第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 12
クェーサーカノンが不発に終わったラゲンツォ(仮)に乗った三島のブキミーダは激昂していた。
「えええぇーい! どいつもこいつもワシの邪魔をしおって、ワシの計画が丸つぶれだ!」
「ブキミーダ、もう諦めて投降しろ。お前に勝ち目はない」
実際クェーサーカノンも使えず、高周波ブレードと右手を失い、重粒子ブラストも弾き返され、ヒートレーザーがオーバーヒートで使えず、エネルギー供給も上手く行かなくなったラゲンツォにもう使える武器は残っていない。
「ふざけおって! ワシに投降しろだと!? 片腹痛いわっ!」
諦めの悪い三島のブキミーダは、ラゲンツォの残ったエネルギーを移動に全振りしたようだ。
今までの鈍重さとは比べ物にならない速度で、ラゲンツォは動き、巨大獣ベミミの下腹部に巨大な左手のスパイクシールドを叩き込んだ。
「グハァアッ!」
巨大獣ベミミの上半身と下半身を繋ぐ腰部分が砕け、ベミミは上半身だけが宙に浮いた状態だ。
ラゲンツォに乗った三島のブキミーダはベミミの上半身を鷲掴みにすると、力を入れて握り潰し始めた。
「キサマがいらない事をしなければ……ここにいる連中全てを蹴散らせたのだ! その腹いせにせめてキサマだけでも惨たらしく握り潰してくれる!」
「キャアアアアッー!!」
「ミザーリン! くそっ! 彼女から手を離せ!」
ガッダイン5は巨大獣ベミミを鷲掴みにしたラゲンツォ目掛けてマグネティックランサーを投げた。
だが、ランサーはスパイクシールドに弾かれ、どこかに飛んでしまった。
「くそっ!」
「龍也、おれにやらせてくれ!」
「流、わかった! 頼んだぜ」
ガッダイン5は流がメインパイロットになっているようだ。
「あの巨体なら、これで行けるはずだ! 超電磁……スマッシュだ!」
超電磁ウェーブも超電磁ストームも使わず、流は超電磁スマッシュをラゲンツォの左腕目掛けて攻撃を仕掛けた。
「フン、弾き返してくれるわ!」
「フッ、そうはさせねえよっ!」
「な、何じゃと!?」
なんと、流は独楽のような超電磁スマッシュの動きをシールドの上側からなぞるように移動させた。
「ど、どういう事だ!?」
「こういう事だぜ! 喰らいな、バーチカル超電磁スマッシュだ!」
「何だとォオオ!?」
なんと、流はシールドに沿うように回転を縦回転に切りかえ、そのままシールドの裏側の手のある方にガッダイン5を回転させながらラゲンツォの左手を断ち切ってしまったのだ!
「バ、バカな!? こんなやり方があるなんて!」
「フッ、机上の空論で実際に戦って無い奴にはこんな方法思いつきもしないだろうよ。ミザーリンは返してもらうぜ」
「流……ありがとう」
「フッ、アンタはおれの大事な女だ。あんな奴にやらせはしねえよ」
流はミザーリンの事をもう姉代わりではなく、大切な女性と見ているようだ。
「キサマら……絶対に許さん、許さんぞ!! くそっ、これ以上ダメージを受けてはワープすら使えなくなってしまう! こうなったら、一度ダバール星に戻った方が良さそうだな!!」
「待て! ブキミーダ!」
「うるさい、貴様ら、必ず殺してやる! 覚えていろ、ダバール星がキサマらの墓場だ!!」
そう捨て台詞を残すと、三島のブキミーダはラゲンツォを使い単騎ワープでダバール星に向かった。
その場に残されたガッダイン5や半壊した巨大獣ベミミ、エネルギー切れのエルベΩ1、鉄巨人イチナナ、イチハチ等をマグネコンドルに回収し、俺達は一旦無事に残ったデラヤ・ヴァイデスの造船デッキ区画に入港した。
ここでなら簡単な修復やエネルギーの回復も出来るはずだ。
だが、メイン動力炉を失ったデラヤ・ヴァイデスにはそれほど長居は出来ないだろう。
さて、簡単な修理と補給が終わったらいよいよダバール星に出航だ!




