第三十八話 巨大獣ギョガゴゴ 崩れ行く奇岩島 3
――さて、シャールケンに今の状況をどう説明するべきだろうか……。
とりあえず今の彼は、俺の事を……機械で人格を抽出された本物の三島長官だと誤認している。
こうなったら一度本物の三島長官が入っているケン坊を呼んで、話を合わせてもらうか。
さあ、俺の立ち位置は……防衛軍の技術者で、ブキミーダの実験で人格を抽出されてこの身体に入ってしまったという事にしておこう。
さあ、とりあえずの話は決まった。
それではケン坊を呼ぼう。
ちょうど彼は宴の為の準備をおタケさんに言われて手伝ってマグネコンドルに戻って来たところだ。
「ケン坊さん、少し良いですかな?」
「おや、貴方はブキミーダさんですか、ワイに何の用ですか?」
「ちょっと話が有るので部屋に来てもらえますか?」
俺はケン坊の姿の三島長官を部屋に呼んで話をした。
「三島長官、ここには他に誰もいませんからお芝居はしなくても良いですよ」
「そうか、知っていたのか。お前……一体何者なのだ? ミザーリンの言っていた良識派のダバール星人というのは認識していたが、どうもそれだけではなさそうだな」
「すみません、まだ今は俺の事を全部伝えるわけにはいきません、ですが……俺は地球の敵でもダバール星人の敵でもありません」
ケン坊の姿の三島長官は笑っていた。
「わっはっはっは、それくらい分かっている。貴方が居なければ、地球にも、ましてやダバール星人にもどれだけの未曽有の被害が出ていたか、それを全て止めたのが貴方だという事は知っている。それで、話とは……ワシに何か協力してほしいという事だろう?」
流石は本物の三島長官だ、俺の言う事を先読みした上で間違っていない。
優れた洞察力だと言える。
「それで、ワシに何を協力しろというのかな?」
「三島長官、俺は今からシャールケンに現在の状況を説明するので、その上であえて俺の正体を防衛軍の技術者の一人だという事にしておいてほしいのです」
「なるほど、本物のワシの身体を本物のブキミーダが手に入れ、ワシは無力な子供にされ、そして実験段階のブキミーダによって犠牲者になったのが貴方という話にすればいいのですな」
その話の流れなら俺がロボット技術者だという事も説明がつく。
三島長官は俺の話に合わせてくれるようだ。
「これは恩返しです、貴方はこれまでにも多くの地球人を犠牲にしない為に動いてくれた、ワシはその恩を返す為に貴方に協力しましょう!」
これで話は決まった。
さて、シャールケンを呼んできて現在の状況を説明しよう。
とりあえずケン坊の姿の三島長官には一旦席を外してもらい、お茶を持ってくる流れで話に参加してもらう事にしよう。
俺はマグネコンドルの応接室にシャールケンを呼んだ。
「ブキミーダ、いや……ミシマ。オレを呼ぶとは何か話したい事でもあるのか?」
「はい、これから今までの状況を説明しようと思いますので、お聞きいただけますか?」
「無論だ、むしろオレの方がこのおかしな状況について説明してもらいたいくらいだ」
シャールケンは自分の事をオレと呼んでいる。
どうやら提督の地位を降りて繕う必要が無くなったので、これが本来の彼の姿なのだろう。
「失礼します、お茶をどうぞ」
「やあ、ケン坊さん。貴方もこの話加わってもらえますか?」
「ふざけるな! オレは真面目な話をしようと思っているのに、子供を呼んで何の冗談だ! ふざけているならオレはここを出るぞ!」
まあ、大人の真面目な話に子供が入ってこればそりゃあ普通は怒るわな。
「いえ、実は彼もこの話に大いに関係があるのです」
「何だと! ミシマ、オレはお前を敵の立派な司令官だと見て話を聞こうと思った。だが、これは一体何の冗談なのだ!?」
「実は、俺は三島長官ではありません、ここにいるケン坊こそが三島長官なのです」
「何だと!??? オレを愚弄するつもりか!」
――まあ普通はそう思うよな……。




