第三十八話 巨大獣ギョガゴゴ 崩れ行く奇岩島 9
酒を呑んだ次の日の代々木博士はまるで頼りにならない。
これは本編でも初期の頃にあったネタだ。
本編では第一話の冒頭で出てきた代々木博士は、北原みどり博士が死んだ事を知る前……つまり北原未来要塞ベースの責任者を引き受ける前はトラ箱に放り込まれていた。
どうやら酔っぱらって周りの漁師達とケンカをしたらしい。
ちなみにその時の漁師達のリーダーだったのが後のケン坊の父親だったんだけどな。
その後も酒を呑んでいた彼はガッダイン5の事を半分諦めていた。
――つまり、五人目の適正パイロットが居なければ動かない、それではせっかくの親友の光一郎(ハリール王子)が作ったガッダイン5もマグネコンドルも張り子の虎だという事だ、それで計画に嫌気の刺した代々木博士は酒浸りの日々を送っていたというのが、ガッダイン5大百科の初期設定に載っていた。
代々木博士が断酒をするのは北原みどり博士が本編一話で特攻をした後だ。
彼はみどりさんが特攻をしたのは自分が不甲斐ないからだと自覚し、一升瓶を叩き割って断酒を決行した。
本編で彼が再び酒を呑むのは最終回のダバール星人との戦いが終わった後だ。
だが、この時間軸、忙しくて飲む暇も環境も無かったから吞まなかっただけで、彼は特に断酒していたわけでは無い。
だから長老に酒をすすめられて呑んでしまったと言えるだろう。
今はとりあえずその倉庫の中で反省してもらうとしよう。
「おーい、誰か出してくれー、儂がいなければだれがこのマグネコンドルを指揮するんじゃぞいー!?」
いや、とりあえず今の貴方は酔いを醒ます事で反省してください。
「代々木博士、聞こえますか? 貴方は昨日呑みすぎたので一旦そこに入ってもらいました。酔いが醒めた頃にお迎えに行きます」
「わ、悪かったぞい。もう飲まないから勘弁してほしいぞい」
まあちょっとは代々木博士にお灸をすえておいた方が良いだろう。
今後宇宙に行って同じ失敗をされたら今度は命に関わる。
「代々木博士、とりあえずマグネコンドルは奇岩島に向けて発進します。転ばないように何かにしがみついて下さい」
「ま、待つぞい。何かって言っても……」
「マグネコンドル……発進!」
海に浮かんでいた大型宇宙船マグネコンドルが浮上し、大空に飛び立った。
その後ろを追いかけるように機動要塞ドグローンがついて来ている。
目標は奇岩島基地、ブキミーダに基地をメチャクチャにされる前に人質にされそうな地球人を助け出さないと!
俺がマグネコンドルの指令室にいると、俺のタブレット型通信機にタイタン部隊のトニーから連絡が入った。
「こちらタイタン部隊……タイタン部隊……、大変……だ、奇岩……島……が、もう、既に……」
「トニー! どうした、何があった!?」
「あ、頭が……割れるように……痛む、うぐぉおおお……」
「どうした、タイタン部隊は無事なのか……」
だが、その後トニーからの返信は無かった。
しかし、彼は最後に映像録画のボタンを必死で押したのだろう。
そこには恐るべき光景が映っていた……。
「ミシマ様に忠誠を、この世界の支配者……」
「偉大なるミシマ様に逆らうものに……死を……」
「我等、ミシマ様の下僕。死ねと言われれば喜んで死にます……」
――何だ何だ!? これは一体どうなってるのだ!
奇岩島にいるはずの兵士や捕虜の全てが三島の姿をしたブキミーダの洗脳を受け、全員が従っている。
ひょっとして、トニーやタイタン部隊もその影響を受けてしまったのかもしれない!
そうなると、彼が必死で映像録画機能付きタブレット型通信機に映したのは……三島の姿のブキミーダの手に落ちた島の様子を見せようとしたのだろう。
こうしてはいられない! 一刻も早く奇岩島を目指さないと、捕虜やバルガル、エリーザ様やトニー達の命が危ない!!




