第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 6
ラゲンツォ(仮)を倒す為には、エネルギー供給を断ち切る必要がある。
だが、そのエネルギーは超大型要塞デラヤ・ヴァイデスの動力炉に直接つながっているので、簡単に断ち切る事が出来ない。
また、パイプやケーブルを切ればいいだろうという考えは誰もが思いつくだろうが、あの狡猾な三島のブキミーダがそんな単純なミスを見逃すわけが無い。
そういう事で、アイツに気付かれずにエネルギー供給を断ち切るとするなら、デラヤ・ヴァイデスの動力炉をストップさせるのが一番正解だと言える。
だがそれを出来る人物は限られてくるだろう。
まず、あのデラヤ・ヴァイデスの構造に詳しい、そして内部のセキュリティ等を潜り抜ける事が出来る、さらに、ある程度の破壊工作に長けた人物。
そうなると考えられるのはミザーリンやトニーという事になる。
だが、トニーは先程の人質救出作戦で疲労しているのでこのまま出撃するのは厳しそうだと言える。
そうなると、消去法的にあのデラヤ・ヴァイデスに入って内部工作を出来るのはミザーリンだけという事になるだろう。
「ミザーリン、デラヤ・ヴァイデスに潜入して動力炉をストップする事は出来るか?」
「出来るか、じゃありませんわ。やるしかないのですわ! わたくしにお任せください」
「ミザーリン、この計画、お前の手にかかっている。失敗は許されんぞ」
「承知しておりますわ、シャールケン様」
ミザーリンは単身あのデラヤ・ヴァイデスに向かって内部から動力炉をストップするミッションを成し遂げるつもりだ。
だが、彼女一人だけをあのデラヤ・ヴァイデスに行かせるのは自殺行為としか言えない。
ラゲンツォの攻撃を喰らえば、一瞬で蒸発消滅しかねないからだ。
「危険だ、止めた方がいい!」
「ケンザキ、だが……それ以外の方法があるのか?」
「そう言われると……せめて彼女を安全に要塞に送り届ける事が出来れば……」
「わたしが行きますわ!」
ここで声を上げてくれたのはコーネリアさんだった。
「わたしのエルベΩ1は間違いなくこのロボット達の中で一番最速、このエルベΩ1でミザーリンさんをあの場所まで送り届ければ良いのですね」
「だが、それではコーネリアさん、貴女が危険だッ! そんな事はとてもッ」
「大丈夫ですわ、皆さんが暴れてくれましたら」
なるほど、あのラゲンツォの目線を釘付けにしておいた上でこの中で最速のエルベΩ1でミザーリンをデラヤ・ヴァイデスに送り届ける作戦か。
「うむ、わかった。ミザーリンよ。お前がデラヤ・ヴァイデスに辿り着くまでの時間、このオレが時間稼ぎをしてやる! だから必ず作戦をやり遂げて見せよ!」
「シャールケン様、承知致しました! このミザーリン、命に代えましても作戦を完遂させて見せます」
「いや、それは許さん! 必ず……生きて戻ってこい。その為の切り札があの中にあるのだ!」
シャールケンの言っているのはプレゼントするつもりでそのままになっていた巨大獣ベミミの事だろう。
あの巨大獣が有れば確かに動力炉を止める事は出来るかもしれない。
さて、俺の覚えているガッダイン5大百科の巨大獣図鑑によると……。
――巨大獣ベミミ――
全長54メートル、重量1250トン
女性型の上半身に下半身がカモシカのような獣に近いスタイル。
機動力に優れ、デラヤ・ヴァイデスの動力炉ルームに入り込んだガッダイン5と戦った。
胸からドリルミサイルを発射し、大ジャンプからの4本の足を使った連続キックでガッダイン5に戦いを挑み、苦しめる。
片手に持ったフォールチョンでガッダイン5を切り刻むが決定打に欠け、超電磁プロペラで武器を弾き飛ばされ、マグネティックランサーで袈裟懸けに斬られる。
そして最後には負けを悟ったミザーリンによりデラヤ・ヴァイデスの動力炉に飛び込み要塞ごと大爆発した。
——このデザインのおっぱいドリルミサイルは子供ながらにインパクトあったな。——




