第四十一話 巨大獣ベミミ ミザーリン愛に死す 2
そこに存在するはずの敵がいない。
これから想定されるのは、作っていないか、別の何かがある可能性だ。
このデラヤ・ヴァイデス、ハッキリ言えばダバール星人の地球侵略拠点そのものだ。
奇岩島基地が地球上での侵略拠点とするならば、このデラヤ・ヴァイデスは宇宙からの地球圏への侵略拠点と言うべきだろう。
そんな重要な場所を手薄にする理由、それは……よほど戦力に余裕がなくなったか、あるいは、それらに頼らなくても良いだけの最強の戦力が手に入ったかのどちらかだろう。
――最強の戦力!?――
俺は今一番考えたくない可能性について考えてみた。
アイツが巨大獣数体を犠牲にしてまで作ろうとしている最強の戦力……まさか!
――ラゲンツォ(仮)――
ラゲンツォは俺の黒歴史ロボだ。
とんでもない設定を数々盛り込み、更には単騎で恒星間ワープまで可能な機体。
まさかアイツ、本気であんなモノを作ったというのか?
単騎恒星間ワープなんてどれだけエネルギー使うやら、普通の巨大獣のサイズでは搭載不可能なシステムだ。
確かにマグネコンドルや機動要塞ドグローンには恒星間ワープ機能があるが、それはあくまでもこの大きさなので搭載可能だと言えるだろう。
もし……巨大獣のようなロボットに恒星間ワープ機能なんて付けた日には……信じられない程の巨大サイズになるだろう。
そうなるとそれだけのサイズの巨大獣を作るには、まあ四体五体は間違いなく素材が必要になる。
それだと確かにここに巨大獣が一体も存在しないのもあり得る話だ。
だが、流石にそれは無いだろうと思いたい、何故ならあのラゲンツォには致命的な欠陥があるからだ。
それは、稼働時間が短い事。
あの怪物ロボット・ラゲンツォはとんでもない攻撃力がある代わりにエネルギーの消費が信じられない程の量になってしまうという欠点がある。
その欠点がある限り、あのラゲンツォは作っても何の役にも立たない超巨大カカシになるだけだ。
――だが、アイツは腐っても天才だった!――
「ケカカカカカカカッ、まあアクラデス程度の作ったガラクタでは時間稼ぎにもならなかったようだな!」
「その声、キサマ三島のブキミーダだな! ガラクタとはどういう事なのだ!」
「ケカカカカカカッ、良いだろう、キサマらに本当の恐怖を見せてやろう、コレが……ワシの最強のロボット、ラゲンツォじゃ!」
――やめてくれー! 俺の黒歴史が実体を持って現れたー!!――
間違いない、あのデザイン……70年代風の巨大獣に近いデザインになっているが、間違いなく俺の作った黒歴史ロボ・ラゲンツォだ! というか、その名前連呼しないでくれーっ!
「で、でけぇ、何だよあのサイズ……」
「龍也さん、アレはとてもガッダイン5だけで相手に出来る敵ではありません!」
「な、何じゃぞい!? あの超巨大なバケモノは??」
ガッダインチームが当然ながら驚いている。
だが驚いているのはガッダインチームだけでは無かった。
「ブキミーダのヤツ……まさか、あんなモノを隠し持っていたとは!」
「ほう、あの設計図からああいった形に作ったのか、コレは興味深いものだな」
「アイツ……ツヨイ、イチナナ……カテルノダロウカ……」
ダバール星人もブレインも鉄巨人イチナナも、あのラゲンツォを見て驚愕している。
「ケカカカカカカカッ、キサマが何者かは知らんが、ワシの為にこんなロボットを用意してもらった事は感謝してやろう。そうだな、褒美にキサマらには全員死をくれてやるわ!」
ラゲンツォの高周波ブレードにエネルギーが迸った!
そして三島のブキミーダがそれを縦に振り下ろした!
すると、その攻撃はデラヤ・ヴァイデスの外環を一刀で切り裂いてしまった!
「ほう、力の制御が出来ていないようだ、思った方向に斬れなかったみたいだな。まあいい、少し死ぬのが遅くなっただけだ」
マジかよ……俺の考えたラゲンツォがあそこまで強かったなんて!




