第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 9
ガッダイン5とグレートシャールケンと巨大獣バルバルは一旦撤退し、代わりに今度は鉄巨人イチナナと鉄巨人イチハチが戦場に出てきた。
「お願い、イチナナ。ボクと一緒に戦って!」
「ラージャー。イチナナ、タタカウ!」
「頼む、イチハチ。おれの力になってくれ!」
「了解シタ。サブロウ。一緒ニ戦オウ!」
鉄巨人イチナナとイチハチがラゲンツォの前に移動した。
「フン! ウルフのバカはキサマら相手に何度も煮湯を飲まされたようだが、足を引っ張るあのバカがいなければキサマらなぞすぐにでもスクラップの鉄屑にしてくれるわ!」
三島のブキミーダは鉄巨人イチナナ達を見てそう叫んだ。
「ハハハハハ、身の程知らずとは彼の事を言うのだろうな。アインゼプト、アインアハト、君達に仕込んだデビル回路を発動させてもらうよ……」
「ブレン!?」
「安心したまえ。このデビル回路、確かにわたしの意のままにロボットを操るシステムだが、今はわたしは君達の敵ではなく協力者だ。あのラゲンツォなるモノを倒す為に君達の力を50%上乗せするだけだと思ってくれたまえ」
まあ確かにその通りだが、そうなるとブレンの命令以外で動けなくなるデメリットがある……。
「アインゼプト、アインアハト。君達に命令する。君達は今後、操縦者であるフジ子・ヘミングウェイと三郎少年の命令に従い動くように。わたしの言葉より彼女達の指示を優先するのだ」
「「!!??」」
フジ子とサブロウが驚いている。
まあそれもそうだろう、本来戦っていたはずの敵である巨大頭脳ブレイン総統がいきなり自分達にアレだけ固執してきたはずの主導権をあっさり譲ったのだから。
「どうやら君達は信じられないといった感情なのだろう。だがわたしは冷静だ。むしろ、今この状況で一番確実にあのラゲンツォを倒す方法を計算した結果、デビル回路で能力を上乗せした上でフジ子君達に任せるのが確率的に成功率が高いと判断したのだよ。
「わかったわ。ブレイン。今は地球にいる者同士で争っている時ではないのよね。イチナナ、ミサイル攻撃よ!」
「ラージャー」
鉄巨人イチナナの指先からミサイルがラゲンツォ目掛け発射された。
「ケカカカカカカカッ! そんな豆鉄砲でこのラゲンツォが倒せると思っているのか! 返り討ちにしてやるわ!
ラゲンツォの目が赤く光った! ヒートレーザーが撃たれる!
——だが、ヒートレーザーは撃たれなかった。
「クソッ! オーバーヒートだと!? 仕方ない、別の攻撃だ!
ラゲンツォの胸パーツが開き、中からクリスタル状のパーツと穴が見えた。
「重粒子ブラストだ! 宇宙のチリになってしまえ!」
ラゲンツォの胸に重粒子ブラストのエネルギーが蓄積された。
「イチナナ! グラビトンブラストで相殺出来る!?」
「ラージャー。イチナナ、ソウサイスル」
鉄巨人イチナナの胸パーツが開き、重粒子増幅炉が激しい音を立て始めた。
「兄サン。僕ノ力モ使ッテクレ、重粒子増幅炉、臨界マデ増幅!!」
鉄巨人イチナナとイチハチの重粒子増幅炉に限界までエネルギーが蓄積された!
「食らえ、重粒子ブラスト!」
「「グラービートン・ブラーースト!!」」
重粒子と重粒子が衝突する!!
鉄巨人兄弟のグラビトンブラストは二つの重粒子の塊が一つになり、一種のマイクロブラックホール化した。
「な、何だとォオォォオ!」
重粒子対決を制したのは、鉄巨人兄弟だった。
ラゲンツォはグラビトンブラストの攻撃を食らい、右腕を犠牲にその場から離れた。
重粒子の塊に内部に押し潰されたラゲンツォの右腕は高周波ブレードもろとも宇宙のチリとなり、砕け散った。
「やった! 鉄巨人イチナナ達の勝ちだ!」
「キサマら、絶対に許さん。このワシのラゲンツォを傷つけた代償は死をもって払わせてやる!」
あの……そのラゲンツォ、元々俺のものなんですけど。




