第四十話 巨大獣ベルゴン 戦いの末に 10
アクラデスと竹千代の言っている——バカになれ——はつまり、綺麗な思考ルーチンで動いている巨大獣ベルゴンの裏をかけという意味だ。
巨大獣ベルゴンは戦闘に特化した人工知能が搭載されていて、どのような攻撃にも対応している
だがそれらのどれにも当てはまらない過去にない攻撃をすれば計算できないというわけだ。
だが一体どうやって、でたらめに戦えるというのだろうか?
まさか踊りながら殴るわけにもいかないし……。
「へっ、とにかく今までになかった戦い方ならアイツには予測できないって事だろ、だったら話は簡単だぜ。流、分離しても手は使えるよな?」
「フッ、そういう事か、問題は無いぜ、一度武器だけ持った状態ならな!」
「よし、それじゃあ今ならマグネティックランサーを両手持ちにしたまま分離できるってわけだよな! 行くぜっ!」
なるほど、分離した状態のパーツで腕だけで武器を使った戦い方なんて通常の思考ルーチンにはまずあり得ないな。
こんな戦法普通の頭では思いつかないだろう。
分離したダインボンバーは腕にマグネティックランサーを持ったまま巨大獣ベルゴンに斬りかかった。
流石にこの行動は想定外だったらしく、巨大獣ベルゴンはシールドソードを持った腕をダインボンバーに切り飛ばされてしまった。
「次は僕です! 行きますよっ!」
今度は竹千代の乗ったダインビークルが分離してドリル戦車状態のまま巨大獣ベルゴンに体当たりをした。
これも想定外だったらしく、ダインビークルのドリル攻撃は胸部パーツを吹き飛ばした。
「これも食らいんしゃい! ビッグミサイルですたい!」
玄太郎の乗ったダインパンツァーのガッダイン5の背中部分からビッグミサイルが発射された。
これも棒立ちのままの巨大獣ベルゴンに直撃だ。
普通ならこんなミサイル少し腕のあるパイロットなら確実に避けられる。
だが戦闘特化の人工知能に制御された巨大獣ベルゴンはなされるがまま棒立ちでどんどんダメージが蓄積している。
「な、ど……どういう事じゃ! 巨大獣ベルゴンに搭載してあるのは最強の人工知能のはずなのに、なぜあんなくだらない攻撃を避けられんのじゃ!?」
三島のブキミーダが狼狽している。
まあこんな変な戦法取られたらそりゃあお利口さんな人工知能なら混乱して動けなくなるだろう。
ある程度に巨大獣ベルゴンをボコボコにしたガッダイン5は再び合体し、普通の戦闘スタイルに戻した。
だがシールドソードも失い、遠距離の弓しか武器の無くなった巨大獣ベルゴンはいくら戦闘特化の人工知能が計算しても防戦すら出来なくなっていた。
「よし、とどめだ!」
「待ってくれ、龍也君」
「なんだよ、ブキミーダのオッサン。何かあるのかよ?」
ここで巨大獣ベルゴンを倒すのに全力を使うと何か良くない事が起こりそうな予感が俺にはした。
「いや、単に大技でなくエネルギーを使わない技で倒した方が良いと思ったのだが。このあと下手すれば別の敵が増援で出てくる可能性があるからな」
「なるほどな。分かったぜ! それならこのマグネティックランサーでトドメを刺してやる!」
「タツヤ、ベルゴンの弱点は………肩の後ろの2本のツノの真ん中のトサカの下のウロコの右なのだ!」
「は!? そんなのいきなり言われて覚えられるかよっ!」
「わかりました! 肩の後ろの2本のツノの真ん中のトサカの下のウロコの右ですね!」
流石は天才少年竹千代だ。
あの一瞬の長い台詞を間違えずに覚えたようだ。
「龍也さん、僕が弱点にドリルで印をつけます、そこを狙って攻撃してください!」
「分かったぜ! 竹千代!」
竹千代がドリルキックを決めた事で目で見て弱点のわかった龍也がマグネティックランサーを突き刺して貫いた!
「ベェルルゴオオォンッ!」
そして、巨大獣ベルゴンは宇宙空間で大爆発した。




