第四十話 巨大獣ベルゴン 戦いの末に 6
デラヤ・ヴァイデスは完全に三島長官の姿のブキミーダの手に落ちていると考えていいだろう。
そうなるとあの中には間違いなく洗脳電波発生装置が仕掛けられている。
アイツがそれ無しにあの要塞を掌握出来るはずが無いからだ。
バルガル将軍達は輸送隊を使い、デラヤ・ヴァイデスに向かった。
だが何か様子がおかしい……。
本編ではデラヤ・ヴァイデスから監視の再生巨大獣ドドンガーやガガビビ、バビゴン、ミラミガといった奴らが監視していた。
しかし今はそれらの監視が無い。
デラヤ・ヴァイデスの資源から考えると資源枯渇で巨大獣が作れないという事はまずあり得ないはず。
しかし今のデラヤ・ヴァイデスはザルと言っていいくらいに無防備だ。
これは特に敵に気を付ける必要なんて無いとアイツがたかをくくっているか、それとも……何か絶対的な自信があるかのどちらかだ。
絶対的な自信、それが洗脳電波発生装置によるものなら、俺達にも十分勝ち目はある。
何故なら戦士ボボンガの首飾りをブレンが複製コピーしてくれたものがあるので全員洗脳を受けずに済むからだ。
――だが、もしそれ以外の可能性があるとすれば……再生巨大獣以上の力をアイツが手に入れた可能性か。――
あまり最悪のパターンは想定したくないが、可能性は十分にあり得る。
まあ今は最悪のパターンよりも洗脳電波発生装置で油断している方を想定しておこう。
念の為、俺は輸送艇の中に昆虫型スパイドローンを搭載しておいた。
下手すればデラヤ・ヴァイデスに残した俺の部屋を使えば、アイツからもドグローンやマグネコンドルの様子が見られるのかもしれないが、それは仕方ない。
どこまで筒抜けになっているかは分からないが、スパイドローンのチャンネルはドグローン限定のローカルになっているはず。
まあ元々デラヤ・ヴァイデスに有ったコンピューターシステムはそっくりそのまま奇岩島基地に持って行ったので、残っているとすれば元々ブキミーダの使っていた監視カメラだけだろう。
スパイドローンは奇岩島基地のコンピューターが壊滅した時点で、一度リセットした上でドグローンからのローカル限定にしている。
俺は一度マグネコンドルからドグローンに戻り、様子を確認する事にした。
マグネコンドルの面々にはこのスパイドローンの事は伏せておいた方が良いだろうからな。
最悪見つかったら三島長官のブキミーダのせいにしておこう、俺はあくまでもそれを見つけて逆利用したという話にしておけば問題はあるまい。
輸送艇は無事、デラヤ・ヴァイデスに到着した。
そこには三島長官の姿をしたブキミーダが居たが、用心深いアイツは防弾フィールドの内側からバルガル将軍達に話しかけた。
「御機嫌よう、デスカンダル皇帝に逆らう裏切者諸君」
「黙れブキミーダ! どうやってその身体を手に入れたかは知らんが、やはり本物のキサマは吾輩がこの宇宙で唯一信用ならない奴だったようだな!」
「ケカカカカカカッ、そんな事を言って良いのかな? 地球人の人質を返すも返さないもこのワシの胸先三寸なんだがな」
三島長官の姿をしていてもやはりブキミーダは狡猾で陰険そのものが表情に出ている。
人格は顔に出るというのはやはり本当なんだな。
「まあいい、目障りな地球人共を連れてさっさと尻尾を巻いて消えろ。バルガル、お前とは二度と会う事も無いだろうがな!」
ここですでに自白している様なものだな、アイツがいってるのは輸送艇に人質を乗せて爆死させてやると宣言している様なものだ。
ここでバルガル将軍には時間稼ぎをしてもらう手筈になっている。
その間に剣崎隊長やトニーが輸送艇に仕掛けられる予定だった爆弾を取りつけさせずに兵士をなぎ倒している事だろう。
そうそう、本編で無駄にブキミーダがバルガル将軍と意味も無く昔の話をしていたのが、爆弾を設置させる為だったとすれば全部の話がつながってくる。




