第四十二話 巨大獣アーゴン 平和を取り戻せ 3
さて、本物の三島長官がケン坊の中にいるってのはこれで全員に周知出来た。
次は俺がブキミーダの中にいる地球人のエンジニアだと伝える事だが、さあ……この世界がアニメの世界だと伝えるべきか伝えざるべきか。
今回は伝えないで俺は未来からのタイムトラベラーという事にしておこう!
「三島長官の話は皆さんに理解していただけたと思いますが、今度は俺の事を話します。俺は、本当は地球人のエンジニアで大河内邦裕と言います。実は、未来からタイムマシンでこの時代に来ました」
俺がタイムトラベラーという事なら…この先にあるはずだった未来を知っていてもおかしくは無い。
そういう設定にしておいて、タイムマシンはブキミーダに奪われて壊されたとしておけば未来に戻れない理由も説明が可能だ。
「タイムトラベラー!?」
「ブキミーダ様が地球人? だからいきなり待遇が変わったのか!」
「おれ、あの人の方が上司としては仕事しやすかったなー」
地球人もダバール星人も混乱している。
だが、俺に対して否定的な怒号は飛んでこなかった。
むしろ、ダバール星人の中には俺の事を上司として尊敬できるとまでいう奴もいたくらいだ。
「俺は未来から来た、その未来のダバール星人達の結果は悲惨なものだった。シャールケン提督は南方の島で戦死、バルガル将軍はブキミーダによって爆死、ミザーリンはこのデラヤ・ヴァイデスと共に消滅。そしてアクラデス執政官とダンダル軍務卿は革命の最中宮殿内で死亡、最後はダバール星が人工太陽の暴走で消滅する未来だ」
このあまりの壮絶な未来を聞いたダバール星人達は驚いていた。
だが意外にシャールケンやアクラデス達は驚いていなかった。
実際にあり得たかもしれない未来だと自覚しているのだろう。
実際俺が動かなければ原作と同じ、いや下手すればそれ以上に悲惨な結末になっていたかもしれないのだ。
「この者の言う事は間違っていない。オレは彼をブキミーダだと思い数々の作戦を立ててきた。だがその結果は勝ちもしなかったが、大きく犠牲の出るような負けは無かった」
シャールケンが俺の事を擁護してくれた。
今彼がダバール星人達に話しているのは、俺の事を信用できるという事だ。
「それは、彼が未来を知るゆえに起こり得た未曾有の被害を食い止めたからなのだろう!オレはこの者を信用する。彼の言う通りに動けば、我らダバール星人が迎えるであろう悲惨な未来を変える事が出来ると信じたからだ!」
シャールケンの次はアクラデスが俺の事について話し始めた。
「その通りなのだ! 彼は信用に値する人物だと言えよう。この者は地球だけではなく、ダバール星人にも大きな犠牲を出さないように常に考えて行動していたのだ。彼がいなければ今頃このデラヤ・ヴァイデスはあのミシマのブキミーダによって宇宙のチリになっていたのだ!」
——まあ、あの厨二病最強最悪ロボラゲンツォは俺が考えたものなので、追求されれば俺のせいなんだがこれは黙っておくとしよう。——
「ここにいる者達で彼のおかげで命の助かったのは地球人にもダバール星人にもどちらにもあるはずじゃぞい。儂も今思えばダバール星人の変な作戦はこのブキミーダの姿の彼によるものだったとすれば納得出来るぞい」
まあ毒を沼に撒くはずが笑いエキスで本来の犠牲者を出さなかったのが俺の最初のブキミーダとしての作戦だったな……。
それから後は青木大尉に扮したミザーリンに地球人の犠牲が出ないように先に避難誘導を指示したり、ダバール星人に犠牲者が出ないように無茶な作戦を立てさせないように先回りした計画を立てる事で出来るだけ負担を増やさないように努力した。
だから今俺がこう、カミングアウトをしても誰も悪い印象を持たなかったのだろう。
今まで努力した甲斐があったと言えるかもしれない。




