第三十九話 巨大獣バルバル バルガル将軍、散る 10
シャールケンとティティナはお互い微笑みながら見つめている。
どうやら彼にも妹以外に大切なものが見つかったようだな。
本編ではどちらも心を通わせながら最後には結ばれる事なく戦火に消えた命だ、だからこそ救われてほしい。
おや、夕暮れの海岸にいるのはバルガル将軍と北原みどり博士のようだ。
そういえば三十九話はバルガル将軍の話だったな……。
ガッダイン5大百科によると、本編の三十九話はこんな話だった。
——奇岩島で巨大獣バルバルと戦ったガッダイン5は激戦の末バルガル将軍を倒す。
その後、自害しようとする彼をコクピットに手を突っ込んで助け出したガッダインチームは彼をマグネコンドルに乗せたまま、ダバール星を目指して地球を離れ、宇宙に向かった。
バルガル将軍はベッドに寝かされてその看病をしていたのは千草だった。
眠りから覚めたバルガル将軍は、自らが包帯まみれで敵であるはずの地球人に看病されていた事に気がつく。
そして、彼は献身的に看病してくれる千草に対して敵対心ではなく、少しずつ心を開き好意を持つようになっていった。
地球人を下等な種族だと馬鹿にしていたバルガル将軍だったが、千草やガッダインチームと触れる事により、相手も尊敬に値する戦士であり、人物だと認めるようになっていった。
傷の癒えたバルガル将軍はデラヤ・ヴァイデスの地球人の捕虜との身柄の交換をブキミーダに提案され、あえて和平の使者としてデラヤ・ヴァイデスに向かう事になる。
そして捕虜をブキミーダから受け取ったバルガル将軍は輸送機で一旦捕虜をマグネコンドルに引き渡す為に戻ってくる。
だが、その輸送機には爆弾が仕掛けられていて、バルガル将軍は地球人の捕虜諸共爆殺されてしまった……。
と、このようにバルガル将軍が爆死してしまうのが三十九話だったのだ。
流石にやりすぎといわれたのか、浜野監督の初期案では捕虜を人間爆弾にして爆殺する予定だったが、普通に機体に仕掛けられた時限爆弾の爆発で話は進められた。
どちらにせよバルガル将軍の爆死は作中の予定通りだったので話自体には大きな変化は出なかったようだ。
だがこの時間軸ではダバール星人にも地球人の捕虜にも今のところ誰も犠牲者は出ていない。
もし、三島長官の姿のブキミーダが捕虜交換を提案してきたら、その隙に乗じて一気にデラヤ・ヴァイデスを制圧してしまえばいい。
幸い向こう側にバルガル将軍やダンダル軍務卿ほどの軍人は残っていない。
仮にブキミーダが三島長官の姿で戦ったとしても元の体の格闘センスの無さであの超人的な肉体を使いこなせるわけもない。
まあある意味余裕で戦えるだろう。
それよりもバルガル将軍と、みどりさんの恋の行末の方が気になるくらいだ。何気に俺以外にもちょこちょこと野次馬がいるようだ。
二人の声を拾う為に俺は昆虫型スパイドローンを飛ばして音を拾った。
「み、みどりっ……さん」
「はい、どうしましたか? バルガルさん」
「ゆ、夕日っが、綺麗ですね」
「そうですわね」
バルガル将軍がしどろもどろだ。
オイオイ、緊張しすぎだろう。
「実は、吾輩……どうしても貴女にお伝えしたいっ……ことがありまして」
「はい、どういたしましたか?」
「このっ……戦いが、終わったら……吾輩……と、いっ、いっ……一緒に暮らして、くれませんか!? 必ず、幸せに……しますっ!」
——ついに告白したー!——
さて、みどりさんの反応は? どうなんだ!?
「ごめんなさい、今はまだ、あの人の事が忘れられなくて。もう少し、時間をいただけますか………」
あーっと! バルガル将軍壮絶に玉砕したー!
「そ、そうでしたか。申し訳っありっません。いきなりこんな事を言って」
「ごめんなさい、私、どうしてもあの人の夢を実現してあげたくて………ダバール星に行かなくてはいけないんです」
この展開にバルガル将軍が何か疑問を感じたようだ。
「何故ですか!? 何故、地球人のみどりさんがダバール星へ?」
その後みどりさんは今まで黙っていた事をバルガル将軍に伝えた。
しかし、バルガル将軍………この時間軸では実際の爆死はしなかったが、別の意味で壮絶な爆死をしたもんだな。




