第四十三話 巨大獣バミンゴ 勝利を呼ぶ5人の力! 10
何という事だ、ウルワシアには俺がブキミーダでは無い事が分かっていたようだ。
「な、何故? 俺がブキミーダではないと……??」
「フフフ、そりゃあ策謀の渦巻く社交界にいますから、相手の真意や正体を知らなければあっという間に食い物にされてしまいますわ。ですからあたくし、人を見る目だけは確かですのよ。貴方はどう見ても庶民です。ですが、あの……雰囲気からして他者を愚弄して踏みにじる事だけを考えているブキミーダとはまるで違う優しい雰囲気を持っていますね」
そんなに俺って庶民というか一般人っぽかったのか?
まあ、そんな俺の事はどうでも良いが……。
「あたくしは貴方にこの星を代表してお礼を言わなくてはなりません。貴方がいなければ、この星の未来はもう終わりだったでしょう……」
このウルワシアの言っているのが何を指しているのかがイマイチ分からないが、確かに俺が悪あがきしなければここにいる大半の人達が全員死亡していたのは事実だ。
本編ではこの豪華で誰もが楽しんでいる晩餐会のような事はとても行えるものでは無く、マグネコンドルでベッドの上に横たわっていたウルワシアと傷だらけのダロア大僧正がガッダインチームやマグネコンドルのクルー達と共に犠牲者を弔うささやかな食事が行われただけだった。
だが、この時間軸……もう地球にダバール星の脅威が訪れる事は無く、また、ダバール星を支配した恐怖の皇帝デスカンダルがいなくなった事でもう誰も不幸にならないはずなのだ。
しかし……それでも解決するべき事は後三つ残っている。
・デスカンダルと三島のブキミーダに攫われたエリーザ様の救出。
・暴走を続ける人工太陽の修復。
・そして……ラゲンツォの脅威。
エリーザ様の救出は、つまりデスカンダルを倒す事と同じだといえる。
今やデスカンダルがダバール星人に交渉できる材料としては、人質になっているエリーザ様だけだ。
それなので、デスカンダルの傍にエリーザ様がいるのは間違いないだろう。
人工太陽の修復は本編では出来なかったが、本来の五十話の話の中では既にシナリオが作られていたらしい。
代々木博士を中心にしたスタッフが、ガッダイン5で突入した人工太陽制御室の入り口を千草の玉璽で開き、機能を一旦停止させ、それを修復後再稼働させる形だった。
本来の人工太陽とは違い少し機能が低下したがそれでも失われるよりはマシだったので、生活は苦しくはなれども、それでもダバール星は細々と生きていくだけの力を取り戻す、本来の五十話までの話はそういう流れになるはずだった。
本編で人工太陽の話になった時、――レイザム主任が生きていれば……。――という話になっていたが、今のこの時間軸では食中毒で入院したレイザムも退院して復帰していてもおかしくはないはずだ。
人工太陽の件は後で考えるとして、今は三島のブキミーダをどうにかしなくては!
「ウルワシア様、お聞きしたい事がありますがよろしいですか?」
「はい、どういった事でしょうか?」
「貴女にとって、ブキミーダとはどのような男でしたか?」
ウルワシアにこの質問をするのはかなり不躾かもしれないが、彼女はあまり良い顔をせずとも、俺の質問に応えてくれた。
「彼は……最低の男です。あたくしの実家はこの星でも皇帝に次ぐ地位の公爵でした。ですが、長年の浪費や他者を省みない態度でどんどん腐敗していき、いつしか名ばかりの公爵家と呼ばれるようになったのです。そんなあたくしの実家に目を付けたのがあのブキミーダだったのです」
まあアイツなら十分あり得る話だ。
「あの男は、デスカンダルの腰ぎんちゃくで、秘密警察署長だった時、あたくしの実家に国家反逆罪の濡れ衣を着させ、お父様お母様を捕らえました。容疑はハリール王子の殺害容疑、もしくは国家転覆でした。あたくしはその容疑を晴らしてやる代わりにと、あの男に婚約を押し付けられたのです」
なんとも酷い話だ。
ウルワシアのブキミーダに関する話はまだ続いた……。




