第三十九話 巨大獣バルバル バルガル将軍、散る 5
俺の部屋にあったコンピューターの残骸を使い、コードを器用に使って巨大頭脳ブレイン総統が作り上げた物は、目玉の有る30センチ前後の丸い機械だった。
――やあ、これで外の様子が分かりやすくなったよ。これはわたしの分身、アバターといったものだ。君にはアバターと言っても理解できないかもしれないがね。それとも漫画やアニメのように見た目から可愛らしい女の子の姿が良かったかな?――
いや、俺普通にアバターとか分身ロボットのある未来から来てるので、そういう意味はきちんと理解出来ているんですけど……。
まあでも今は知らないフリをしておいた方が話は円滑に進みそうだ。
「凄いですね! マスター・ブレインは遠い場所にいてもコレで遠くの様子が分かるのですね」
――その通りだよ、ブキミーダ君。これでわたしも君達の戦いに参加しようと思ってね、地球の環境を守る為にはあのミシマを野放しにしてはいけないのだよ。彼は……自身の利用していた海底基地を証拠隠滅の為に核兵器を使うような愚か者だ。彼を野放しにしては、地球がいつか取り返しのつかない事になってしまう。―――
いや、その核というか……破滅ミサイル水爆砲をリヒテンシュタインの海底基地にぶっ放したの俺なんだけど、まあここは黙っておいた方が良いだろうな。
――そこで、わたしはミシマを止める為、彼の敵である君達と協力しようというのだよ。まあ、敵の敵は味方と考えてくれていいだろう。――
まあとりあえず、後方から第三勢力に狙い撃ちされる状況よりは、一つでも敵勢力が少ない方が戦いやすくはある。
――そうそう、そういえば君から預かっていたものをお返ししよう、さあ、その私の分身の中を見てみると良い。――
そう言うと目玉付きの丸い小型ロボットは口を開くように上の部分がスライドして、その中は空洞になっていた。
そこの空洞からいきなり眩しい光が放たれ、光が収まった時、そこには何かのディスクらしい物が載っていた。
――その私の分身には小型の物体を転送する装置が搭載されている。さあ、受け取りたまえ。それは君のコンピューターデータの全てのバックアップを取ったディスクだ。君くらいのエンジニアならば、このディスクを見る方法くらいすぐに分かるだろう。――
これは! 間違いない、未来で使われるのとほぼ同じ形のDVDやブルーレイと同じタイプの光学式読み込みディスクだ!
しかしなぜこれをブレイン総統が作れたのか……。
――面白いデータだったよ、これはまさに未来の技術と言えるだろう。わたしの演算でたどり着くより先の未来はまさかこのようなディスクが主流になっているとは。――
そうか! 俺が趣味で書いていた誰に見せるわけでもないSFアニメを作る為の小説ネタでついつい書いていた21世紀の現在とも言える未来設定を彼はそのまま読み込んで演算したというわけかっ!!
――まあわたしもデジタルな存在とはいえ、物質的にはアナログだ、無線だけでコンピューターを繋げればよかったのだが、流石にそれは出来なかったので君のコンピューターには有線ワイヤーを伸ばした上でデータを見させてもらったよ。失礼。――
なるほど、巨大頭脳ブレイン総統は伸ばしたケーブルを延長させる事で世界中のネットワークにアクセスしていたわけか。
そうなるとこのアバターロボットは有線式では無い無線型ロボットだと言える。
――まあ小型の破壊ロボットのシステムだと思ってもらえばいいだろう。まあ、わたしの分身なので、名前は……そうだな、ブレンとでも呼んでくれたまえ。――
巨大頭脳ブレイン総統はこの小型アバターロボットのブレンで俺達に協力しようと言ってくれている。
ここは下手に断るとこじれそうなので、素直に受け入れた方が良いだろう。
「わかりました、マスター・ブレイン。ご協力、感謝致します」
――わたし達の敵はミシマ、アイツは地球の癌細胞だ。今のうちに排除しなくてはどんどん転移して地球を蝕んでしまうだろう。――
こうして俺達にブレイン軍団の巨大頭脳ブレイン総統が協力してくれる事になった。




