第四十話 巨大獣ベルゴン 戦いの末に 5
十中八九罠の三島長官の姿のブキミーダとの人質の受け渡し、これは本編三十九話のラストシーンそのものだ。
本編三十九話では和平交渉の使者になってくれたバルガル将軍に、ブキミーダが地球人の人質を返した後、悲劇は起きた。
バルガル将軍が責任を持って人質をマグネコンドルまで戻そうとした時、彼は時限爆弾の存在に気が付いてしまったのだ。
もしこのままマグネコンドルに戻ってはこの輸送機そのものが爆弾となり、マグネコンドルを大破させることになってしまう。
だからとデラヤ・ヴァイデスに戻ろうとしても、再生巨大獣に撃沈されてしまうのがオチだ。
死期を悟ったバルガル将軍は涙を流しながら地球人の人質達に頭を下げて詫びた。
――吾輩が不甲斐無いせいで、お前達全員を助ける事が出来なかった。許してくれとは言わない、地獄への旅、せめてこの吾輩が先導しよう!――
そう言って彼はマグネコンドルへの帰路を進路変更し、宇宙空間で輸送機を爆発させてその生涯を終えた。
なんともやるせない本編の三十九話のラストだったが、それ以外の方法が無かったのだから仕方無い。
だが、今の時間軸、剣崎隊長にタイタン部隊の隊長トニー、他にも戦闘のスペシャリストが大勢いるのだ。
彼等はあえて箱の中に隠れ、荷物のフリをする事になった、三島長官の姿のブキミーダを油断させる為だ。
他にも人質を取り返す為に手を挙げてくれたのは、戦士ボボンガ、ケン坊の姿の三島長官、それに巨大頭脳ブレイン総統のアバターロボットのブレンだ。
ボボンガが何かを取り出した。
「コレ、オレガモッテイタオマモリ、オレ、コレデ、シマデモ、オカシクナラナカッタ」
「ふむ、面白そうだな、一度分析させてはくれないかね?」
「オマエ、ダレダ?」
「わたしは……そうだな、ブレンと呼んでくれたまえ」
戦士ボボンガが持っていた首飾りをブレンの目の下の空洞の中に入れると、彼はそれを一旦自分の基地にテレポートさせた。
「オレノ、オマモリ……キエタ!?」
「すまない、少し分析の為に借りただけだ。分析が完了次第すぐに返させてもらうよ」
ブレンが目を閉じ、何かを計算しだした。
「計算する、計算計算計算計算……、計算する、計算計算計算計算……」
そして、分析の終わったお守りをブレンは再びブレイン基地から転送してきたようだ。
「面白い事が分かったよ。どうやらこのお守りは、小型磁場フィールドを持ち主の周りに形成する事で、洗脳電波や放射能等から身を護る事が出来るようだ」
なんと! それのおかげで戦士ボボンガは奇岩島基地であの洗脳電波発生装置の中でもおかしくならなかったわけか!
「コレは少し複雑な形状だが、類似品を作るのは可能だ、そうだな……この作戦の参加者の人数分あれば足りるだろうか?」
そう言うとブレンは目の下の空洞部分から次々とボボンガのお守りとほぼ同じ物を量産し、ポロポロと吐き出していった。
――恐るべき生産再生能力だ。マジでこのブレイン総統が俺達の敵にならなくて本当に良かったと言える……。――
「シンジラレナイ、コノオマモリ、オレノイチゾクニ、ヒトツダケ、ノコッテイタ」
どうやらこのボボンガのお守りのコピーがあれば、もし万が一あのデラヤ・ヴァイデスの中が洗脳電波発生装置を設置されていても誰も操られずに人質を取り返す事が出来る!
よし、これで人質救出作戦は確実に実行可能だ!
輸送艇の中に乗り込んだのはバルガル将軍と、ケン坊の姿の三島長官、トニー以外の元タイタン部隊にそれに本職の軍人のハリー・キタムラとブルーマフラー隊だった。
荷物に偽装して乗り込んだのは剣崎隊長とトニーだ。
これで人質救出作戦は確実に実行可能だ。
輸送艇はデラヤ・ヴァイデス目指してマグネコンドルを出発した。




