第四十二話 巨大獣アーゴン 平和を取り戻せ 6
帝都インペリアル、ダバール星最大の都でダバール星の中心とも言える場所だ。
荘厳な皇帝宮殿を中心に、帝都が広がり、緑と建造物がマッチした光景が美しい。
だがその美しい都は今火に包まれている。
帝都で革命が起きたのだ。
革命の首謀者はウルワシア公爵令嬢。
ブキミーダの妻であり、キレーダの母でもある。
だが、何よりも……ハリール王子の母方の姪でデスカンダル皇帝がハリールを誅殺した事を知り、彼を慕う者たちを集めて革命を起こした。
俺はここでも昆虫型スパイドローンを使い、辺りの様子を調べる事にした。
そして革命軍の先頭に立つ女性を見つけた。
そう、彼女こそがウルワシア公爵令嬢だ。
「伯父上は言いました、この国に貴族と平民の垣根があるから争いや不幸が起きると。身分の違いが人の違いではありません! 人は分かり合えるのです」
彼女はハリール王子の遺志を継ぎ、デスカンダル皇帝が支配するこの貴族だけが肥え太るダバール星を変えようとしていた。
そして、その彼女の意思は平民達にも伝わり、ハリール王子を慕う者達は打倒デスカンダルを掲げ、革命に身を投じていった。
残念ながら本編ではこのウルワシアは皇帝の兵に撃たれて命は取り留めるものの、寝たきりになってしまう。
そして最終話ではダバール星脱出ロケットに指導者として乗って欲しいと選ばれたが、もう動けない上、かつて貴族の横暴を野放しにした罪滅ぼしとしてそれを拒否し、平民の子供にその席を譲った。
だが今のこの時間軸なら彼女を助ける事も出来る!
ブルーマフラー隊は今帝都に到着した頃だ。
この少し後のタイミングでウルワシアは皇帝の兵士に銃撃される! ダメだ、このタイミングでは銃に撃たれる!
無防備なウルワシア目掛け、銃口が向けられた。
ダメだ、こんな昆虫ドローンでは弾丸の向きすら変えられない。
「死ね、皇帝陛下に逆らうクズが!」
「キャアァァァア!」
「危ない! 身を伏せろ!」
剣崎隊長が叫んだ事でウルワシアは屈み、弾丸は大きく外れた。
「これを食らえっ!」
「ギャァァ! 皇帝陛下……万歳!」
洗脳されていたらしい兵士はその場に崩れ落ちた。
「怪我はありませんか!?」
「え、ええっ……え? 何なの、この肌の色……まさか、異星人!?」
「我々は地球人です、このダバール星を助ける為にやってきました! 安心してください。我々は貴女達の味方です」
そしてブルーマフラー隊の後ろに続いてダバール星の解放の為に姿を見せたのはトニー達タイタン部隊や戦士エリザ、そして、キレーダだった。
「お母さま! ご無事でしたか!」
「えっ!? あ、貴女……キレーダ……なの? 本当に、キレーダなのね!」
「はい、お母さま。親不孝な娘でごめんなさい」
感動の再会のはずのキレーダとウルワシア目掛け皇帝の兵士が襲いかかってきた!
「レイちゃん! 後ろに気をつけんしゃい!」
「え!?」
「死ね、貴族の裏切り者が!」
「ウチの可愛い嫁に何をするんじゃ!」
巴さんは皇帝の兵士を一本背負いで投げ飛ばした。
「ふう、ワシの腕もまだ鈍っておらんようじゃな」
「キレーダ、嫁って……一体どういう事なの? 説明してちょうだい!」
どうにかウルワシアさんが撃たれる未来は回避できたが、今度は別の意味でややこしい事になってしまったようだ。
「お母さま、こちらにおられるのは地球人のトモエさん、わたしの婚約者のお母さまですわ」
「キレーダ! 一体どういう事なの! 何で野蛮な地球人と……」
「お母さま! いい加減にしてください! 地球人は野蛮でも何でもありません! むしろ、ゲンタローさんは、わたしの事を命懸けで助けてくれたのです!」
あまりのキレーダの気迫に、ウルワシアは黙るしか無かった。
「キレーダ……」
「お母さま、地球人もわたし達ダバール星人と代わりありません。違うのは、肌の色だけです。ですが、その違いはきっと乗り越える事が出来るのです」
「そう、そうなのね。ハリール叔父様が言っていた事、人に違いはない、それは……貴族と平民だけでは無く、星の違いすらも言っていたのかしらね……」
ウルワシアは成長した娘を見て涙を浮かべていた。
「お帰りなさい……キレーダ」




