第三十九話 巨大獣バルバル バルガル将軍、散る 4
――どうやら巨大頭脳ブレイン総統は俺がダバール星人のブキミーダでは無い事に気が付いてるようだ。
幸いマーヤちゃんはアニメの撮り貯めを見せてもらう為にエリザとスタンリーの部屋に行っているので、この部屋にいるのは俺一人で、会話相手の巨大頭脳ブレイン総統に気が付いているのはこの基地には誰もいないようだ。
――わたしは以前から疑問に思っていた。何故ダバール星人のはずの君がそこまで地球人に加担するのか。本来なら侵略先の対象にそこまで神経をやる必要は無いはずだ。……ある仮定を除けば、ね。――
「ある仮定とは?」
――そうだな、君が本当は地球人で、その姿は何らかの事故で入れ替わってしまったという可能性だ。君の態度はあまりにも異星人としては地球人に加担しすぎているようだった。それは本来の君が地球人で、何らかの事故でその身体に入れ替わってしまったというある意味荒唐無稽な話だ。――
巨大頭脳ブレイン総統、コイツは相当恐ろしい相手なのかもしれない。
俺の事をほぼ正解な感じで正体を当ててきているのだ。
――ブキミーダ君、返事をしたまえ。まあもし返答しなかったとしても、コンピューターのデータはそっくり君にお返しはするがね……。――
「マスター・ブレイン。これからいう事を決して誰にも言わないなら本当の話をしましょう。それで……良いですか?」
――そうだな、君が本当の事を言ってくれるなら、わたしは他言しないと約束しよう。――
どうやらブレイン総統とはこれ以上駆け引きをする必要は無さそうだ。
俺は本当の事をブレイン総統に伝えた。
「まず、俺の本当の名前は大河内邦裕。これよりずっと先の未来からやって来たロボットエンジニアだ」
――ほう、ずっと未来から来たエンジニアだというのだな。クニヒロ……君と呼べばいいかな?――
「いいえ、他の人の手前、今まで通りブキミーダでお願いします」
――そうか、了解した。――
俺は巨大頭脳ブレイン総統に俺が未来から来た事、この世界が本来虚構のはずのフィクションの世界である事、あの三島長官が本物の処刑された未来から転生してきたブキミーダだという事までを伝えた……。
――そうか、それであのミシマという人物の中には君の言う本物のブキミーダが入っていると言うのかね?――
「はい、あの中に入っているのが本物の処刑されたはずのブキミーダの魂という事になります」
巨大頭脳ブレイン総統は何かを計算していた。
――成程、21グラムの生体バックアップデータシステム、通称……タマシイが本来の肉体ではなく別の肉体に入っているという現象なのか……。――
「はい、その理解で間違いないかと思われます」
――よくわかった。ブキミーダ、君が未来からやって来た地球人のエンジニアであり、本来のブキミーダの体にバックアップシステムの異常で入ってしまっているという事なのだな。――
巨大頭脳ブレイン総統の認識はほぼ当たっていると言えるだろう。
「はい、そうなります。それで三島長官の体を手に入れたブキミーダは、ウルフ博士と組んで世界を支配しようとしていたのです」
――そうか、あの愚か者……そんな事を企てていたのか。――
ブレイン総統が怒っているようだ。
――よかろう、わたしも君達に協力する事にさせてもらう。この戦いは既に地球を守るだけの戦いではなくなっている、宇宙を守らないと地球の未来も危ないというわけだ。――
よし! これで巨大頭脳ブレイン総統とブレイン軍団が敵になる事は無さそうだ!
――そうそう、わたしも君達の戦いに参加させてもらう事にしよう。少しその辺りの壊れたパーツを借りるよ。――
そう言うと、ブレイン総統は俺の部屋の壊れたコンピューターの部品を使い、何か一つ目のフロートタイプの機械を作り上げた。




