第四十二話 巨大獣アーゴン 平和を取り戻せ 9
アクラデスは竹千代の言葉を聞いて動揺した。
まさか、本当に自分の気持ちをわかってくれる相手なんているわけないと思っていたからだ。
「クローンとか試験管ベビーとか、確かに僕達は意図的に作られた命なのかもしれません。でも、今そこにいる貴女は紛れもなく本人なんです! 泣きもすれば笑いもする。それは生きているからなんです。僕も以前悩みました、作り物の自分は本当に生きていると言えるのか……でも、みんなのおかげで僕は立ち直れたのです」
「そうだぜ、オレ達に竹千代がいなかったらきっとガッダイン5も負けてた、それくらいアイツはオレ達に大事な仲間なんだ」
これは龍也の素直な気持ちだろう。
実際何度もピンチに陥った時、竹千代のおかげで危機を乗り越えた事があった。
「だから貴女も僕みたいに立ち直れるはずなんです! もし辛くなったら僕に頼ってください、貴女一人くらい支えられる男になって見せます!」
「タケチヨ……ありがとう……なのだ」
アクラデスがまるで小さな女の子のようにその場にうずくまって大泣きしてしまった。
周りの民衆はそんな彼女を見守り、竹千代はガッダイン5から降りてきてアクラデスをギュッと抱きしめた。
その様子を見て困惑していたのはダンダルだ。
彼は姉のアクラデスが元から女性だった事、自分も彼女と同じクローンだった事などで、頭が混乱してどうしていいのか分からないようだった。
そんなダンダルのほおを叩いたのはコーネリアだった。
「もう、もっとしっかりしなさいよ! アナタ、男でしょう」
「ぉ、お、お前は……コーネリア……さん?」
「ワタシを助けてくれた時のアナタはどこに行ったの? 今、ワタシがこうやって地面を踏み締めて歩いてるのは、アナタがワタシを助けてくれたからなのよ。アナタはワタシにとっての恩人なのよ」
「コーネリア………さん」
そうか、この時間軸では、アクラデスには竹千代が、ダンダルにはコーネリアが、それぞれ理解者として存在したんだ。
本編では竹千代以外全員死亡していたが、この時間軸なら全員助かる事も出来る!
アクラデスとダンダルは理解者である竹千代、コーネリアのおかげで自分自身を取り戻す事ができたようだ。
そこにガッダインチームが全員到着した。
どうやらどれだけ待っても巨大獣アーゴンは姿を見せないようだ。
これは、ブキミーダがあのラゲンツォ(仮)にかまけてアーゴンを出すのを忘れていたと考えていいのだろうか?
まあ出てこないならそれに越した事は無い。
あのアーゴンのせいで本編では皇帝宮殿前に大量の死体の山が出来てしまったのだから、出てこないならそんな事にはなり得ないからだ。
アクラデスとダンダルの元に駆けつけたガッダインチームの千草を見たウルワシアが驚いていた。
「貴女、誰なの!? ハリール? ………いや、違うわ。肌の色が、貴女……地球人?」
「ハリール、お父さんのこの星での名前よねっ。私は、娘の千草ですっ」
千草の顔を触り、ウルワシアは涙を流した。
「本当に、本当にハリールの娘なのね……。肌の色以外、彼の若い頃にそっくりだわ……。ハリールはどうしてここにいないの? 彼こそが本来のこの星の皇帝に相応しいのに……」
「お父さんは私の小さい頃に死にましたっ。私はお父さんの娘としてではなく、一人の地球人としてこのダバール星を助ける為にやってきたのですっ」
千草は本編でも言っていたように自分がハリール王子の娘だとウルワシアに伝えた。
本編との違いといえば撃たれて横たわるウルワシアに話したか元気な状態のウルワシアに話したかの違いだけだ。
「チグサ、もし本当に貴女がハリールの娘なら……ペンダントを持っているはずです。そのペンダントの中にある玉璽、それこそが皇帝の印なのです」
「そんな……アレはっ……」
「どうしたのです? チグサ」
「アレはっ、地球で奪われてしまいましたっ……」
——どうするんだよ!? あの玉璽が無ければ千草が皇帝として認められないんだぞ!!




