでしょう」
なるほど、双方の利害の一致といえば間違いではなさそうだ。
「その後、秘密警察署長になったブキミーダは次々と貴族を逮捕し、ハリール王子の地位や仲間を消していったのです。その後彼は科学庁長官になり、さらに多くの犠牲を出しながらデスカンダルに逆らう者達を粛清していったのです。そして、彼はついにあたくしの実家に……いえ。あたくしに目をつけたのです」
それがハリール王子によるダバール星脱出劇に繋がったわけか。
「あたくし達はこのままハリール王子がこの星にいれば確実にデスカンダルかブキミーダによって謀殺されると考えました。そこであたくし達はハリール王子の病気を偽装し、そのままこの星から宇宙船で彼を送り出したのです」
そうか、そういう経緯があった事はガッダイン5大百科にも書かれてはいなかった。
あくまでもハリール王子はダバール星を脱出したと書いていただけだった。
「しかしその後ハリール王子を脱出させた事が科学庁経由でわかってしまい、あたくしの実家はハリール王子の暗殺容疑でブキミーダに両親が逮捕されてしまったのです。そして、彼は両親を助けて欲しければ婚約しろと迫ってきたのです」
非道卑劣極まりないな……。
「その後彼との間に娘が生まれました、貴方もご存知のキレーダです。彼はキレーダを可愛がる事はありませんでした。ですが一通りの父親の義務は果たしていたようです、でもそれは彼女の為ではなく、あくまでもデスカンダルに娘を差し出す事で自身の立場を安泰させる為だったのです」
その話は俺も知っている。
「しかしキレーダさんは、地球に行かれたんですよね」
「はい、彼女は自身がデスカンダルの妻にされる計画を知り、このままでは自由がなくなると思ってブキミーダの手を逃れる為に軍に志願したのです。ですがその後彼は自らの計画を潰されるのを危惧し、デスカンダルの力で軍の参謀長に就任したのです」
まさか、あのブキミーダが軍に就任した理由が自らの娘を支配から逃がさない為だったとは!
……まあ、皇帝の妻の父親となれば、その地位は安泰だからな。
ある意味藤原道長のようなことをしようとしていたわけだ。
「しかし、その後は連絡が付かなくなったので、どこかで貴方と入れ替わってしまったのでしょう。そこで、あたくしもお聞きしたい事があります。ブキミーダの姿をした貴方は一体誰なのですか?」
「ウルワシアさん、俺は、未来から来た地球人の技術者です。タイムトラベルの途中でブキミーダの手下に捕まり、人格入れ替え装置の人体実験に使われてしまい、彼と肉体を入れ替えられてしまったのです」
俺は、他の人達に言っている設定をそのままウルワシアさんに伝えた。




