第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 8
ラゲンツォ(仮)の力は絶大すぎて、あの運動神経の無い三島のブキミーダには持て余す力のようだ。
まだ高周波ブレードは振り回すだけの武器だったので少しは振り回せたようだが、ヒートレーザーは反動もあり、また命中率がかなり低いので腕がなければまず当たらない。
「ヒュー! あんな物騒な武器があるなんてよ」
「小惑星群が一瞬で消滅だと!? まさか、アレほどの威力だとは」
ガッダイン5とグレートシャールケンはラゲンツォのヒートレーザーの威力を見て驚いていた。
「フン、少し調整をミスっただけだ、ワシが調整し直せばこんな誤差なんということはない!」
あ、やっぱりコイツはブキミーダだ。
自分のミスを決して認めようとはしない、そして自身を過大評価する。
本編のブキミーダはまさにそんな性格だった。
だが、それだけにコレならどうにか勝ち目があるかも知れない!
本編ではブキミーダのミスはシャールケン、ミザーリン、バルガル、アクラデスの誰かがやりたくも無い尻拭いをしていた。
それをやらなければ作戦が遂行できないからだ。
しかしそれをやってもらったとしても、ブキミーダは尻拭いをしてもらっていたはずの相手を無能扱いで勝手に自己責任で後始末していると見ていた。
だからアイツが自分自身がどれだけの力量があるかなんてたかが知れている。
不幸中の幸いとしては、今のアイツには全く味方がいない事だろう。
デスカンダル皇帝もアイツの味方ではなくあくまでもお互いが利用しようと思っている者同士の利害が一致したドライな関係でしか無い。
だからアイツが成長することもなければそれをサポートする奴もいない。
言うならば【ロボットシミュレーションゲーム】で自身が高レベルだと思い込んでいる低レベルパイロットがラスボス機体に乗っている状態だ。
「今度はこっちが行くぜ! 超電磁プロペラだぁー!」
「フン、こんなモノ痛くも痒くも無いわ!」
まああのラゲンツォの巨体からすれば超電磁プロペラなんてダメージにもなるわけがない。
だがそれで問題はないのだ。
何故なら今はエルベΩ1が無事にデラヤ・ヴァイデスに侵入することの方が重要だからだ。
グレートシャールケンと巨大獣バルバルがヒートレーザーを避けている。
いくらあの機体でも一撃喰らえば致命傷になりかねない破壊力だ。
だがハッキリ言ってノーコンとしか言えないレベルに攻撃が当たらない。
まあそれもそうだろう。
実戦の現場で戦い続けた司令官や将軍に対して、机の前で作戦を立てるかロボを作る側の技術者でしかない者がいくら最高性能の機体を使えても使いこなせるわけがない。
これは俺もバカにできたものではないのでなんとも言えない。
もし俺にあのラゲンツォを与えられても絶対に乗りこなす事なんて不可能だ。
それを俺よりもさらに運動神経や操縦技術の劣るブキミーダが動かしているのだから、本来の性能の一割も出せてないのではないだろうか。
まあそのおかげでアイツは後方のエルベΩ1には全く気がついていないようだ。
エルベΩ1は無事デラヤ・ヴァイデスに潜入したようだ。
「タツヤ、オレ達の目的は達成できた! 一旦退くぞ!」
「わかった! ありがとうよ、シャールケン!」
「フッ…まだ勝ったわけじゃないんだぞ。これからも戦いは続くからな、一旦引き上げるだけだ」
ガッダイン5とグレートシャールケン、そして巨大獣バルバルは一旦撤退する事になった。
時間稼ぎの目的は果たしたからだ。
「ケカカカカカカカッ! 手も足も出ないと見て尻尾を丸めて逃げよったか、武人シャールケン、バルガル将軍が聞いて呆れるわ。無様だな、これは愉快だ!」
俺達の本当の目的を知らない三島のブキミーダは撤退するシャールケンを見て笑っていた。
ガッダインチームが一旦退いたら次は第二陣の出撃だ!
頼むぞ、鉄巨人イチナナ、イチハチ!




