第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 3
恐るべき力だ!
ラゲンツォ(仮)は、高周波ブレードの一閃でデラヤ・ヴァイデスの外環の食料プラントを切り裂いてしまった!
「おっと、まだ調整が完全ではないようだな。なかなか思った所を斬れん」
冗談じゃない! あんな攻撃を喰らったらマグネコンドルも機動要塞ドグローンも一撃で真っ二つだ。
俺はあのラゲンツォの高周波ブレードを、分子から断ち切るエネルギーの刃と設定したが、アイツ……マジでその設定を実現しやがったみたいだ!
しかも何がタチ悪いって、このラゲンツォ、この高周波ブレードが一番弱い武器なんだよな。
近距離だけでなく射程3くらいまでを攻撃できるって設定にしてしまったもんだから、それを実現されたらマジで近寄っただけでズッパリだ。
だが俺の設定ではあの高周波ブレード、剣なのに一度使うごとに少しずつエネルギーを消費する設定だ。
つまり調子に乗って反撃をしまくるとエース級パイロットに攻撃を避けられまくった挙句にエネルギー切れになるという設定を考えたわけだ。
まあ流石にゲームに出すこと考えて弱点が無いってのはチートなのでコイツはとんでもないエネルギーを食いまくるって設定にしたんだよなー。
つまり、エネルギーさえ枯渇すればコイツはただのカカシかHPの高いだけのデクノボーになるって設定だ。
まあ、カッコいいやられメカってのを作りたくなる厨二病の産物というべきか。
つまり、コイツはエネルギーを枯渇させればただのデクノボーになるはずだった……。
「ケカカカカカカカッ! お前が何を考えているか当ててやろうか? この機体のエネルギー枯渇狙いだろう? だがそんな問題は解決済みだ、見るがよいわ!」
な、何だと!? 三島のブキミーダはデラヤ・ヴァイデスから何かのコードやパイプを伸ばし、ラゲンツォの背部に取り付けた。
「さて、地獄を見せてやろう!」
ラゲンツォの目が光った!
俺の考えたラゲンツォの裏設定。
精神コマンドを使って挑発をしない限りは基地のエネルギー補給可能な場所からは動かない。
つまり、挑発を持っているサブパイロットや二軍モブキャラを育てていないと正攻法では詰む強さで考えていたわけだ。
あの三島のブキミーダ、その設定まで書いていなかったのに自力でエネルギー莫大消費の解決策を見つけやがった!
さすがは腐っても悪の天才エンジニアというべきか。
ラゲンツォの唯一の弱点とも言えるエネルギー消費を自力で解決したのは敵ながらあっぱれと言うしかない。
だが! あんな奴を野放しにすれば本当に地球もダバール星もアイツにメチャクチャにされてしまう!
どうにかアイツを倒さないと!
「おや、どこから通信だ? このチャンネルを知っているのはデスカンダル皇帝だけのはずだが」
「ブキミーダ、返事をせぬかッ! キサマ、我の通信を無視するとは何様のつもりなのだッ!?」
「おお、コレは皇帝陛下、どうなされましたか?」
「キサマは誰だ!? ブキミーダでは無いのかッ!」
まあデスカンダル皇帝でも知っている通信チャンネルに見知らぬ他人が写っていたらそりゃあ警戒するわな。
「お待ちください陛下、ワシはブキミーダです。ワケあって今は地球人の姿をしておりますが間違いなく陛下の忠実な部下のブキミーダでございます」
「うむ、その話し方、確かにブキミーダのようだなッ。だが今はそれどころでは無い! 早くダバール星に帰還せよッ、一大事なのだッ!!」
どうやら本編と同じようにダバール星では公爵令嬢であるウルワシアによる革命が起こったようだ。
デスカンダル皇帝の慌てぶりは間違いなく本編の四十話そのものだと言えるだろう。
まあ本編と違うのは、本編でデスカンダル皇帝に呼ばれたのがブキミーダではなくダンダルとアクラデスだったくらいか。




