第三十八話 巨大獣ギョガゴゴ 崩れ行く奇岩島 12
俺は鉄巨人イチナナの中にいるフジ子・ヘミングウェイに通信を試みた。
「フジ子さん? 今はイチナナの中にいるんですか?」
「はい、そうです。貴方は誰ですか?」
「今は詳しく話している時間がありません、ですが貴女の敵ではありません」
するとフジ子が答えてくれた。
「わかりました。どうやらその大型飛行機、以前訪れた基地と同じ形のようですね。着艦許可を頂けますか?」
「わかりました、どうぞ着艦してください」
俺は鉄巨人イチナナとイチハチにマグネコンドルへの着艦許可を出した。
鉄巨人イチナナ達が着艦したのとほぼ同じくらいのタイミングで、マーヤちゃん達が代々木博士を指令室に連れて来てくれた。
「ふー、酷い目に遭ったぞい。これは当分酒は控えた方が良さそうじゃな……」
――代々木博士、今はそんなに呑気な事を言っている場合じゃないんですが……。
鉄巨人イチナナとイチハチがマグネコンドルの甲板に着艦した。
そしてその中からフジ子とサブロウが姿を見せた。
「どうぞ中にお入りください」
俺がそう伝えると、フジ子とサブロウの二人はマグネコンドル内部に入り、艦橋に昇ってきた。
「代々木博士、お久しぶりです。着艦許可を頂きありがとうございます」
「う、うむ。久しぶりじゃぞい。フジ子さん、貴女はお元気でしたか?」
「はい、私は皆さんと離れた後、イチナナの弟であるアインアハトと戦っていました。幸い他のブレイン軍団のロボ達が出てこなかったので戦いの中で何度か彼と話し合いをする機会があり……そこでアインアハトと心を通じ合わせた三郎さんがいた事に気が付いたのです」
まあそりゃあそうだろう、本来鉄巨人イチナナと戦うはずのブレイン軍団は三島長官の姿のブキミーダとウルフ博士によって集中的に俺達の方に攻撃をしてきていたのだから……。
「そしてアインアハトは三郎さんと友達になっていたので、私は三郎さんに語りかけてみました。そして、彼等は少しずつ私と鉄巨人イチナナに心を開いてくれたのです」
「ソウダ。ソシテ、アニノイウコトガマチガッテイナイト、イチハチモキガツイテクレタノダ……」
鉄巨人イチナナは本編でも後半の方になると片言だが自身から会話をしてきた。
だからこのイチナナのいう事は本当だと言える。
「ソシテ、ボクハ……地球ノ敵ハ、ブレイン軍団デモ、人間デモナイコトニ気ガ付イタ。共通ノ敵ヲ倒ス為、ボクハ、兄サント、共ニ戦ウ事ヲ選ンダノダ」
まあ鉄巨人イチハチことアインアハトは巨大頭脳ブレイン総統とウルフ博士に作られたはず、だがその鉄巨人イチハチがこの判断をしても巨大頭脳ブレイン総統が怒ったり粛清しようとしていないという事は、彼もこの一件を見逃しているという事なのだろう。
「うむ、話はわかったぞい。儂らに協力してもらえるならとてもありがたい。じゃが、今はなかなか一筋縄では行かん状況みたいじゃぞい。ブキミーダさん、詳しく話してくれるか?」
「わかりました。取り合えず今の状況を説明すると、我々は今からあの奇岩島に上陸を考えています。だが、今はあの島は裏切者の三島長官を乗っ取った何者かに奪われ、人間が入ると……洗脳電波によって間違いなくアイツの手下にされてしまうのです」
この事を聞いたフジ子が状況を理解したようだ。
「なるほど、そういう事なんですね、つまり、私や三郎さんがイチナナやイチハチの中にいてあの島に行くと、洗脳されてしまい変な命令を出しかねないので彼らだけに行ってもらいたいのですね!」
「はい、そうですがそれは可能ですか?」
鉄巨人イチナナの目が青く光った。
どうやら彼も肯定しているようだ。
よし、これでどうにか奇岩島奪還作戦開始だ!
後はこの事を鉄巨人イチハチにも伝えなくては。




