第四十二話 巨大獣アーゴン 平和を取り戻せ 4
俺が地球人のエンジニアの未来人だとカミングアウトした事は、特にその後に大きな混乱を招く事にはならなかった。
むしろダバール星人にはブキミーダと入れ替わった俺のおかげで労働環境が急激に良くなったと言って感謝していた奴もいたくらいだ。
「ご主人様はご主人様です。それがブキミーダ様だと思っていましたが、中身が違ったとしても、ワタシは今のご主人様が好きなんです!」
マーヤちゃん、君マジで良い子だよ。
俺がブキミーダと入れ替わった事で彼女の運命も大きく変わった。
そういえば本編で泣いて嫌がるマーヤちゃんが初期リセットされてアンドロイド爆弾にされた話がこの四十二話だったんだよな。
ダバール星の宮殿で革命軍から逃亡しようとしたブキミーダが時間稼ぎの為に民衆の中での自爆を彼女に命令した。
流石に長い間稼動した事で自我が生まれたのに、それを拒否したマーヤちゃんをアイツは初期リセットしてしまい、そのままアンドロイド爆弾として大勢の民衆を巻き込んで自爆させた。
そして最後のシーンでは半壊して首だけになったマーヤちゃんが——ゴシュジンサマ、ゴシュジン……サ……マ……。——と言いながら機能停止してしまった。
あのシーンマジでトラウマレベルだったわ。
子供だった時の俺はマーヤちゃんを見捨てて爆弾にしたブキミーダが心底許せなくて家のテレビのブラウン管を思いっきり殴ってしまった。
だが当然子供の力より当時のブラウン管の方が頑丈で、テレビには傷一つ入らずに反対に俺は自分の指を骨折してしまった。
だが今のこの時間軸では俺がブキミーダだ、だから彼女が自爆させられる事はない。
万が一気をつけるとすれば、三島のブキミーダにマーヤちゃんを奪われる危険性くらいのものだ。
だがこれだけ仲間がいる状態ならマーヤちゃんが手薄になる事はないだろう。
「貴方の本当の名前はクニヒロ様と言うのですね。今まで貴方の事をあんなブキミーダなんかと一緒にしててごめんなさい。貴方、アイツとは比べ物にならないいい男ですわ」
ミザーリンもどうやら俺が地球人でブキミーダとは別人だったと理解したようだ。
「貴方は命の恩人でわたくしの大切な人ですわ。ですが、わたくしにはもう……心を決めた方がおられるのです、ごめんなさい」
「ミザーリン、お前……」
「シャールケン様、あのパスワードの意味、わかりました。14-10-6、つまり、愛してる……。ですがわたくしはその気持ちにお応えする事が出来ません。わたくしは、敵であったはずの地球人を愛してしまったのです!」
そう言うと、ミザーリンは流のそばに駆け寄った。
「ナガレ、わたくしは貴方が好きです。この気持ち、受け取っていただけますでしょうか?」
「ミザーリン、おれにとってアンタは、もう姉さんでは無い……大切な、守るべき女だ!」
そう言って流はミザーリンを抱きしめた。
すると、周りからは割れんばかりの拍手による祝福が巻き起こった。
そう、今この瞬間、この場所では地球人とダバール星人の争いに終止符が打たれたのだ!
ここにいるのはもう既に全員が同じ目的の為に戦う仲間達だった。
——打倒デスカンダル皇帝、そして三島のブキミーダ!——
ついに心が一つになった地球人とダバール星人達は、ダバール星本星に向かうガッダインチームやマグネコンドル、そして機動要塞ドグローンの為に全員が協力して修理、補給を終わらせた。
準備が完了し、ついに俺達がダバール星に向かう時が来た。
超大型宇宙船マグネコンドル、そして機動要塞ドグローン、この2隻に乗れるだけの人員が乗り、残った人員はデラヤ・ヴァイデスに残る事になった。
目指すはダバール星! さあ出発だ!!
マグネコンドルとドグローンはついに長距離ワープによって、ダバール星への針路をとった。




