第四十二話 巨大獣アーゴン 平和を取り戻せ 10
ダバール星皇帝の印とも言えるのが玉璽だった。
本編では、ガッダインチームの北原千草がそれを父の姪であるウルワシア公爵令嬢に見せる事で本物のハリールの娘だとその場にいた全ての民が認めた。
だが、今はその玉璽がこの場に無い。
ウルワシアは千草の事を間違いなく叔父であるハリールの娘だと認めた。
だが、それでも玉璽が無ければ、彼女を正式な皇帝の後継者だと認めるわけにはいかないのだ。
なお、今玉璽を持っているとされるはずのデスカンダル皇帝が持っていた物は精巧に作られた偽物だった。
だから、本物の玉璽の入ったペンダントを持っていたのは千草ただ一人だけだったのだ。
「奪われた……って、一体誰にそのペンダントを奪われたの!?」
「ウルフ博士……という男ですっ……狭山湖で攫われた時っ……」
「何だって!? あのクズ兄貴……絶対に許さないわ!」
フジ子がウルフ博士の事を聞いて大激怒した。
だが、いくら怒ったところでもう時間が無い。
一度地球に玉璽を取りに戻っていたらその間に人工太陽が爆発してこの星が滅亡してしまう……。
「千草君。本当に、ペンダントを奪ったのはウルフ君なのだね?」
「ブレン……さんっ?」
「それなら話は早い、わたしが彼を尋問してみよう……聞こえるかね」
ブレンの目から映像が映し出され、巨大頭脳ブレイン総統とウルフ博士のやり取りをその場にいる全員が見ていた。
「ウルフ君、君が奪ったという千草君のペンダント、渡してもらおうか」
「だが断る! コレはすでにワタシのモノだ!」
「聞き分けが無いようだね、お仕置きされたいのかな?」
「ウッギャギャギャがギャァァアアッ!」
ウルフ博士は頭にはめられたリングから電撃を流され、拷問された。
「わ、わかった、返す、返すから……へッ、あんなモノ一銭の値打ちも無いからくれてやるわっ!」
ウルフ博士は渋々ブレイン総統に千草のペンダントを返した。
「それで良いのだよ、さあ、これをダバール星に送ろう」
なんと、ブレイン総統は転送装置を使い、ブレンの目の下の空洞の口のような部分に一瞬で千草のペンダントを転送した。
「コレは不思議な物だね。わたしの分析を弾いた上、複製禁止のフィールドが張られているようだ。これを作ったのはよほど優れた文明を持っていた種族に違いないな」
俺はこの玉璽が人工太陽のコントロールルームに入る為の装置だという事を知っている。
実は本編では使われなかった設定だが、本来の五十話の話は、デスカンダル皇帝を倒した後にこの玉璽を使ってコントロールルームに入り、人工太陽を停止させ、修理までの間は和解した地球人が技術協力してこの人工太陽を修理してダバール星が救われるという話になるはずだった。
だが本編が後番組のスタート時期の早まった事で全五十話の話が全四十四話になってしまい、この人工太陽は修復される事無くダバール星に破片が降り注ぎ、死の星になってしまったのだ。
なお、全五十話の中ではガッダイン5に耐熱フィールドを付けた上で人工太陽に突っ込み、内部に入ってからコントロールルームに入って修理するという展開になるはずだった。
あの人工太陽、外側には炎を噴き上げる機関があるが、内部は機械仕掛けになっていて温度は普通の室温の二十度前後に保たれている。
なるほど、あの玉璽はその人工太陽制御ルームに入る為の物だったのか。
だから複製禁止になっていたのだろう、そして……初代皇帝とは、人工太陽を管理する事を託された人物の事だったに違いない。
「こ、これは……間違いありません、ハリールのペンダントです! チグサ、貴女こそこのダバール星の女帝になるべき人物なのです」
「叔母様……私っ……」
どうやらまだ千草は自身の運命を受け入れる心の準備が出来ていないようだ。




