第四十三話 巨大獣バミンゴ 勝利を呼ぶ5人の力! 8
アーゴンが落下してしまうと、その巨体に押し潰されてしまうとすれば、間違いなく数百人は確実に即死だ。
さらに落ちた時の衝撃で吹き飛ばされ、周りの人間に当たって砕け散るような惨事も加えると千人は超す。
被害はそれだけに収まらず、もしあの巨体が落下すれば確実にどこか爆発が起きてしまう。
そうなると、二次被害で火災が発生し、群衆の密接した場所では火が人から人に燃え広がり、数千、いや……数万の民衆の命が奪われる事になる!!
だが、どう考えてもあの落下速度と落下軌道は、数万人が犠牲になるコースだ!!
――クソッ! 俺が助ける事が出来ないのが歯がゆい!――
俺はマグネコンドルから指示を出すくらいしか出来ない自分自身を悔やんだ。
……だが、奇跡は起きた、いや……これも俺が繋いできた結果が、偶然の重なった必然になったといえるのだろうか。
「超電磁ワイヤー!!」
ガッダイン5は超電磁ワイヤーを伸ばし、何本ものワイヤーを網状にして落下する寸前のアーゴンを捕らえた。
「イチナナ、戦闘飛行モード! 頼むわ!」
「ラージャー!」
鉄巨人イチナナが戦闘飛行モードでワイヤーに引っ掛かったアーゴンを空高くに持ち上げ、山の向こうに降ろした。
助かった、これで……民衆の未曽有の危機は避ける事が出来た。
「皆さん、こちらに来てください! 避難誘導は指示に従って!」
ミザーリンがケン坊の姿の三島長官の指示で的確な避難誘導をしている。
今のラゲンツォのいる位置から考えて、最も被害の少なそうな場所を見た上で避難誘導している為、混乱は特に起きずに大群衆は戴冠式会場から逃げる事が出来た。
――だが、戴冠式会場にはウルワシア、ダロア大僧正、そして千草の三人が残った。
「ウルワシアさんっ、何故貴女は逃げないのですかっ?」
「戴冠式は最後まで成し遂げなくてはいけないのです。あたくしはダバール星の貴族として、誇りとしきたりを守る必要があるのです」
「儂もそうぢゃ。亡きハリール坊ちゃんの娘が帰って来たんぢゃ。戴冠式を終えるまで儂はここから一歩も動かんぞ!」
奇しくも戴冠式は誰もいなくなった場所で続けられる事になった。
千草も心を決め、この戴冠式をやり遂げる覚悟のようだ。
「フン、もう無くなる星の女帝か、無様で憐れだな! まあいい、餞にこのラゲンツォで全て消し去ってやろう!」
そう言うと三島のブキミーダはラゲンツォのエネルギーを集めだした!
アレは……まさかクェーサーカノン!! こんな星の地表でアレを使えば一瞬でダバール星が吹き飛んでしまう!
あんなものを発射させるわけにはいかない!
「代々木博士、アイツを……アイツを宇宙まで吹き飛ばしてください! アイツはクェーサーカノンを使おうとしています!」
「な、何じゃと!? それは絶対に止めるぞい!!」
「私がエネルギー調整と発射角の計算をします、代々木博士!」
「みどりさん、頼みましたぞい!」
みどりさんがマグネブラスターの微調整を始めた。
これで、クェーサーカノンを撃たれる前にあのラゲンツォを宇宙まで弾き飛ばせれば……!
だが、アイツにはバリアフィールドなるチート能力が存在するんだよな。
バリアフィールドを突破できるアーゴンは今戦える状態じゃない。
どうやってあのバリアフィールドを分解すれば……。
――分解!――
そうだ、エルベΩ1の必殺兵器が確か分子分解を巻き起こすエネルギー波の奔流だった。
「コーネリアさん、頼みます。全力であのラゲンツォ目掛けて必殺武器を使ってください! 時間が無いんです!」
「クニヒロ……さん、わかりましたわ! 行きます、セイレーン・シュルス……リートォォオッ!!」
「な、何じゃこれはァああ!?」
エルベΩ1のセイレーン・シュルスリートは、ラゲンツォの外側を包み込んでいたバリアフィールドを分解してしまった。
「よし、今じゃ! マグナブラスター発射!」
「うぐおおおおあおあああああっ!!!」
マグネコンドルから放たれたマグナブラスターは、ラゲンツォを強烈なエネルギー波で大気圏の外の宇宙にまで吹き飛ばした。




